朝起きて何か忘れてたんだ
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
朝起きて、出かける前に忘れないように、と思ったものを玄関に置きっぱなすことってありますよね。
道場出るときにもう一回、装いを変えて下宿に帰りつき、変装を解く。
というのも、部屋に向かいかけたとき、従業員が止めにやってきて。急いで変装解いて見せたはいいものの、「なんだなんだ?」ってやってきた主人とかにも、変装の話をすることになっちゃったんだ。
この数日、ちょこまか髪型とかいじってたのは知られてるので。
「尾行がつくたあ、穏やかじゃないねぇ。」
下宿屋の主人が、眉を寄せながら唸る。ただ、それはアタシが心配でのことで。払いがしっかりしてる店子を追い出すとかそういう話じゃないよ、とも付け加えてくれた。
「ここのことは、バレてないと思うな。で、こういう風に変装してくることもあるから、アタシの符牒も教えておくよ。『ダイニング・キッチン』って言うんだ。」
「マーエさんがそう言うなら、バレてなかろうな。符牒も覚えておくよ。」
冒険者が利用する下宿をやってるんだし、このくらいはトラブルのうちにも入らねぇよ……とのことだった。
半端に化粧を拭い落としたのが気持ち悪いんで、部屋の水差しで軽く顔だけ洗って。清潔なシーツにぼふっと突っ伏す。
今日は色々あったな……。
午前中の探索。他の冒険者には知られてない遺跡の、おそらく番人といってもいい強いアンデッドが居たなぁ。
あの大広間の探索は疲れたなー。
集中力を維持するコツ、重要性。先生に叩き込まれたとはいえ、実地に維持するのはいつも大変だ。
突き詰めていえば、アタシという索敵、探査が集中力を途切らせれば、それがパーティの生存率を下げる。最悪の場合、即座に生存率じゃなく、死亡率になる。僧侶とかが傷を癒せるっていっても、それは死んでなかったらだし。
『最悪の場合』って言うのは、回復役が即死してたら、という場合もアリだから。
つまり、アタシは今日もいい仕事したなぁってこと。
午後は、おまけみたいなもん。『ふるゆわ』のチームハウスでキマル達を探しに行く段取りがついた。
それで知れたのが、うんそっかー、サブリーダーさんはねぇ、うんうん。シジラさんにねぇー。他人様のことながら、ちょっとニヤけちゃうなぁ。
シジラさんてば、「自分も探しに行く」気で話をしてたら、サブリーダーさんに遮られて、というか上手く引き取られて「そこは物資提供しますので」みたいになっちゃって、拗ねた顔になってたけど。
まぁ子供じゃないんだし、上手くやるんだろうか。でも恋をしたら、大人でもとんでもなく子供じみたことをする、という話も聞いた事あるしな。
恋か……アタシの知らない世界。
あっヤダ、考えが暗くなりそう。
毛布にもそもそもぐりこむ。
スーファン先輩に伝言しなきゃ……。そういや、集合場所から出ての尾行が何度かあるし。今のところ塒がばれてないにせよ、逆に集合場所のまわりで網を張られるかもとか。明日『シナビ』のことを訊いてみようとか。
ちゃんと憶えておこうって、思ってるうちに寝ちゃってたみたい。
翌朝。
朝飯を食べながら、スーファン先輩にも伝言を託した。
明日か明後日のうちに、キマル達を探しにゆくことになった話から書いて。
せっかく調べに回ってもらって、同年の先輩たちにも声かけてるんだろうが、アタシが居なかったら申し訳ないって。だから伝言なり送るときは、孤児院宛でお願いします。
などなど書いて。
街の子に託してから、足早に集合場所へと歩いていく。
冬の朝もやの中、温かい麦粥や薄焼き(と包めるおかず)売りの屋台からも、湯気が立ってて。コートや毛皮で分厚く着込んだひとが、湯気の海のなかにうかんだ、あまり色がはっきりしない丸い石みたいに動いてる。
アタシもフード被って、丸っこいコートの塊のひとりになる。
昨日耳にした、『シノボ』って言葉のこと、誰かが知ってるといいな……。
ウィザードか僧侶なら知ってる気がす、
「っ!」
視界を塞がれた、あっ口を何かで押さえられて、薬か? 魔術か?
意識を強く持って抵抗すれば……
(何かが首筋に触れてる感触)
(頭がぐらんぐらんする)
(体全体がばらばらで、全部別方向に揺られてるような、感覚)
(誰か知らない人の声がする)
……までは途切れがちに覚えてる。
手持ち、残り銀で6240(+6000)枚と銅2枚。
第二部は人探しクエかと思って書いてたんですが。
スタートしたと思ったら脱線しました。
お読みいただきありがとうございました。




