後片付け開始
手持ち、残り銀で6240(+12000)枚と銅2枚。
私的解決中心で歪な法体系の世の中ですが、孤児院育ちには孤児院育ちなりのケジメがあります。
元通り(だと思う)になった足で立ち上がった、まではいいんだけど。
アタシはひどい匂いで。服は血とかだけじゃなく、嘔吐したし、尿だってついてる。今更のように、ザレナは何をしてくれたんだって思うと。
額のあたりが熱くなる感じが再び。
その間にも、仲間と助っ人たちはてきぱき動いてた。武闘家のひとと、サムライが、ザレナを両脇で固めて立たせて。魔術師が、アタッカーと表通りに出て。野次馬の警戒とかしてくれてるんだろう。
そしてウォーリアと一緒に僧侶が、手下たちに、≪叫星組≫への話する内容を説いて聞かせてる。
「≪叫星組≫への敵対の意図はない。ただ、仲間さらわれたから、取り返しただけ。いいね?」
こんだけぶちのめしておいて。
という疑問がわいたけど。それを面と向かって言い出すよーな、勇気ある手下は居なかった。
アタシは、額をごしごし手でこすって、集まりかけた熱をなんとかしようと思うんだけど。
「あ、でもザレナだけは許さないから!」
つい口を挟んでしまって。
ウォーリアがこっちを向き、「わかるよ」って感じに頷いてくる。それと、まだ≪沈黙≫がかかった状態のザレナが、怯えた目を向けてくる。
アタシにどんな判決を言い渡されるか分からない?
まさか、まさかなんだけど、本気で分かってないのかな。
嫌悪感はある。けど、僧侶に黙らされるまでべらべら喋ってたアレは、自分の名前が連呼されてたけど、現実あり得ることとはマジ思えない。妄想というにも、ぶっ飛びすぎな話で。
人の足を切り落として、ドゥイドゥイ屋まがいの異形に仕立てた挙句、誰にも愛されるはずない不具にしてしまえば自分のことを愛するしかないみたいな。
正気を疑う、って感想がぴったり。そして、アタシはザレナ(先輩という敬称をつけたくない)の精神の、まともさっていうか異常っぷりを考えつつ。
ぺたっ、と裸足で一歩踏み出した途端、体勢を崩しかけたアタシを、誰かがすっと脇の下から支えてくれた。
「あ、ありがと。」
返事のかわりに、仮面が無言でうなずいてくれる。なんて良いひとなんだ。
支えられながらザレナの前に立つまで、アタシは色々考えた。
孤児院をでて、アタシだって失敗とか下手を打ったとかはある。けど、自分の頭のなかの話に合わせるために、誰かの手足を切り落として、できること全部奪って、自分だけにすがらせるようなことはしない。自分で作り出した絶望するしかない状況を『運命の恋』とか呼ばない。
そういう、『何かをできる可能性』や、『本人が選ぶ余地』を奪うのは良くないことだ、って。育て親に言われたり、間違いするたびに思い知らされて育ったのは、アタシもザレナも一緒のハズ。
なのにザレナは。
それなにアタシの足をッ……!
額がまた熱くなりかけるのを感じて、アタシは急いで怒りから気持ちを逸らす。怒るのは今することじゃない。怒ってここでザレナを殺すとか、意味ないことだもん。
そりゃ、頼めば仲間の誰か、アタッカーとかは一瞬で首を落とすこともできるだろうけど。
それじゃあ意味がないんだ。
じゃあどうすれば意味があるんだろ。心の片隅の暗いところから、「ザレナをとにかく傷つけてやりたい」と、嫌な顔したアタシが呟いてる。
支えられながらだから、相当もたもたとしてたけど。
ザレナの前に立ったアタシは、完璧に無表情を保ってた。
「アタシはザレナを許さない。孤児院で一緒にいた時までの恩義や、親しみはもう無い。これから先は、ありえなくなった。7の7倍、生まれ変わっても、ありえない。」
同情を惹こうと表情作ってたザレナは、完璧に打ち砕かれた顔になった。
それを見て、心の隅っこのアタシは「ざまぁ見ろ」と満足げになってたけど。アタシ自身は、「これだけじゃ意味がない」ことを知っていたから。
こう付け足す。
「ザレナ、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫様に、あんたを引き渡す。罪状の説明はアタシがやる。」
怨念とか絶望とか、そういう絶叫が聞こえずに済んだので、アタシは僧侶の呪文に感謝した。
手持ち、残り銀で6240(+12000)枚と銅2枚。
7の7倍、つまり49回生まれ変わっても絶対許さない、愛さない、の宣言です。
次回も後始末のあれこれです。
お読みいただきありがとうございました。




