さあ面接です。
手持ち、残り銀で471枚と銅0枚。
不安な夜と不安な午前中と、いざ面接です。
質素だけど夕飯食べさせてもらって、下宿に帰ると。カウンター越しに、主人が伝言を寄越した。
「求人応募の件で、明日の昼に**********亭に来て欲しい、だってさ」
うっ。
店の名前が覚えられない。
こんな時は!
「ありがとう。その店ってさぁ」
昨日、偵察に行った道順を言うと、主人は「そこの店で間違いない」って。
さー心臓がどきどきしてきたぞー。
明日、昼。
昼だな!
よし!今日はもう寝るぞーーー!
けっこう時間が経ちました。屋根の端に見えてた双月の一つが見えなくなりました。
……あああ眠れない!
かなり時間が経ちました。夜空の端が明るくなってきました。
……明るさで気づいたから、眠ったんだろうけど、眠れた気がしない。
もうやれることはこれしかないや、って装備の点検、整備(を3周)して午前中の時間をつぶした。歩いてく時間を考えて早めに下宿を出て、覚えてる道順どおりに店へ。
カウンターにいた従業員に声をかけると、以前見かけたのと同じテーブルに案内された。違いは、籐編みの衝立がある点。空いてる椅子に座ると、周囲の物音が減ったから、そういう魔術アイテムなんだろう。(そこに払える余裕があるってことですねハイ)
アタシの右側が、筒型帽子を脇に置いた、巻き毛の若い魔術師。
その隣が、青い肌の僧侶。
その隣、正面が赤毛の重戦士、たぶんドワーフ。
で、左隣が白い髪を後ろ頭で結んだ軽戦士。
最初に口を開いたのが重戦士。
「応募してくれてありがとうよ。さて、コリウォンの迷宮には何層まで潜ったことがあるかい?」
「二層の『夜』が一番深くて、一回行きました。前のパーティとは、一層中心でやってました。」
「ふむ」
当然だね、と重戦士はうなずく。二層『夜』は、ひたすら暗いうえに、ルートが開拓し辛いだだっ広いだけの次元界だ。一層は、階が深いけど、迷宮という枠組みがはっきりしてる。ていうか一層以外に行けてるパーティのほうが珍しい。
もしかしてこの一団、三層『岩』とかも行けるのかしら。
過剰な期待をしたらいけない、と思いながらもアタシは質問する。
「アタシが要るってことは、一層ですか?」
あっ、妙な間と、視線のやりとりがあったぞ。そして、視線を最後に受けた魔術師が言う。
「提案です。まずは明日、一層に一緒に潜ってみましょう。ルートはこちらの慣れてるところ。お互いの動きを確かめるお試しということで、どうでしょうか」
質問に答えてもらえなかったな。
でもまあ、いいや。こういう風に言ってもらえるってことは!
ってことは!
「あの、アタシで良いんですか」
「いいよ?」
と、驚いたような返事をしたのは僧侶で、にこにこしているので。それに元気づけられた、アタシはもうちょっと踏み込んでみる。
「アタシ、あの、すごい欠点あって、あの、」
「うん」
「ひとの名前と顔が覚えられないっていう、苦手なのがあって……!」
言えた!
ってか、言っちゃった!
朝ごはんや、夜の燃料代で減ってます。手持ち、残り銀で465枚。
お読みいただきありがとうございました。