子供たちに囲まれて身動きできない
手持ち、残り銀で6248(+6000)枚と銅2枚。
文字通りの意味です。マーエは当然、名前は憶えてないですが、年齢下の子たちにとって頼れる先輩な訳で。邪険になんてできません。
戻ってきたボリスさんは、無表情だったけど。
「別に嫌なワケでもないですよ?」
「あ、そーなんですか」
「年に一回かそこら、来るんですよ、父の道場に居たひと達。まぁ、僕があまり顔見せない分、向こうからくる感じです。」
「それって。」
アタッカーが顔見せないせいでは?
全部は言わないようにしてたけど、顔にでてたみたいで。アタッカーはちょっと目線を他所にやって、ボソッとつぶやいた。
「……道場のひと達、暑苦しくて苦手なんですよ。」
「なるほど。」
師範だった人の言葉を伝え聞いただけで、あの号泣だもんね。分からないでもない。
僧侶の治療も終わった後、連れていく騎獣とか荷車とか見せてもらったりして、話はすごく順調に進んだ。
これで明日は出発ね!
……とは、ならなかった。
いま探索してるダンジョンのことは、ライバルが居る訳じゃないから問題無いけど。
アタシは、スーファン先輩が『調べておくよ』って言ってた結果を、まだ聞いてないし、メンバーにだってそれぞれの予定もある。テイスロールは、実家の事業との兼ね合いもある。たぶんボリスさんは、家の掃除を気にするだろう。
明日は一層『迷宮』に軽く入って、午後いっぱいをかけて準備そのほかしようね、って話になった。
皆と別れた後、孤児院に向かう。育て親は床でじたばた泣いてる子の相手で忙しそうだったんで、万神殿の事務棟へ。
今日の収益も含めて、大きなお金預けてるからなぁ。担当は親切に、信用貨のことも教えてくれた。
「マーエさんも信用貨口座を作るの?」
ってすごく期待の目で見られたけど、それはないです。第一、アタシは前にやらかしたでしょうが。
信用貨の受け渡しに必要な一連の語句を書いてもらっての帰り際、子どもらに見つかった。
「肉は?」
「あ、今日は無いですっ。」
「お肉……」
「にく……」
「魚でもいいのに……」
いっそ大声で文句言われたほうがまだましだ。しょんぼり見つめられると、心の隅がチクチク痛いじゃないか。
しゃがみこんで、目線をあわせて告げる。
「ゴメンね、しばらくは持って帰らないと思う。」
「マーエ、それはどういう事なの。」
子どもたちに囲まれて身動きできないところに、育て親がやってきてしまった。キマル達を探しに行くためだって話をしたら、微笑んで頷いてくれて。
「ダハネから聞いてました。行くのはいつですか。」
ダハネ、というのはアタシやスーファン先輩の先生の名前ね。
「明日すぐは無理ですが、近いうちに。出かける前には、ここにも連絡します。」
「きっとですよ。」
「ハイ!」
これで宿に帰ってたら格好いいんだけど。
実はその後、
「お肉がまんするから、早く帰ってきてね」
「お肉のひと、死んじゃいや」
とか、小さい子たちがぐずりだしちゃって。育て親といっしょになだめて回って、結局夕飯もご馳走になり(ダイア・キンケイの塩振り焼きは、ちょっぴりでも美味しかった)、などして。
帰るころにはすっかり日が暮れてしまったのだった。
手持ち、残り銀で6248(+6000)枚と銅2枚。
だからこの話はほのぼの冒険譚(を目指す)って言ってるでしょう。
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