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第41話 vsゾンビ


「ここは……一体何階層だろう?」




 そびえたつ古城を前に思わず呟いてしまう。


 勇者パーティー時代、僕は色々な階層に足を運んだが、目の前の風景に当てはまる階層は無かったと思う。


 少なくとも迷宮の内部であることは間違いないだろうけれど。




「よし、無事に到着したな。リリス、近くに痕跡は残っているか?」




「……あの城の方から、不気味な気配を感じます……なに、これ? とても強い恐怖と絶望が混じりあって、気持ち悪いです……」




 手を握っていた時の楽しそうな雰囲気から一変、リリスは顔を青くしていた。


 身体も小刻みに震えている。余程おぞましい感情を受け取ってしまったのだろう。少しでも恐怖を和らげようと、リリスの肩を叩いて慰めた。




「リリス、無理はしないで」




「うぅ……シテンさん、ありがとうございます」




「悪いが、ここまで来て手ぶらで帰る訳にはいかない。もう少し調査に付き合ってもらうぞ」




 リリスの容態が落ち着くのを待っていると、調査班全員が影の道を抜けてきたようだった。


 それを確認してから、ジェイコスさんが全員に指示を出した。




「敵は何かしらの方法で、複数人を一瞬で石化させる事が出来る。俺たちが一塊に集まっていたら、即座に全滅する可能性がある。そこで一定の距離を保ちながら散開しつつ、調査を行う。目的地は……あの古城だ」




 ……ここからでも分かる、禍々しい気配。


 あの城の中に、この事件の元凶が居るのはほぼ間違いないだろう。




「相手は魔術により影を操作できる。灯魔石トーチストーンを点けて、光源を絶やさないようにしろ。石化対策の呪い除けを持ってる奴は準備しておけ」




 調査班のメンバーは既に準備がほぼ終わっているようだった。


 Cランク以上の冒険者ともなると、流石に皆対応が早い。




「ここは既に敵の懐だ。何が起こっても対処できるよう、心の準備をしておけ」







 ……進軍を進めて、十数分は経っただろうか。


 古城に向けて進む僕ら調査班だが、今のところ何も問題は起きていない。


 だが周りの冒険者の表情は、いずれも険しいものばかりだった。


 僕も含め、全員違和感に気付いているのだろう。




「生物の気配がまるでない……」




 古城の周辺にはうっそうとした森が広がっている。


 普通、森があるならば何かしらの動物や魔物が居るはずだが、ここまでそういった気配を一切感じないのだ。


 中級冒険者ともなれば、生物の気配くらいはスキルがなくとも感知できるのだろう。だからこそこの場の全員が違和感を感じている。


 まるで、あらゆる命が死に絶えたかのようだった。


 ……そしてもう一つ。古城に近づくたびに強くなる、この寒気。




「シテン、気づいてる?」




「うん、この気配には、覚えがある」




 他の冒険者は分からないが、僕とソフィアはこの寒気に覚えがあった。


 つい先日、レッサーヴァンパイアと戦った時の事だ。


 安全地帯に避難した僕らを追いかけてくるレッサーヴァンパイア。あの時も同じような、身も凍るような寒気に襲われた。




「あの古城に居るのは、十中八九アンデッドだろうね」




 吸血鬼、スケルトン等を始めとする、不死者と呼ばれる魔物たち、アンデッド。


 生死の概念を超越し、死んでも動き続けたり、強力な再生能力を持っているのが特徴だ。


 脆弱な生物はアンデッドが放つ死の気配に耐え切れず、逃げ出してしまったのだろう。


 その結果が現在の不気味な静寂。アンデッドが出没するエリアではよく起きる現象だ。




 ……しかし、まだ古城までには距離があるというのに、ここまで伝わってくる寒気。気配の主がそれほど大きな力を持っているという事だ。


 少なくとも雑魚モンスターではない。恐らくボス級。それもBランク以上の――




「――待ってください! 何か来ます!」




 リリスの警告に思考を中断させ、咄嗟に身構える。


 周囲を見渡すが、特に異変は見当たらない。




「リリス、敵は何処に?」




「周りの、木々の陰から……! 私たちに明確な敵意を持っています!」




 リリスが叫ぶと同時に、木陰から『敵』が這い出てきた。


 不気味なうめき声を出しながらゆらゆらと歩く人型の腐乱死体――アンデッドモンスター、ゾンビだ。




「やっぱりアンデッドモンスターが居やがったか!」




 調査班の冒険者が叫ぶが、彼らは既に戦闘準備万端だ。もちろん僕も、ソフィアもだ。


 ゾンビはDランクのモンスター。一体一体は苦戦するような相手ではない。


 ただし数が多い。百くらいは居るだろうか。おまけに四方を囲まれてしまっている。




「敵に見つかったか……どうする、ジェイコスさん!」




「これは恐らく敵の先遣隊だ。もう少し敵の情報が欲しい……調査続行だ! 退路を常に確保しつつ、応戦せよ!」




 ジェイコスさんの指示と共に、調査班とゾンビ達の戦いが始まる。




「シテン! 君はDランクになりたてだったな、ゾンビはDランクの魔物だが、いけるか!?」




「大丈夫です! それより提案があるんですけど」




 ジェイコスさんの言った通り、このゾンビ達は恐らく様子見だ。僕たちの戦力を測ろうとしている。


 ここで足止めされていてはキリがない。僕は咄嗟に思いついた作戦をジェイコスさんに伝えてみた。




「面白い、やってみろ」



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