二人の関係-side A -
好きになるつもりじゃなかった。
Side A 館林 香澄
同じ職場の後輩で、たまたま飲み会で意気投合して
それからは仕事が終わって時間があえば一緒に飲んだり、遊んだり。
たまに、付き合ってるの?なんて囁かれることもあったけれど
もちろん一笑してやったわよ。
だって、ありえない。
アイツとは一緒にいて楽だけれど、
愛とか恋とか、そんな感情は抱いていない。
アイツはまだまだ遊びたい盛りの25歳。
5個年上の私なんて、おばちゃんだもん。
女として意識してないから、一緒にいてくれたんでしょう?
知ってるんだから。
アイツを気に入って近づいていった女の子のこと、
気持ちに気付かないようなフリして、笑顔で避けてる。
“好きな女の子には自分から行かないと嫌なんだよ”って
珍しく酔いながら、言ってたでしょう。
つまり、私は避けるほどでもない対象外。
たぶんアイツも私といて楽なんだと思う。
気を使わなくていいから。
私も恋愛ごっこなんてするつもりはない。
一緒にいて気持ちが楽なのは、こっちも一緒。
彼女なんてめんどうな位置よりも、友人っていうこの位置が結構居心地良くて
気に入っていた。
そんな関係だったはずなのに…。
会社の忘年会で、
悪酔いした先輩が、アイツと私に絡んできた。
「ね~。ほんとに柴田、館林さんと付き合ってないの?」
「付き合ってないですよ。」
しなだれかかる先輩の腕を押しよけるアイツの顔もお酒を飲んでいるせいか少し赤い。
それでも執拗に先輩はアイツをこづく。
「ほんと~?あやしいな~。」
「ほんとほんと。キスくらいしてもなんとも思わないくらいですよ。」
ちょっと言いすぎだよ!と眉をしかめて見せたが、酔っ払ったアイツはそんなこと気にもとめないようだ。
「言ったな~柴田。よし、そこまで言うならやってみせろよ~。」
「ちょ、ちょっと先輩!冗談じゃないですよ!」
慌てて、私が間に入る。
そんなの好きじゃなくても困るに決まってるじゃん!
ねぇ、柴田。
そう言おうとして、振り返ったあたしに、大きな影が覆いかぶさり
唇にあたたかいものがほんのちょっと触れたかと思うと、すぐに離れていった。
思わず目をしばたいた。
何?
アイツはしてやったりのような顔でフッと笑った。
「ほ~ら、なんともない。」
そう、それはいつもの悪ふざけ。
だから、こっちもいつもみたいに、笑って、怒ったフリをすればいい。
「何すんのよ!」って、軽く流せばいい。
それで、万事うまくいくはずなのに。
うまく言葉が出なかった。
なんで、なんでこんなに心が痛いんだろ。
クリスマスのお話を書きたいな~と思って、ひょいと思いついたお話です。
久々の執筆ですが、宜しくお願いします。