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【三章完結!】勇者パーティーから追放された”元“解体師の、森羅万象バラバラ無双 ~ユニークスキル【解体】は、あらゆる防御を貫通する最強の攻撃スキルでした~  作者: 猫額とまり
第3章 墓守(パンドラガーディアン)

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第97話 vsミノタウロス ①因縁の相手

皆様の応援のお陰で日刊ランキング入りすることができました!

ありがとうございます!


「シア。悪いけどここからは、一人で地上まで戻ってほしい。――ミノタウロス(こいつ)は、シアを庇いながら戦えるような相手じゃない」


 お姫様抱っこの姿勢から、ゆっくりとシアを地面におろす。

 全身血まみれだが、全て返り血のようだ。外傷などは見当たらない。これなら一人で動けるだろう。


 さっきの【迷宮改変(ダンジョンマスター)】のスキルを見て分かった。

 僕とシアが、揃ってミノタウロスから逃走するのは不可能だ。

 通路を塞がれたりすれば、僕が解体スキルで対処する必要がある。

 そうなるとミノタウロスからの攻撃には対処できないだろう。シアを庇いながらだと、なおさらだ。


 故に、ここからは分かれて動く。シアが逃げるまでの間、迷宮改変を使わせないように、僕がミノタウロスを足止めする。



「勇者達が露払いしてくれたおかげで、道中の魔物は少ない筈だ。そこに転がってるルチアを持っていったらいい。彼女なら【心眼】スキルで、魔物との遭遇を回避しながら地上に向かえる。――道案内できるよね、ルチア?」


「……ええ。私の力で助けられるのであれば、手を貸します」



 地面に転がり血濡れになったルチアに念押しの確認をする。

 シアに戦闘能力がない以上、魔物との遭遇を避けるにはルチアの協力が必要だ。


「シテン。本当にミノタウロスと戦うつもりなのですね」



 首だけになった状態のルチアが、最後の確認とばかりに問いかける。



「あの怪物はこれまで戦った敵とは訳が違います。かつてない程の死闘となるでしょう。それでも立ち向かうのですか、たった一人で」


「くどいな。もう覚悟は決まってるよ」



 相手が誰であろうと関係ない。

 僕にとっては家族が全てだ。その一員であるシアを守る為なら、幾らでも命を張ってやる。



「そうですか。魔を誅する聖女として、武運を祈っていますよ」


「敵に祈られても嬉しくないな。さっさとシアを案内しろ」



 さっきまで殺し合った仲だというのに、何の感情も浮かべず武運を祈る。

 同じ人間とは到底思えない価値感の違い。

 勇者パーティーにいた頃から、正直薄気味悪くて仕方がなかった。



「ル、ルチアさん……? その姿はいったい? 生きているのですか?」


「私の事は心配ありません。それよりも早く、この場を離れましょう。私達では、シテンの足手まといになる」


 ルチアの首を抱えたシアが、僕の背後の通路を潜る。

 その直前で、シアが振り返った。


「……シテンさん。隠し事をしてきた私を、家族だって言ってくれて、とても嬉しかったです。……私、いっぱい話したいことや、伝えたい事があるんです。だから……無事に、帰ってきてください」




「もちろん。シテン兄ちゃんに任せなさい」



 僕は片腕を上げて、ガッツポーズをしてみせた。



 そして、シアとルチアの気配が遠ざかっていく。

 残されたのは、僕とミノタウロスの二人だけ。


 ……ああ、イカロスも居たか。アイツは放置でいいか。回収する暇もないし、現状何の役にも立たない。



「別れの挨拶は終わったか?」


「そっちこそ、遺言は考えておいた?」


 お互いに軽口を叩きながらも、慎重に様子を窺う。


 ミノタウロスの強さはよく知っている。なにせ一度は戦った相手だ。

 恐らく、過去一番の強敵になるだろう。


 ……その証拠が、目の前にある。


 さっきの攻防で斬り落とした筈の、ミノタウロスのツノ。

 それが傷跡一つ残さずに、再生していた(・・・・・・)


