無自覚に意識しているのでは状態
手持ち、残り銀で6239(+12000)枚と銅0枚。
夕食前のお買い物回です。
先生はにんまり……ニヤニヤ……笑顔のままだったけど、アタシは「いやいやいや、それは無いですから! ないってば無い!」としっかり念を押して。
結局はにんまり笑顔のままの先生に見送られてしまった。
孤児院を出るところで、待っていたスーファン先輩と合流する。変装はもう解いてあったから、特に腕を組んだりとかもせずに。
そう、変装してないから腕を組まない、そんだけのことで。誰かと腕を組んでる姿を見られたくないなとか、そんな考えも頭の隅にあるけど。ちょっと気恥ずかしいだけだし。それは先生が変なこと言うから、気になっただけで。
頭の中で言い訳がぐるぐるしてたら、先輩が、
「マーエ? 顔が赤いけど大丈夫? 調子悪いならすぐ帰ろ。な?」
と、覗き込んできた。
「大丈夫、大丈夫です。先生の部屋に居たら本当に暖かくて!」
慌てて変な弁解をするけど。
うう、もう、先生が変なこと言うから!
街の子が、下宿に伝言を預けててくれたのを受け取ると、「夕食の時間は約束通り」だって。
まだ余裕があるから、明日以降の旅に備えて甘いものとか買い物して、『昼夜百日』の隣の古着屋(実質同じ店)で服も物色。
物色というか、もう店主に丸投げした。だって、
「可愛いのと綺麗なのと、どっちが良いんだ?」
って聞かれても、そんなん。変装じゃない恰好でどうしたらいいとか、分からないよ!
そういうわけで、「寒い屋外で活動することも踏まえて丈夫、かつ食事会とかに行っても野良着に見えない服」を選んでもらう。
首まわりを毛皮で縁取った灰色の編みセーターと、似たような色で、程よく古びた淡い銀色に見える、ゆったりした袖のついた、厚布の編み上げベスト。これは脇を紐で調節するから、きゅっと絞って着用。
その上から、ベルトポーチや短剣を下げられるような、幅広の革ベルト。下はブーツそのままで、黒の厚手のズボン。これは裾が広がる騎乗用で、隠しポケットも両側についてる。寒さ対策にもう一枚、下に毛糸編みのタイツも着けてある。
今回はレンタルじゃなく、買うことにした。旅に出て、替え服なんてすぐ手に入るものじゃないしね。銀貨で130枚、オマケだって言って、すごく長くて細い、橙色の布を貰った。
「これって何にするの?」
「『タスキ』と言ってな、袖が腕の動きを妨げないようにするんだ。こうやって結ぶ。」
長い紐を半分にして、端と端は蝶羽根結び。んで、中央をひと捩じりした二つ輪にしたら、片方の腕を通す。で、背中側に捩じり目が来るようにして、反対の腕も通す。紐が、肩の前に掛かるようにして、長さ調節が要るなら、蝶羽根を結びなおす、と。
何回かやってみて、理解した。
今日のところはしなくてもよさそう。街の外なら、タスキを使ったほうが活動しやすそう。
支払いを済ませて、
「ありがと(うっふん)」
「ウインクは要練習だな。」
の忠告に見送られて店を出た。
さあ、晩御飯会だ。すっごい楽しみって訳じゃないけど、きっと。シアバスさんとオアイーなんとかさんが、シノビさんを連れてくるはず……と、記憶のなかから、先生のにんまり笑いがよみがえって。
や、どんな人なのかなって、興味があるって。
それだけ。
それだけだから!
手持ち、残り銀で6109(+12000)枚と銅0枚。
替えの服が簡単に手に入るような世の中ではないです。お金持ちなら仕立てることもできます。古着屋で購入、自分でちくちく手直しか、裁縫の出来るひとにお金を出して頼むことになります。
なので、本作において『歳末バーゲンセール』に群がる阿鼻叫喚はほぼ無い(断じてないとは言い切れない)です。
お読みいただきありがとうございました。




