マーエが体験した出来事
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
この世界に神様は実在します。
文字通り、「この輝く光があなたがたの目に入るのと同じくらい、神の存在は現実です」。
「目を閉じて。そして、足は元通りで、悪いことはなにも起きなかった。それを思い描いて。」
言われた通りにすると、感覚のなかった足元が、ほんわりと暖かくなった。
それと、周りの視線じゃないものを感じる。尾行されてた時の、首筋の毛がふわっとするのとは違う感じ、部屋の天井全体がひとつのでっかい目玉になって、こっちを見てるような感じ? そのくらい、大きな何かが、アタシを見つめてる。
誰だろ。
「……」
どこか、頭の後ろだか耳の奥だかみたいなとこから何か言われた気がする。でも言葉自体は聞き取れた気がしなくて、アタシには意味だけ分かった。
「神様。」
うんうん、と頷くような『気配』がする。あと、何か暖かい手? 手というか布? みたいなのが、よしよしって頭とか肩とか撫でてる。
育て親に柔らかい布で髪を拭いてもらう、小さい時の感触を思い出した。
思い出したとたん、体全部が、その「よしよし」に包まれた。足も。切り落とされて骨だけ突き出てる足の、ないはずの指先まで、こそばゆい。
変だな、あれれっ、てなってると、
「……?」
やっぱり言葉は聞こえないのに、内容は分かった。
強い足、速い足、考えるだけでナントカを踏み越える足、あと理解できない何かをどうかできる足は欲しいか? 要るならつけて/生やして/帯びさせてあげるよ、って。
「え、いや、要らない。」
一歩で7マイルも歩ける足とか、それこそ劇みたいで、興味は沸くけど。実際に自分の足に、ってなるとね。そんなすっごい力は、くれるって言われても、困るっていうか、要らないなぁ。
目を閉じる直前、僧侶様に言われた言葉がよみがえる。
「足は元通りで、悪いことはなにも起きなかった。」
それが一番いいや。うん。
「……。……」
すごく褒められたっていうか、たくさんの手からいい子だねーって頭撫でてもらった感じ。
いやぁエヘヘ、それほどでも!
って相好くずして笑いそうになる。
それと同時に、この相手は本当に巨大で、さすが神様だってのもわかる。
たくさんの手がある。頭の上全部を覆って、足の下から地平の果てまで支えてくれるような、大きい存在があって、大陸の果てから反対側の果てまでを見通すような、大きな意思のほんの一部をこっちに向けてるだけだって感じがする。その一部だけでも向けられて、アタシはすごく圧倒されてる。
「……」
「これが夢?」
全然、本物な、そこにいるって感じがするけど。
『これ』は眠っている神様の見ている沢山の夢の、そのうちのほんの一かけらなのだそうな。
えっ。だとすると、このやりとりも夢で、アタシは目を覚まして激痛にのたうち回ることになるのでは?
とか思ってたら、優しい手が、「大丈夫だよ」というように、ゆっくりと、ぽんぽんと、肩と背中と手の甲と頭をふんわり、そっと叩いてくれて。
そうだよ、実際に光をもたらして、怪我を治してくれる、僧侶が実在するのと同じくらい、神様も実在だ。
続いている優しい『ぽん…、ぽん…』のうちに、気持ちも軽くなって。アタシ自身が暖かさや、光や、おなか一杯でもう何も考えなくていいくらい幸せな気持ちに、鼻の先から尻尾まで全部いっぱいになって。
自分がすごく、ふわーっと広がっていく感じがしたと思ったら、誰かが。
「治ったのだ。目を開けて、マーエ。」
僧侶さまだった。
アタシは目を開けて、桶から素足をひっぱりあげて、自分で立ち上がった。
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
次回からは後始末のあれこれです。
お読みいただきありがとうございました。




