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【三章完結!】勇者パーティーから追放された”元“解体師の、森羅万象バラバラ無双 ~ユニークスキル【解体】は、あらゆる防御を貫通する最強の攻撃スキルでした~  作者: 猫額とまり
第2章 石化事件の謎

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第35話 掴んだ手がかり


「ッ! 本当なの!?」


「まさか……!」


 リリスの言葉に、僕もソフィアも愕然とした。

 今までロクな手がかりも掴めていなかった石化事件。その犯人に繋がる手掛かりを、リリスは掴んだのだという。


「見てください、この石像の、脇の下の部分。この部分からも石片と同じ、悪意の残滓が感じ取れます」


 リリスの言う通り石像の脇の下の部分を注視する。特に違和感は見つからなかったが、実際に触ってみると僕はある事実に気付いた。


「これ……補修した跡がある。言われてみないと分からないくらい、些細な痕跡だ」


「補修? 石像の傷んだ所を直したっていうの?」


「悪意が宿ってるって話が本当なら、わざわざ直してあげた訳じゃないだろうね」


 見た目ではほぼ分からないが、ひび割れの跡を何か別の材質で埋めたような感じだ。

 これは僕が拾った石片と同じ材質だ。この石片はこの補修箇所から零れ落ちたものらしい。


「犯人は石像に細工をしている……? 石像に何か別の物質を混入させて、わざと石化を解除させているのか?」


「もしかして、今までの被害者も」


「本人も自覚してないだけで、同じ事をされている可能性はあるね。こんな僅かな痕跡触ってみないと分からないよ」


 石化した部分が損傷した場合、その箇所は石化を解除するとそのまま傷口になる。

 だが今回の様に目立たない場所に、ごくわずかな傷程度であれば、本人ですらも気づかないだろう。たとえその傷口に細工をされていたとしても。

 冒険者の身体能力ならこの程度の傷、数時間程度で自然に治る。そうすれば証拠も残らないという訳か。


「まだあるんです。この石片と同じ、悪意の感情がどこかに残っていないか調べてみたんです――すると」


 リリスは足元に目をやった。

 これといって特に怪しいものは無い。あるのは石ころや葉っぱ、それに……


「……影?」


「はい。この影(・・・)にも痕跡が残っています。多分犯人は、この影の中に潜んで冒険者さんを石像にしたと思うんです」


 影の中から……。

 確かに、それならば発見される可能性はかなり低い。先日のレッサーヴァンパイアの様に、影の中に隠れた魔物を発見するのはかなり難しいのだ。

 気になるのは、被害者が反応出来ない程高速で石化させた手段か。

 通常の石化の呪いは、全身が石になるまで多少の猶予があると聞く。何かしら特殊な手段で一瞬で石化を進行させているのだろう。でなければAランク冒険者までもが被害に遭っているの状況に納得できない。

 ……まあ、今はこれ以上考えても仕方ないか。



「お手柄だよ、リリス。これは事件を解決する糸口になるかもしれない。早速ギルドに報告して情報を共有しよう」


「すごい……こんなにあっさり、石化事件の手掛かりを見つけちゃうなんて」


「えへへ……」


 照れ臭そうに笑うリリス。僕もソフィアも、もはや彼女の事を疑ってはいなかった。


「でも残念ですが、痕跡が残っているのはここまでです。感情の残滓は時間が経つと消えてしまうので……今からでは犯人を追跡することはできません。もしまた同じ痕跡が見つかったら、今度は私が犯人の居場所を突き止めて見せます!」


「それって、私たちに協力してくれるって事……?」


「もちろんです! 私は人間さんと仲良くしたいんです! その人間さんにこんなひどい事するなんて許せません!」


 ソフィアが恐る恐る尋ねると、リリスが薄い胸を張って答えた。

 その表情からは悪意の欠片も感じられなかった。この子は本当に善意で人間を助けようとしているように見えた。

 リリスの言葉を聞いたソフィアは、感極まった様子でリリスに抱き着いた。


「わっ、ソフィアさん!?」


「リリスちゃん……! 疑ったりしてごめんね! 協力して犯人を必ず見つけ出しましょう!」


 リリスのお陰で進展したのが余程嬉しいのか、今にも頬ずりしそうな勢いでひっついているソフィア。さっきまでの飴とムチ作戦はどこへやら、だ。

 どうやらソフィアには、『わる~い魔女』の真似事は向いていないようだった。


(三人称視点)


「ふむ……今回も失敗か」


 【魔王の墳墓】、そのとあるエリア。ツタに覆いつくされた石造りの古城の一室にて。


「石像に魔物の肉片(・・・・・)を仕込んではみたが、やはりダメか。迷宮の外に出るまでは良いが、石化が解除された途端に魔物の肉片だけが消滅してしまう……やはり迷宮で生まれた魔物は、外の環境に適応できぬようじゃな」


 骨を擦り合わせたような、しわがれた声。

 その声の主は古城の一室、誰も居ない空間でぶつぶつと一人呟いていた。

 ……いや、誰も居ないというのは正確ではない。その部屋の中には、大量の人の形をした石像が並べられていた。


「石化事件を隠れ蓑にして、それなりの冒険者を攫ってはきたものの……冒険者ギルドも、行方不明者が多い事に流石に気づく頃じゃろう。実験も滞っておるし、奴ら(・・)の催促もいい加減にうるさい。やむをえんが強硬策を取るしかないのう」


 声の主が、骨ばった手を空に掲げる。

 すると周辺の石像が一人でに動き出し、まるで組立パズルのように組み合わさって一つの物体を象っていく。


「……【魔物は迷宮の外に出ることが出来ない】、この迷宮の大原則の一つ。じゃが、人体を素材として生み出された魔物はどうなる? ……次の実験こそ、奴らを納得させる成果を出してくれるとありがたいのじゃが」


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