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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
99/177

『金毛熊』亭の祝いにて

手持ち、残り銀で6239(+12000)枚と銅0枚。

やっと会えたね。

 新しい服を着て、気合が入っ……入り過ぎないよう、化粧はしないでおいて。

 その代わり、回り道をして尾行あるなしを確かめ、確かめしながら。ちょうど鐘の鳴る頃に、ご飯やさんに到着した。

 いつものテーブルは、衝立を増やして卓をくっつけてある。覗くと、ほぼ皆そろってて、居ないのはテイ=スロールさんだけ。アタシの前にある空席の右側から、アタッカーと僧侶とウォーリア、俯いてる黒い髪のひとと、シアバスさんとサムライのひと。

 これ、この黒い髪のひとが……シノビさん? だよね? アタシはピンと来たもんね!


「こんばんはー!」


 と歩いてって、顔をのぞきこめばやっと、(ふいっ)

 あれ? じゃあ反対側から(スッ)

 何よこっちだって角度を変えて(ヒュッ)


「マーエさん反射が良い。」

「私にゃ残像が見えるんだけどね。」


 前衛が何か、言ってるけど、聞いてる余裕ない!(バババッ)


「お前はちょっと落ち着こう、な?」


 横からシアバスさんの細長い指が、ひゅっと伸びてきて、アタシとシノビさんの無言の攻防は止まった。「や、だって、直視したら、な」とか言ってる黒髪のひとは、武闘家の腕をつかんで外そうとしてるけど、外れない。アタシの視線も。

 顔は、外仕事するひとらしい日焼けしてて、髪も目も真っ黒。目がおっきくて、ちょっと両端が下がった感じで、それがアタシを見てびっくりした風に見開かれてて。


「…よ」

「?」

「良かったなあぁ……本当に無事で……」


 声が震えてた。それで、「みるみるうちに」って言葉がぴったりなくらい、大粒の涙がこぼれた。一度こぼれたら、後から後から、あっ、わっわっ、どうしよ、


「あーあー、リクミの奴を泣かせてやんの?」


 シアバスさんひどいや。


「アタシが泣かせたことになってる!?」


 言い返しつつ、隠しポケットからハンカチだして、目元にそっと押し当ててると、上から手が押さえられて、「よがったなぁ……うぅう」てまたくぐもった声で言われて。

 いつの間にかシアバスさんは腕を外してて、席も外して、アタシの肩をぽんと叩いて座るよう誘導してくれて。

 ハンカチの上から押さえてくる手と、ハンカチから指に伝わってくるあたたかさが。

 両方ともアタシに、胸の奥にじんわり染みて。

 染みるってことは、今まで気づかなかっただけで、そこに何かが、欠けた何かあったんだろう。染みたところから、あったかいものがふわりと湧き出てきて。


「2人して泣くなって……計算外も甚だしい。」

「良いではないか。」


 シアバスさんはちょっと呆れてた風だけど、オアイーナんとかさんは、可愛いものを見る目だったことは、見なかったことにした。

手持ち、残り銀で6109(+12000)枚と銅0枚。

オアイーナブス(サムライ)の名前がちょっぴり記憶に残りつつ。

本作は、ほのぼの冒険譚を目指して……目指しております。


お読みいただきありがとうございました。

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