一つ月の鐘は、日没の一刻後の鐘
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
マーエ以外の人々はどう動いたか、交通整理中です。
『金毛熊』亭の一角に詰めた冒険者たちは、正午の鐘、午後はじめの鐘が鳴ってもまだ、動き出せずにいた。
「確認ですが。ザレナというひとが居ないのは事実なんですね?」
ウィザードが尋ねると、街の子は「そだよ」と、面倒くさそうに返す。その問いはほかの連中含めてもう9回目だからだ。
「向こうの地区の『泥さらい』が言ってたんだ。早朝に出てった後、戻ってきてねぇ。」
椅子の上で座りなおし、肩を反らして背中の凝りをほぐすが、今ひとつうまくできた気がしない。じっと、座しているほかない状況は、トカルだって辛い。
だが、一緒に仕事していた大人たちのほうがずっと、気分は良くないはず。(ここで俺がガキじみた癇癪起こすわけにもいかねーだろ)という、はっきり言葉にはしないまでも、彼なりに自尊心があった。
それに、隣の椅子で静かに座してる父が。
「こっちのリクミも捕まらんからな。仕事先に伝言は出したが、昼休み受け取ったとしても、急に来ることは難しいだろう。計算するまでもない。」
ウィザードは、「まあ、その通りですね。」と一応は、同意してみせる。
父が口にしたのは、一緒に迷宮に潜ることのあるシノビの名前だ。
トカルは彼が速く来てくれるよう、道端の神≪泥はね≫にこっそり祈った。頬にそばかす痕が残るウィザードが、お坊ちゃんな見た目じゃ想像つかないような、過激なことを口走ったので。
魔術流派≪豊饒の大地≫が、地面の制御──土を泥に、泥を砂に、そして石を造るも壊すも自在だからって──建物の組石を全部砂にしてやろうか、なんてマジかよ。いくら怒っててもダメだと思う。マーエさんが生き埋めぺしゃんこになるじゃないか。
物思いに沈むトカルの思考を、
「お、居るねぇ!」
と女の声が遮った。
「シジラさん?」
「ですです。今日の探索に行ってきた帰りなのかな。この人たちは?」
と、シアバスら3人を指す女は、レンジャーのようだった。防寒コートの下は動きやすそうな、革の部分鎧が見えるし、動くたびに鎖かたびらの音もする。
忙しく視線が交錯して、僧侶メバルが立ち上がった。
「実は、マーエが誘拐されたのです。」
「穏やかじゃないね!」
腕組みをするシジラは、考える顔つきになった。
「協力できることは、何かない?」
大人たちが話しだし、頭の上の方で会話が飛び交いだすのを感じながら、トカルは椅子を滑り降りて、衝立の外に出る。店から脇道にはいると、部下たちが集まってきた。
縄張りのいざこざはなし。伝言を頼まれたぶんの穴を埋めるよう、隣の街っ子に指示をだす。
それから『泥さらい』の伝言で、
「ザレナという女は日暮れの鐘か、一つ月の鐘になる頃に戻るらしい」
と聞いて。危ないことするなー、とは思ったものの、この情報はすぐ要る。
『金毛熊』亭に取って返すと、さっきの女レンジャーと、メバル様がまだ話していた。
「分かった。私がチームの名前背負ってるのは事実だ。≪叫星組≫に見つかるのは良くないし、今回は出ない。」
「それはもちろんなのだ。」
「代わりに、顛末は必ず、絶対に、教えてください。」
「うん、約束する。」
レンジャーが出て行ったのを確認してから、トカルは椅子によじ登って、最新情報を発表することにした。
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
交通整理は終了です。
次回から、本作は〔残酷描写〕 が含まれています、的な内容にも入っていく予定です。
お読みいただきありがとうございました。




