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「死んでも理不尽に耐える従者」モードに戻りました

すいません、今回は構成上かなり短めです。

「ひどい目にあった・・・」


「あれは・・・ひどかったねー」


レオナは弟分のリオンと共に、昨日の「恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?・ズレヒゲ客演」の上演初日の後の惨状を思い出して溜息をついた。


レオナたちは集会場の外で土産物(版画で作ったズレヒゲの姿絵)売り子を担当していたが、上演開始そうそうに絶叫が響き渡り異常を察知した衛兵が突入してきて劇は中断になったからだ。


特に貴族の令嬢が3名もいたのが問題を大きくしたが、「なんでもありません」「劇に興奮して叫んだだけです」「あなたこの程度で大げさに騒ぐなんて、お名前を伺ってもよろしいかしら?」と当の本人たちから圧力を受け、衛兵としての追及はうやむやになった。


また初舞台の観客たちは劇場からの「お詫び」としてズレヒゲ姿絵をタダでもらい、それを胸に抱いて「ほぅ・・・」と熱い溜息をつきながら満足そうに帰って行った。


約束された日当がもらえなかったレオナは憤慨した。


「もうこの劇は失敗だから、やめた方がいいんじゃないなの?」


「いや、これは計画的な話題作りだ。明日以降はもっと話題になるはずだ。他に手も打ってあるしな」


ディセリーヌは、今日の取り分である金貨2枚と小金貨1枚を掌でチャリチャリさせながら、ケケケと悪い笑みを浮かべた。


「・・・ディセリーナちゃん、それはいいから掃除手伝って。この床じゃ臭くて寝れないよ」


リオンは悲しそうな顔をしながらせっせと集会場の床を水拭きしていた。今夜は一応はズレヒゲ関係者ということで、集会場に劇団関係者とともにタダで泊めてもらうことになったのだ。


「おっと、そういえば忘れていた」


ディセリーヌは劇団関係者にキャーキャー言われながら付きまとわれているズレヒゲことラフラカーンのところに行くと、鼻の下の付け髭をベリッと剥がした。

ついでに額の隷属水晶にも触れて、色を変えた(もとの「死んでも理不尽に耐える従者」モードに戻した)。


「あれ、ズレヒゲ様は?」


ラフラカーンから付け髭がなくなると、さっきまで黄色い声を出していた女優たちは憑き物が落ちたように冷静になり、首をかしげながら後片づけに戻っていった。


皆が立ち去ったあとには、ズレヒゲから戻ったラフラカーンが、相変わらず死んだゴブリンのような眼をして立ち尽くしていた。

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