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第50話 古城の後処理


(一人称視点)


「……死んだかな?」


 苦痛にのたうち回っていたクリオプレケスの身体は、ピクリとも動かなかった。

 念のためステータスを確認してみたが、何も表示されなかった。


 つまり奴の身体から、魂が抜け出たという事だ。完全に死んでいる。


「ふぅ~」


 それを確認した僕は、ようやく緊張を解く。

 単身で敵の下に乗り込むなんて、自分でもかなりリスクを冒した行動だったけれど、何とか倒すことが出来た。


 ……一応、勝算がなかったわけではない。

 最初のゾンビの襲撃の時、クリオプレケスは石化攻撃を使ってこなかった。

 ゾンビをけしかける前に石化攻撃で前衛役の冒険者を纏めて無力化すれば、戦況を有利に動かすことが出来たはず。

 それをしなかったという事は、何かしら問題があって石化攻撃を使えない状態なのだと推測できた。


 敵が正体不明の即死攻撃が使えない状態で、影の中から一撃必殺の奇襲。

 最悪奇襲が失敗しても、継続的に敵に負担をかけ続ければ勝機はあった。

 これまでの魔術を多用する挙動から、敵が近接戦闘を苦手とする、魔術師タイプである事も透けて見えていたからだ。

 想像と推測を重ねたかなり不明瞭な作戦だった。こんな緊急時でなければ取らない選択肢だっただろう。


「後は、残ったゾンビとケルベロスの対処かな。此処って、さっき見えてた古城の中だよね? 少し距離があるから急いで合流しないと」


 主を失ったことで、配下のゾンビやケルベロスの動きが止まっていれば有難いんだけど。

 ……そういえば、ケルベロスはAランクの魔物で、クリオプレケス、アークリッチはBランクの魔物だ。

 Bランクの魔物がAランクの魔物を従えているのは少しおかしい気もするが。

 今は考えても仕方ないか。


 城を出る前に、床に転がったゴーレムの残骸に声を掛ける。


「……仇は討ちました。もう少しだけ、ここで待っていてください。きっと元の姿に戻れるはずですから」


 あの悪辣なアークリッチの手によってゴーレムの材料にされ、原形をとどめない程破壊されてしまった被害者達。

 彼らは今、【臨死解体(ニアデッド)】の力によって、バラバラになったまま生きている。

 生きてさえいれば、必ず元に戻す方法はあるはずだ。片が付き次第、彼らを回収しに戻ってこよう。


「にしてもこの城、出口はどこだろう? 探すより壊して出た方が早いかな」


 壊すとなると、ゴーレムの被害者達を巻き込まない様に細かく解体する必要があるか……そんな事を考えていた時。

 周辺の壁や床が、突然光を放ち始めた。


「!」


 観察すると、壁や床には紋様らしきものが浮かんでいる。

 これは魔術を発動するための魔法陣か。


「……侵入者迎撃用のトラップかな。今になって発動するなんて」


 主が居なくなり暴走しているのか、死の間際に発動を命じたのか。

 どちらかは分からないが、このまま放置しておくと不味いのは間違いないだろう。

 僕だけじゃなく、ゴーレムの材料になった被害者まで巻き込まれてしまう。


 魔法陣はかなりの広範囲にわたって書き込まれている。この城そのものが魔術要塞という訳か。城内に居る限り、逃げ切るのは難しそうだ。




「仕方ない。この城壊すか」



 城ごと壊してしまえば流石にトラップも機能しなくなるだろう。

 どの道、壁を壊して城を出るつもりだったし、やることは当初と変わらない。

 被害者達が瓦礫に潰されないように、ここから上は細かく解体する必要があるな。


「【解体】――最大出力」


 僕の足元から、城全体を覆うように亀裂が走っていく。


 直後、古城の上半分が、砂状に解体されて消し飛んだ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

おかげさまで本作は50話という区切りを迎えることが出来ました。これもひとえに読者様方の応援のお陰です。この場を借りてお礼申し上げます。


また、明日は連続投稿を行う予定です。一気にキリの良い所まで進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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