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第38話 石化事件調査隊


 迷宮都市ネクリア、中心部の迷宮入口前にて。

 僕とソフィアは、結成された調査隊との顔合わせを行っていた。


「お前たちがシテンとソフィアだな? 今回調査団のリーダーを任されたジェイコスだ。普段は【大鷲の砦】というパーティーのリーダーを務めている」


 頬の傷跡が特徴的な男、ジェイコスがそう言って挨拶をしてくれた。

 その振る舞いからは、勇者パーティーから追放された僕や、魔女であるソフィアに対する悪感情のようなものは見られない。恐らく悪魔であるリリスと協力する事に、抵抗のない人物がリーダーとして選ばれたのだろう。


「この調査団には俺も含めBランク冒険者が五人、Cランク冒険者十五人が参加している。お前たちと協力者のサキュバスを含めば、全部で二十三人だ」


 Aランク冒険者が居ないとはいえ、二十三人とは結構な大所帯だなあ。


「初めまして、シテンです。今回はよろしくお願いします」


「ソフィアよ、よろしく」


「早速だが、今後の作戦を伝える。先ほど石化事件の被害者が新たに発見されたという情報が入った。我々はこのまま迷宮に突入し、協力者であるサキュバスと合流する。その後、事件現場へと急行し、犯人の痕跡を調査。場合によっては、そのまま犯人の追跡、確保へと作戦を移行させる」


 リリスが探知できる感情の痕跡は、およそ半日以内のものが限界らしい。

 石化事件が起きてから時間が経つとリリスでも追跡できなくなってしまうため、被害者が発見され次第すぐに調査に向かう事になる。


「分かりました。協力者のサキュバス――リリスは、迷宮の第3階層の安全地帯で待機してもらっています。ちなみにその事故現場というのは、何階層ですか?」


「17階層だ。石化事件が特に発生している階層でもある」


 17階層か。

 この人数ならボスモンスターと遭遇しても容易に対処できるだろう。

 もちろん、魔物の大移動によって深層の魔物が現れた時は話は別だが。


「僕とソフィアがリリスのところまで先導します。早速向かいましょう」



 迷宮の第3階層。

 調査隊は特にアクシデントに見舞われることも無く、リリスと合流することに成功した。

 これほど大人数の人間に会うのは流石に初めてなのか、リリスも最初は緊張していた様子だったが……


「わっ、素敵な髪留めですね! 地上ではこんな綺麗なものが沢山あるのでしょうか?」


「これは只の髪留めじゃなくて、魔術の攻撃力を高めてくれる効果があるのよ。ほら、ここに魔法文字が刻印(エンチャント)されてるでしょ。見た目と実用性を兼ねた立派な装備品の一つなのよ」


「すごいです! エンチャントされた髪留めなんて初めて見ました! もっと地上の事を教えてくれませんか?」


 今ではすっかり、調査隊の冒険者と楽し気に会話出来るくらいに溶け込んでいた。

 僕と出会った時もそうだったが、こうも容易く人と親しくなれるのは、リリスの才能なのか、純粋な性格によるものなのか。

 流石にサキュバスの種族特性って事はないだろうけど……


「……随分と、あのサキュバスに肩入れしている様だな」


 リリスの様子を窺っていると、ジェイコスさんが声を掛けてきた。


「リリスは人間に悪意を持ってはいませんよ。そういう悪魔もたまに居ると聞きます」


「ああ、気を悪くしたなら謝る。彼女の協力を疑っているわけではないんだ。わざわざ契約まで結んで俺たちの安全を保障してくれたんだからな」


 そうは言いつつも、ジェイコスさんはリリスから一定の距離を置いているように見えた。


「だが一つ忠告しておく。彼女はどこまで行っても悪魔である事は変わりない。今は問題ないかもしれんが、いずれお前たちの関係が破綻する時がくるかもしれない。俺は悪魔と関わったせいで破滅した冒険者を何人も見てきた。……悪魔は気まぐれで、狡猾だ。決して油断するんじゃないぞ」


「……肝に銘じておきます」


 どうやら僕が思っていた以上に、悪魔というのは冒険者から警戒される存在らしい。

 調査隊の面々を注視してみれば、リリスと親し気に接する冒険者もいるが、ジェイコスの様に距離を置いている冒険者もいる。

 念のため、リリスと冒険者の間でトラブルが起きない様、気を張る事にしよう――




 そんな事を考えているうちに、迷宮の第17階層、石化事件の現場に到着した。


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