帰途の接近遭遇
手持ち、残り銀で6248(+6000)枚と銅2枚。
作者はアレルギーが出るまで、エビフライ大好きでした。
暗くなってからだと、知ってる街でも歩き方は違う。
アタシは、孤児院を出る前に洗面台を借りて、顔を変えた。手持ちの布を詰めたり、隠し武器の場所変えたりして肩や腕の感じを太くして。髪も後ろになでつけて、頭のてっぺんより少し後ろで紐でくくる。そういやアタッカーはこんな髪型だったな、て思い出して、ちょっと嬉しくなった。
さすがにねー、十日以上一緒に仕事してたら、顔やら背格好やらも覚えてくるってもんよ!
鼻先から顎にかけて、イヌ系獣人の半獣化形態に化けて見せると、育て親はうんうん、と頷いてくれる。
これと、裏返したコートを羽織って変装は完成。ぱっと見た時、コートじゃなく、毛皮を雑にひっかけてる風に見えればいいのだ。
寒いんで、肌肉健肯道場へと、のんびり歩いていく。走ったら温まるだろうけど、目立つのは避けたいし。ここは寒くても我慢、我慢だ。
暗くなると通りの露店も入れ替わってて、食べ物屋が減る代わりに、温かい茶や酒、温石を売る店とかちらほら。お腹とか入れると温かいよね、温石。
目がついつい、通りの角の温石屋台を見てしまうなぁ。
通り過ぎざま、屋台の横に居た二人組の会話が耳に入る──その場所は、ちょうど道場の裏口がよく見える。
「うぅ、寒ぃなぁ。本当に来るのかよ。顔の良いテルセナってやつ。」
「テルセラやろ。黙れ。あと1刻だ。」
こういう場所で、テルセラという語で指すような相手を、アタシはアタシしか知らない。
靴の泥を落とす振りして、近くの石にガリガリ、もう少し時間を稼ぐ。
「寒ぃもんは寒ぃだろ。」
「姐さんに報告さえ済ませりゃ後は酒屋で一杯できら。いいから黙れ。」
「あ、あそこのはテルセラか?」
「バッカ、ありゃ男やし獣人やろ。黙れ。」
うん、変装してますのでね。
本当は走りたいのを我慢して、のそのそと道場の裏口から入る。受付カウンターには、あの痩せぎすで被り物したひとが居た。
「おや?」
「割符ならあるよ。(マーエだ、変装中)」
小声で付け加えると、受付は頷いて、更衣室を使わせてくれた。
賑やかなサウナですっかり温まったし。マッサージも受けようと思って戻ると、受付さんの横にえらく体格のいいひとももう一人いて。変装落としたアタシがでてくるのを見るなり、かるく手を挙げて手招き。
「何だい?」
「紹介しておくよ、俺の相方。」
でっかい(背は高い、肩幅はでかい、全体が筋肉でできてるような感じだ)ひとが、小さい椅子の上できっちり会釈してくる。
「■■■ー■■■と言う。無理に覚えてくれずとも結構。貴殿のことは、相方に以前から聞いている。」
「あ、ども。マーエです。≪自由な盗賊≫やってます。」
「うむ。メバル殿たちと一緒に行動しておられるとも聞いた。」
「僧侶さま知ってるの。」
「ご縁あってな、助けられたのだ。なぁ。」
真横に座ってる受付で、ここの道場主だって言ってたひとが、話を振られて頷く。
「そ、計算外なことにな。俺ら……とあと2人。陸で冒険者やることになれたのよ。俺が武闘家。こっちは何だと思う?」
「えーと……」
どっかで聞いたぞ、数は少ないけど魔術と剣技が合わさったような、独自のワザを使う職。このひとみたいに、袖がひらっとした衣をつけて、湾曲した片刃の剣を使うって言う……。
あっ思い出した!
「ハムフライ。」
「……ッ!」
二人とも顔をそらして肩を震わせてるぞ。
むー、これは違った? でも、何とかライって言うはずだ、そこは確信がある。
「カキフライだっけ。」
口元を手で覆ってた大きいほうが、とうとうむせた。
「サムライな、サムライ。」
笑いをこらえきれなくなった武闘家のほうが、正解教えてくれて。
「そんで、今はまだバイトでてるんだけど、マーエと似たような職の仲間がもう一人居るんだ。■■■っての。」
「似たような? 盗賊じゃなく?」
盗賊じゃないのに似たようなって何だろ。謎かけにしてはまるでヒントが無い。
困りかけたけど、サムライがすぐ助け舟を。
「うむ。元はレンジャーの素養もあったのだが、冒険者に復帰した際、シノビの修行を始めてな。」
「シノビ?」
いかん、逆に訳が分からんくなってきたぞ??
こんがらがってきたアタシの様子を察してか、武闘家が、
「まぁ、追々会える時に顔合わせしたらいい。そいつのやってるバイトは屋根修理や煙突管理とか、高い所の仕事が多いんだ。身軽で目や耳が良く、手先も器用でないとやれない仕事が向いてるのさ。」
って。シノビ、という異国風の言葉だけが耳に残る。
明日にでも、誰かに聞いてみようかな。
考えてると、サムライは目線を裏口のドアの方に投げながら、とんでもないこと言い出した。
「■■■■から、マーエ殿が今しがた待ち伏せに遭いかけた話を聞いた。どうであろう、ひとつ俺が行って、角に屯する連中をひっ捕らえて」
「ダメダメダメッ!?」
アタシが遮ったので、目をぱちくりされたけど。
「そ、それは、待って、待って。別件で調べてもらってるから。ぶん殴って捕まえても、逆効果になったら困る!」
「戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ、と云う。ならば俺は手を出さずにおこう。」
「そうしてください。あとね、」
サウナの熱もだいぶ冷めてきたし、そろそろ帰らなきゃな時間だ。
「あと、アタシの符牒教えておくよ。」
「じゃあ俺らのも教えておこう。」
武闘家と、サムライの符牒を教えてもらったんだけど。
アタシの符牒が決まった経緯を話した途端、二人ともテーブルに突っ伏しての大笑いされてしまった。
手持ち、残り銀で6245(+6000)枚と銅2枚。
カキフライは今でも大好きです。
お読みいただきありがとうございました。




