いっぱいになっちゃって声にならなくて
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
シノビ登場回。
意識が戻る、っていうのは。
本当のところ、「うっすら感覚が戻る」から、「鼻先からしっぽまで全部つながった感じがわかる」まで、段階が色々あるんじゃないかな。
そういうアタシはというと、
「右手の指先は大陸の東の果てを掴んでて、左手は双月の間をふらふら飛んでて、頭はたぶん街のどこかに宙づりになってる感じ」
が最初にきて、怖くて目を開けられなかった。
本当に宙づりだったらどうするよ? 目を開けた途端のショックで吐くかもよ? てくらい、……いや? なんか変だな?
体がちゃんとある感じが、全然ないぞ。
ちゃんと息できてるかな、ってのをまず確認。(こうやって考えるのができるから、死んでる気はしないけど、死んだらどう感じるかってのも知らないからね!)
匂いがわからないけど、自分の鼻がスンスン鳴るのは聞こえたし、それって耳もちゃんとあるってことだよね。うん、動かせてる感じがしないけど息してるし、生きてるみたい。
みたいだけど、強力な麻痺系の薬か、魔術を使われたのか。本当に感覚ないな?
口。唾を飲み込む。できた。けど、舌は動いてるのかな……。こんな風に自分の体が、自分のなのに、分厚い布ごしに動きを確かめてるような。
ううー、イライラしてくるなぁ、もう。
でも、がんばれアタシ、やればできる、大丈夫って、自分で自分を励ましてから目を開けてみると、ひどい吐き気に襲われることはなくて。右手の指先は大陸の果てじゃなく、ちゃんと腕の先についてるのが見えた。首も動かせたから、周りを観察。
薄暗くて、あまり天井高くない、梁の上の板張りが見える。窓は板を閉じてて、光が入ってないってことは夕方か、夜かもしれない。アタシが横たわってるのはベッドの上。手触りからして綿入りかぁ、アタシの下宿よりいいもん使ってるな。
さて、感覚がまだもどらないけど、全身はちゃんとあるかどうかだ。
頭を持ち上げてみる。 ……っても、首から下が力入らなくて、肩でふんばれないもんだから。顎を引いて、目玉を動かして見える範囲、両方の伸ばした手が見えたくらい。
それでもアタシはほっとした。コートは脱がされてるけど、その、いわゆる裸に剥かれてどうこうじゃないてことがね。
これで首から下に力が入るようになれば、もっと何かできるのに。
とか思ってると。他に見るものがないから、なんとなく目をやってた窓板。合わせ目の留め金が、ことん、と外れた。ほんとは耳はよく聞こえてないけど、あれって留め金外れてない? 外れたよね?
確認で見つめてるうちに、板戸が半分、外に開いて。ああ、外暗いんだーって思ううちに、あれっ夜じゃなかったのかな、紺色の布を巻いた誰かなのか何かなのかが。
するっと床に降りて、また戸を押し戻して(やっぱり外は暗いみたいだった)。動いてるのが水みたいになめらかで音もないから、立ち上がる姿みるまで、ひとだと分からなかった。
全身全部、紺色の布を巻いてて、顔だけ出したひとだ。顔のとこも、淡い色の木を彫った仮面になってる。
部屋全体は薄暗い(アタシの見えないところに、芯を絞ったランプか何かあるみたい)けど、そのひとにはきちんと見えてるみたいで。ベッド上のアタシを見つけてびっくりしたのか、軽く頭をのけぞらせかけたのと、目が合った。
「あー…っと、目が開いてるてことは、意識あるか。助けに来たよ。」
言い終わる前に、足音なく、脇にやってきて、膝をついて。
アタシがただ黙って(だって舌がうまく動かなかったんだ)、目をぎょろつかせてたのを、「ああ、そだ」と何かしら理解してくれたみたい。
「符牒を言ったら君が安心するって言われたんだけど。『ダイニング・キッチン』て、合ってる?」
うんうん。
あってる! あってるよーーーー!
ああ仲間から助けが来たんだって、それだけでいっぱいになっちゃって声にならなくて、アタシはとにかく動かせるだけ、頷きまくった。
その反動で頭がくらくらしてきたんだけどね。
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
マーエの方はこうなっていますが、本人のバッドステータスが問題です。




