動き出す仲間たち
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
マーエ以外の人々はどう動いたか、始まりです。
『ごみ漁り』の少女が伝言を届けたとき、その子はちょっと失念していただけだった。
伝言のはいった木筒を受け取り、届けてから戻ってみると、まだ誰も縄張りには来ていなかった。縄張り取った取らないの喧嘩はなさそうで、ひと安心したとき。建物壁の陰から、ぬっと腕が伸びて、襟首をつかまれた。
「お前どこ行ってたの。」
「で、伝言を頼まれたんで、行ってきたとこ。」
通りを隔てた下宿兼食堂の名前を告げると、兄貴分はそうか、と手を放してくれた。
「ところで、フリーランスの盗賊が通るのを、誰か見かけたか?」
そう言われて、思い出したのだ。
銅貨5枚で伝言筒を渡してきたのが、やたら顔のいい盗賊、マーエって名前のひとだったこと。
見かけたら、尾行がついてないかどうかちゃんと見ておけよ、と命令されてるひとだったこと。
「おい。」
ガタガタ震えだした彼女に、兄貴分が不審そうに顔を覗き込む。
「おいってば!」
「……ど、ど、どうしよぉ……」
「震えてる場合か。お前も縄張り持ちなら、しゃんと胸はれ。責任ってもんがあら。『金毛熊』亭に行って、ちゃんと着いてるかどうか確認してこい。」
「うん、でも、つ、着いてなかったら、」
「そん時ぁ、事情を話すんだ。メバル様か誰か、仲間が来てるか聞いて、な。来てなかったら、そこに伝言置かせてもらえ。そんでおいらん所に戻って報告。いいな?」
「う、ん。メバル様か、誰か来てるか聞いて、居たら事情話す。いなかったら、伝言置いて、ここに戻る。で、いい?」
「そうだ。ほら、走れ!」
「はいっ」
走り出す前から、心臓はドクドク脈打っている。
『金毛熊』に着いたら、マーエさんはもうとっくに打ち合わせとかしてる最中だったり……なぁんだ、慌てて損したって一緒に笑ったり……。
あったらいいのにという情景が、何回も何回も浮かんでくる。安心したい気持ちが見せる、まぼろしだというのに。
重装戦士ヨアクルンヴァルは、出がけに洗い桶をひっくり返してしまって、後始末に追われてしまった。
『金毛熊』亭にやってきたのは自分が一番最後だろう、と思っていたのだが。お茶をもらいながら、「遅いねぇ」とつぶやいたのは、マーエのことだった。
時刻は早朝の鐘の次、日の出の鐘が鳴ったのを聞いてしばらく経つ。
マグカップに水を注いでいた僧侶が、「そうだね。」と言ったとき、衝立の外から誰かが顔を突っ込んできた。髪にゴミくずをつけたぼさぼさ頭の少女が、開口一番。
「メバルさん居る!?」
「どうしたのだ。」
「やっぱマーエさん来てねぇ……、やべぇ」
うろたえた様子の子の前に、僧侶がしゃがみ込む。ほかの3人のまわりで、空気が緊張を帯びた。
「落ち着いて、話すといいのだ。マーエはまだ来てない。それが何故いけない?」
「伝言を、頼まれて。そのあと、張ってる街っ子が誰も居なくて。で、ここに来てないって、う、うぁあああ」
話す調子が次第に甲高くなり、とうとう泣き出した子を抱きしめる僧侶の脇に、ヨアクルンヴァルが椅子から立ち上がった。
「拐かされたとすれば、≪叫星組≫だ。この前、テイんとこのレーア嬢ちゃんが、アタシを引っ張ってった所だろうね。」
「レーアが……、ですか。しかし、今朝は何も言っていませんでしたよ。」
また勝手なことをと顔をしかめる半分、驚き半分といった表情で、テイ=スロールが茶器をテーブルに片づけ始める。すでに軽装戦士は装備品を確認し始めていた。
「場所がわかってれば、近所が縄張りの≪街の子≫に聞くって手もあるさね。嬢ちゃんは、『ごみ漁り』に伝言を頼めるかい?」
ウォーリアに尋ねられた少女が、僧侶の肩から涙ぐんだ目を上げて頷いた。
「親父ィ! 親父どこーー!?」
開ける前の道場に、男児の声が響く。二階にいたシアバス師範にもそれは聞こえたが、階段を駆け上ってくる足音を出迎えたとき、その一言は、
「合言葉は?」
だった。
「果実、曇り!」
叫ぶような合言葉に、シアバスの目が細められた。果実はあの≪自由な盗賊≫のこと、曇りとは、不明ということ、この場合は所在不明か。
「直近の足取りつかんだ場所は分かってるか?」
「うん。一番近くの『ごみ漁り』の伝言もきた。」
「よし、旦那とあとリクミにも声かけるぞ。」
階段を降りきって、扉に向かおうとするシアバスの腕を、子が慌てて引っ張る。
「それよかさ、≪叫星組≫の事務所らしいって、目星つけてるんだって。」
「≪叫星組≫か」
シアバスの眉がひそめられた。
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
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