「やっぱり再生するのか……どうなってるんだよ、それ」


 以前、勇者パーティー【暁の翼】がコイツに遭遇したとき。

 僕はイカロス達が逃げる時間を稼ぐため、ありとあらゆる方法(・・・・・・・・・)で時間稼ぎを行った。


 足元の地面を崩したり、壁や天井を崩して生き埋めにしたり……足を斬り飛ばしてみたりもした。


 だがそこで、信じられないものを目にした。

 治らないはずの傷が再生を始め、斬った足が元に戻ってしまったのだ。


 解体スキルを使っていて、初めて起きた想定外の事態。

 当時の僕はその光景を見て、即座に“この場で倒す”という選択肢を捨てた。

 理解不能な原理で再生する敵を相手に、解体スキルがどこまで通用するか未知数だったからだ。

 幸いあのときのミノタウロスは迷宮改変を使ってこなかったので、僕が時間稼ぎに専念した結果、辛うじて全員逃走に成功した、という訳だ。



 とはいえ、改めて見ても奴が再生する仕組み(ギミック)が全く分からない。

 【臨死解体(ニアデッド)】で斬り飛ばしたんだから、見掛け上は切断されているが、実際は全くダメージは無い筈だ。

 ダメージが無いものを、いったいどうやって再生しているんだろう。


 ……解体スキルの再生阻害すら貫通する、奴の再生ギミック。

 それを見極めなければ、恐らく僕の勝利はない。




 そして、ミノタウロスが動きを見せた。


「さぁ……始めるぞ、シテン。簡単に死んでくれるなよ? ――【迷宮改変(ダンジョンマスター)】」


 迷宮が鳴動する。

 壁、床、天井。迷宮の地形が変形し、四方八方から僕を押しつぶそうと迫る。


「【解体】」


 対する僕は、解体スキルを四肢から発動させ、迫る岩壁をバラバラに砕く。

 ……さっきより規模は小さいが、予想より発動が早い!

 事前にルチアに聞いていなければ、やられていたかもしれない。


「――【迷宮改変】」


「クッ……」


 スキルの連続使用。

 迫る岩杭を捌ききったかと思うと、すぐさま次の岩杭が迫ってくる。

 このままじゃ埒が明かない……!


「解体ッ!」


 僕は迫る壁を、砂状になるまで細かく解体する。

 周囲を砂煙が包み込み、僕はミノタウロスの視界から一瞬、消える。


「そんな小細工は通用せんぞ!!」


 ミノタウロスが叫んだ直後……天井が落ちてきた(・・・・・・・・)

 そう錯覚する程の、大規模範囲攻撃。

 逃げ場などどこにもない。一秒と掛からず、辺り一面が天井に押し潰される。




「…………。手応えが、無い?」




 問題ない(・・・・)。既に僕は次の手を打っている。



 天井が落ちてきたとはいえ、周囲全てが潰されたわけではない。

 例えば、ミノタウロスの周辺。

 ああいった大規模範囲攻撃は、自身が巻き込まれるのを防ぐために術者の周りが安全地帯(セーフゾーン)になる事が多い。


 影の中に潜んでいた(・・・・・・・・・)僕は、ミノタウロスの背後から急襲する。



「ッ!? さっきの、砂煙のときか!!」


「解体」


 ミノタウロスの背に触れ、直接接触で解体を行う。

 今度は臨死解体を使わない。ミノタウロスの身体が細切れになり、血肉が周囲に飛び散った。


 でも、それも一瞬の事。

 肉片になったはずのミノタウロスは、やはり即座に修復を始める。

 まるで時間を逆回しにしたように、数舜の間に奴は完全に復活した。

 そのまま拳で、僕を叩き潰そうとしてくる。


「無意味ッ!!」


「どうかな」


 ギリギリまで引き付けて拳を回避し、再び解体スキルを発動する。

 但し、さっきまでの解体スキルとは違う。

 ケルベロスの素材から作った籠手、【三獄堅手(さんごくけんじゅ)】。

 属性魔法の力と合わせ、新たに得た攻撃手段が、これだ。


「解体、炎魔法【獄炎】、同時発動--【爆破解体ブラストデモリッション】」


「む!?」




 攻撃の隙を突いて、僕の手がミノタウロスに触れた直後。

 ミノタウロスの(・・・・・・・)身体が爆散した(・・・・・・)



 【爆破解体ブラストデモリッション】は、解体スキルに炎魔法の力を合わせる事で編み出した力だ。

 装備の力を借りているだけなので、派生スキルと言っていいものかは怪しいけど……その破壊力は確かだ。


「バラバラにしてもその断面から再生するなら……断面を焼いたら、どうなるのかな?」


 爆風から逃れるために距離を取った僕は、注意深く爆心地を観察する。

 ヴァンパイア、ヒュドラなど、再生力が高い魔物に対して、傷口を焼くというのはよく取られる手段だ。

 問題は通常の魔物ではないミノタウロスに、それが通用するかだけど……






「……ック、ククク、フハハハハハハ!!!」


 ……土煙が晴れたとき。ミノタウロスは、五体満足でその場に立っていた。


「いいぞ、腕を上げたなシテン! 俺と初めて会ったときより、数段強くなっている!! この短い間に、二度もバラバラにされるとは!」


 奴は、嗤っていた。

 まるで戦いそのものが、楽しくてしょうがないと言わんばかりの表情で。



 ……だけど、僕は見逃さなかった。

 ミノタウロスが再生する時、明らかにさっきより再生速度が遅くなっている事に。



 ……大丈夫だ。効果はある。だったら、勝機だって十分にある!

 カバンから回復ポーションを取り出しつつ、僕は次の手を思案する。



「想定以上の強さだ、シテン。()には生け捕りにしろと言われていたが……生け捕りは、無理だな」



 ミノタウロスの気配が変わる。

 直感で理解する。意識を切り替えたのだ。僕の確保から、殺害へと。



「お前は危険だ。ここで確実に始末するとしよう」



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