何もかもお見通しで、ほんとうに頭が下がります
主人公の名前が判明。今頃!?って言われそうですが(設定してなかった)。
手持ち、残り銀で471枚と銅0枚。
万神殿は大きい。町の区画ひとつ丸ごとが、敷地になっている。いろんな宗派の礼拝堂が大きいのも小さいのも、巡礼用の宿舎とか、施療院とかいくつも建物が寄り集まってて、そのなかに、アタシを育ててくれた≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫の孤児院がある。
パーティ解散が決まってから何度も顔を出してるので、門衛も顔パス。≪湖畔の住人≫の武僧は、赤いかざりのついた長い棒ひとつで戦うひとたちだ。
大きい子たちと畑に出かけてたり、小さい子供たちを昼寝させる時間帯。アタシが探していた人物は、子らが寄り集まって眠る木陰にいた。
「おや、久しぶりね、マーエ」
育て親は、片足をかばいながら座って、アタシを手招きする。マーエ、というのがアタシの名。
「久しぶりっす。あの、アタシ宛に伝言とか届いてますか?」
挨拶そこそこに、横に座るアタシに、育て親は小さく首を振った。
そっか。
冒険者パーティに盗賊が足りなければ推薦してくれるよう、頼んであったんだけど。
期待は薄かったから、そんなに残念じゃない。同じようなことは、先輩にも頼んである。こういうのは本当に運任せだ。
育て親は本当に面倒見よくて、アタシだけじゃなく他の巣立った子たちが、こうして仕事の世話やら愚痴やら話に来ると、嫌な顔一つせず聞いてくれる。
アタシが来るやいなや『なんでも言っていいんだよ』の顔になってるけど……、いかんいかん、甘えに来たわけじゃないぞ。
「あの、今日は夕方まで暇なんで、何かお手伝いできる仕事はないですか」
「そうね……厨房がいつも手を欲しがってるね」
礼を言おうとしたら、手を挙げて止められた。
「お夕飯は皆と一緒に食べていって」
何もかもお見通しで、ほんとうに頭が下がります……。
今回は手持ちが減りませんでした。手持ち、残り銀で471枚と銅0枚。
お読みいただきありがとうございました。