さわりについて
言うまでもなく文芸というジャンルに於いて、文章という表現手段を用いるならば最低限の国語力、というか慣用句やひとつひとつの言葉をもっと大切に扱って欲しいと思っています。
今後、改稿を重ねて私個人の思う事を綴っていきますので、ご意見ありましたら遠慮なく感想欄に書き込みして頂ければありがたいです。
初回の本稿では、最も気になる言い回しについてひとつ採り上げましょう。
登場人物が、他の人物から言葉や何かの音を聞く場面に於いて、心地よい台詞などで表される「耳触り(もしくは耳ざわり)」という言い回し。
一般的に使われている「さわり」というものは、感覚的に二つの事柄を指していますが、「触り」と「障り」があります。
「肌ざわり」と「舌ざわり」などに関しては、良くも悪くも触感について表現していますが、「目ざわり」と「耳ざわり」は視覚聴覚で受ける明確な不快感を表しています。
当てられる漢字も自ずと前者が「触」で後者は「障」になるはずで、「心地よい耳障り」「耳障りの良い」があり得ない表現になります。
言葉(単語)が一般化され常用される事で受け入れられるのは、日本語という言語の柔軟性もあるのでしょうが、文章を表現手段として用いる執筆者ならば、少なくとも書き言葉には充分気をつけて頂きたいと思います。
「いやそれは私が表現したい事なのであなたに言われる筋合いはありません」「自由に書いている(読んでいる)ので別に違和感ないです」など個人のご意見はあるでしょうが、それこそ私個人はこの言い回しが出てくるたび、強烈な違和感で作品の価値が内容が良いのにも関わらずモヤモヤしたものを抱える事になるため、是非とも一考の余地ありと受け止めて頂けますよう願っています。