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【三章完結!】勇者パーティーから追放された”元“解体師の、森羅万象バラバラ無双 ~ユニークスキル【解体】は、あらゆる防御を貫通する最強の攻撃スキルでした~  作者: 猫額とまり
第3章 墓守(パンドラガーディアン)

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第68話 祝賀会


 クエストを報告した日の夕方。

 僕は、沢山の酔っ払いに絡まれていた。


「うぇ~い、シテンくん飲んでるぅ~?」

「もっと肉を食え肉を! まだまだ成長期なんだからちゃんと栄養取るんだぞ!」


「あはは……おかげさまで、楽しんでます」


 酒気を漂わせながら話しかけて来たのは、先日石化事件の調査隊として共に戦った冒険者達だ。

 石化事件解決を記念して、調査隊のメンバーで祝賀会を開くことになっていたのだ。

 酒場を一軒貸し切りにして、みんな飲めや歌えやの大宴会だ。

 ジェイコスさんやソフィアも参加しているし、その中には先ほど会ったばかりのツバキさんも含まれていた。


「本当にいいんでしょうか……? 私なんかが参加しちゃっても」


「大歓迎だよ! ツバキさんが応援に来てくれなかったら私達死んでたかもしれないんだから」

「シテンもそうだが、ツバキも命の恩人だからな! 恩人を除け者にしたりはしねえよ!」


 最初は遠慮がちのツバキさんだったが、周囲に勧められて酒を口にしていた。

 かくいう僕も乗せられる形で、既に酒を飲んでいる。正直酒は苦手なほうなんだけど、断り切れなかった。これが宴の雰囲気に呑まれるというやつだろうか。


「……ん。お酒もそうだけど、食事も美味しいわね。やっぱり上位の冒険者ともなると、美味しい酒場とか把握してるものなのかしら」


 僕の隣で羊肉のローストに舌鼓を打つソフィアは、既に結構な量の酒を飲んだのだろう、頬に赤みが差していた。


「確かに、冒険者って迷宮から帰った後はよく酒場で飲んでるイメージだね。そういう店には詳しいのかもしれない」


「シテンは『暁の翼』に居た頃は、こういう酒盛りとかしなかったの?」


「僕は参加させてもらえなかったんだ、酒が不味くなる~って。彼らはほぼ毎日宴会を開いてたけどね」


「ホント、碌でもない奴らね」


 気付けば、勇者パーティーに対する愚痴を堂々と口に出してしまっていた。

 無用なトラブルを避けるために控えていたんだけど……お酒のせいで口が緩くなったかな。


「そういえば、勇者の妙な噂を聞いたんだけど。その、かなり汚れた(・・・・・・)状態で迷宮で遭難してるところを救助されたとか。シテン、何か知ってる?」


「いや、僕も驚いたよ。一体何があったんだろう」


 その噂なら僕も知っている。食事時にする話ではないのでソフィアは口を濁したが、なんでも糞尿まみれの凄い状態だったとか。

 僕はそういうのは気にならないので、届いた料理を気にせず食べ続けた。


「もぐ。……一応、勇者達の実力はそれなりにあるはずなんだよね。僕抜きでもAランク認定のドラゴンを倒して、全員Aランク冒険者に認定されてるし。よっぽどのことが無い限り、あんな迷宮の上層で遭難するなんてこと無いと思うんだけどなぁ」


「よっぽどのこと?」


「迷宮の中で酒を飲むとか、装備なしで潜るとか?」


「あはは、『狂犬』じゃあるまいし」


 浮かれた笑い声を出しながら、追加のお酒を注文するソフィア。

 結構ペース早いけど大丈夫かな?


「Sランク冒険者はちょっと人間辞めてるから例外として、Aランクでも装備なしで迷宮に入るなんて自殺行為だよ。まあ常識があればそんな事しないだろうけど」


 実際のところなぜ遭難したかは原因不明である。

 どうやらイカロス達が黙秘を続けているらしい。なぜなのか。


「どっちにせよ、ミノタウロスの時も合わせて二回目の敗走でしょ? 今までは事あるごとに勇者を持ち上げるような風潮があったけど、今回ばかりは流れが変わってきたんじゃない?」


「こっちに関わってこないなら、何でも良いよ」


 そんな話をしながら食事をしていると、また別の酔っ払い達がが声を掛けて来た。



「お? なんだ、勇者の話か?」

「シテンって確か勇者パーティーに居た時期があったよな? あいつらの話聞かせてくれよ」

「今日のパーティーはあんたら二人が主役だぜ! あのクソ犬とリッチをぶっ飛ばしたのはアンタらなんだからな!」

「おいおい、リーダーのジェイコスさんの顔も立ててやれよ」



 そんな他愛もない話をしながら、夜は更けていく。



「シテン、ここに居たのか」


 火照った体を店の外に出て冷ましていると、ジェイコスさんがこちらにやって来た。


「ジェイコスさん、Aランク昇格おめでとうございます」


「よせ。俺には過ぎた評価だ」


 ジェイコスさんも酒を飲んでいるだろうに、こんな時でも落ち着きを払っていた。


「それよりも、話しておきたい事がある。お前のランク昇格についてだ」


「ああ……」


 それを聞いて、おおよその内容は察した。

 ジェイコスさんは、僕のCランクという評価に不満を持っているのだろう。


「事件解決を経て、ギルドのお前に対する評価がCランクというのに納得いっていない奴らが多い。もちろん俺もだ。だからアドレークの野郎に直訴した」


「えっ」


「あいつは聞く耳持たずだったよ。どうしてもシテンを評価したくないらしい。あんな奴がギルドの上層部に食い込むなんてどうかしている」



 ジェイコスさん、わざわざ僕のためにそんな事までしてくれていたのか。


「ありがとうございます、ジェイコスさん。その気持ちだけで充分です。僕は冒険者ランクにこだわりはないですし、気にしてませんので」


「……シテン。お前は強い。だが少し消極的な所があるな。迷宮都市は弱肉強食の世界だ。もっと強気に出ていかないと、あっという間に食い物にされるぞ」


「えと……気を付けます」


 僕の言葉を聞いたジェイコスさんが、一呼吸置いて次の言葉を紡いだ。


「……話は変わるが。俺のパーティー【大鷲の砦】は、これを機に西支部での活動を止めて、別の支部に活動の場を移すつもりだ」





「シテン。【大鷲の砦】に入る気はないか?」



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