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【三章完結!】勇者パーティーから追放された”元“解体師の、森羅万象バラバラ無双 ~ユニークスキル【解体】は、あらゆる防御を貫通する最強の攻撃スキルでした~  作者: 猫額とまり
第2章 石化事件の謎

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第33話 勇者パーティー、倒れる(勇者視点)

(第三者視点)




 数時間が経過しただろうか。


 幸い魔物の気配はなく、ゆっくりと体を休めた三人は動けるまでに回復していた。


 だが、万全の状態とは程遠い。


 ヴィルダは意識は取り戻したが、杖を失いまともな攻撃は期待できない。


 イカロスは聖剣の力を消費し、再び同じ力を使う事は出来ない。それどころか女神との取り決めを無視してしまった以上、今後何らかのペナルティを科せられる可能性も否定できない。




そんな状況下で、更なる問題が発生した。




「……いい加減、お腹が空いたんだけど。チタ、本当に食べ物持ってないの?」




「毛の一本程も残ってないニャ……」




 そう、食料問題である。


 元々数時間程度で探索を切り上げるつもりだった勇者一行は、殆ど食料を持ってきていなかった。


 それすらもコボルトからの逃走時に紛失し、飲み水も食料も誰も一切持っていなかった。




「食料が無いなら、魔物を狩って肉を食えばいいだろ。オラ、動けるようになったんだし、適当な魔物殺して食うぞ」




 イカロスがいかにも名案を思い付いたという表情でそう提案した。


 他の二人も賛同し、早速目についた魔物を狩り始める勇者一行だったが、早くも困難にぶち当たった。




「んだよ、またケイブバットの牙かよ! 要らねーんだよこんなモン! 肉出せよ肉!」




 冒険者ならば誰でも経験する壁、ドロップシステムである。


 たった今ケイブバットと呼ばれるコウモリのような魔物を倒した所だが、食料を手に入れることは出来なかった。


 先ほどから同じ事が何度も続いており、イカロス達は未だ食料を一切入手出来ていなかった。彼らの苛立ちと空腹は既に限界に近かった。


 ……なお、ケイブバットはそもそも肉系、食料になるアイテムをドロップしないので、どれだけケイブバットを倒しても無駄なのだが、彼らはケイブバットのドロップリストなど把握していないので誰も気づいていなかった。




「なんでだ! 今までは殺した魔物を食料にして迷宮に潜ってたんだぞ!? なんで急に食料が手に入らなくなるんだ!」




「……多分、シテンが居ないせいニャ」




 喚き散らすイカロスとは対照的に、チタが静かに原因を分析していた。




「今まではシテンの【解体】スキルがあれば、ドロップシステムに関係なく魔物の死体を入手できたニャ。でも今はそれが無い、殺した魔物の死体は消えてしまうニャ。だからいくら魔物を倒しても、運が悪いと食料は手に入らないニャ……」




「――じゃあ、これもシテンのせいって訳か!? あいつが居なくなったから俺たちがこんな目に遭ってるってのか!? ――俺のせいじゃない、全部あいつが悪いんだ!」




 空腹と苛立ちのせいか、イカロスは明らかに論理的思考が出来ていなかった。彼の中では、どうあってもシテンを悪者に仕立て上げたいようだった。


 そんなイカロスの様子をチタは冷ややかな目で見つつ、今後の方針を固め始めていた。


 イカロスの耳に入らないように、傍のヴィルダに密かに話しかける。




(ヴィルダ、もし次のドロップでも食料が手に入らなかったら、二人で逃げないかニャ?)




(……何それ、どういう事?)




(このままイカロスと居ても、邪魔ばっかりしてくるし正直面倒ニャ。最悪シテンみたいに難癖付けられて、アタシらを攻撃してくるかもしれないニャ)




(…………。確かに、イカロスは明らかに普通の状態じゃないけど。でもどこに逃げるっていうの?)




(実はさっき、他の冒険者の匂いを嗅ぎつけたニャ。イカロスはどうせ拒否するから何も言わなかったけど、今ならその匂いを辿れば、その冒険者に助けてもらえるかもしれないニャ)




(それは……)




(ヴィルダ、アタシはヴィルダだからこの提案をしてるニャ。このままイカロスと居ても野垂れ死にするだけニャ。一人より二人。一緒に逃げないかニャ?)




(……考えておくわ)




 ヴィルダはその場では答えを出さなかったが、内心ではイカロスの傍若無人な態度に嫌気が差していた。


 今後の人生を左右する重大な選択。空腹で回らない頭を必死に動かして悩んだが、結局のところそれは杞憂に終わった。




「オイ! 肉が出たぞ! ついに肉がドロップした!」




 次に出くわしたオークという魔物をイカロスが倒すと、その場にオークの肉らしきアイテムがドロップした。


 ようやく彼らにも幸運が回ってきたのだ。




「よし、早速食うか。お前ら調理な。倒したのは俺なんだからそれくらいは働けよ?」




「でも私達、料理なんてやったことないわよ」




「……そういや、今までは料理は全部シテンにやらせてたんだっけか。ヴィルダ、お前の魔法で軽く焼けばいい。肉なんざ焼いておけば大体なんとかなるだろ」




 調味料も料理器具も持っていない彼らは、その場でオークの肉を丸焼きにすることとなった。


 肉の取り分で多少揉めたりはしたが、三人共しばらくぶりの食事にありつくことが出来た。






――数十分後、彼らは迷宮の地面でのた打ち回っていた。





「グエエエェ……腹が、腹があああああ」




「ウブッ……オ”エ”エ”エ”エ”ェ”ッ」




「イヤッ、もう無理もう無理! やめてええええ!!」





 オークに限らず、魔物の肉には人体に有毒な成分が含まれている事が多い。


 加熱するだけでは取り除けないので、シテンは今まで毒消しやポーションを混ぜ込んで調理していた。


 そんな事も今まで把握していなかった三人は、加熱しただけのオークの肉を食べた。そして腹を壊した。




 強烈な腹痛と吐き気、下痢などの症状が襲い掛かり、もはや三人は起き上がることも出来ず、地面を転がって悶え苦しむしかなかった。




(クソがクソがクソがクソがああああぁぁぁぁぁぁ!!! どうして俺がこんな目に! 俺は勇者だぞ! 女神から選ばれ、魔王を倒し世界を救う伝説の勇者なんだぞ!)





 三人のうめき声がしばらく迷宮に響いていたが、しばらくするとそれも止んだ。


 迷宮は何事もなかったかの様に、静寂を保っていた。






















「……おい、人が倒れてるぞ」




「うわ臭っ! ゲロと糞尿そこら中に撒き散らかしてやがる!」




「肉を焼いた痕跡があるな。まさかこいつら、魔物の肉を解毒せずに食ったのか?」




「マジ? “魔物の肉は解毒して食べましょう”って、今時なりたて冒険者でも知ってる常識だぞ」




「……息はあるようだ。魔物に見つからなかったのは不幸中の幸いだったな」




「で、どうする? こいつら助けるの?」




「見殺しにするのも後味が悪いからな……にしても、こいつらの顔どこかで見たような」




「……ん? クソまみれで分かんなかったけど、もしかしてこれ勇者サマじゃね?」

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