お昼ご飯の前に入金発表
手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。
ちょっとだけ、特別な経済装置『信用貨』の登場です。
街に戻って、いつものご飯屋さんで分け前を勘定してもらった時。
会計担当のウィザードが、「もう一つ良い知らせです。」と切り出した。
「先日の武器工房へ売却した分、銀貨で6千が入金されました。今のところスロール商会の信用貨預かりですが、現金化しますか?」
と、最後のはアタシに向けた疑問。
商売人や、神殿、ギルドは、桁の大きなお金を扱うとき、貨幣で持ち歩くことはしない。資金の残高と、取引記録をしてある、信用貨を使う。
利用してる中には、大きな冒険者のチームもある。
貨幣持ち歩かない代わりに、支払いや引き出しの時に証書を発行してもらる。例えば支払いの証書を渡された側は、自分の利用する信用貨取引所で引きだしたらいい。単に残高だけとか、まとめて取引履歴の証書を発行してもらって、『払い込みが済んでる』ことを確認するだけの所もある。
「信用貨が使えるってすごいね!」
「あっいえ、まあ、手数料ぶんをしっかり稼がないといけないのですが。」
「高いのかなぁ」
「はい。年あたり、銀貨1万枚を取られます。≪商人社会≫に議席を持つのと同じくらいです。」
うへぇ。お金があればあったで、それは大変な話だった。
それでも信用貨を使えるメリットは大きいらしい。何万とか何十万も荷車で運ぶ手間やら、盗まれたり襲撃されたりするリスク、そういうのを防ぐための出費やら護衛を雇う手間を考えれば、一年で銀1万は我慢できる料金ってわけで。
ただアタシも、今日の分け前1485枚がある。
「このうえ1200枚も持って帰るのは大変だし、うちの教会に信用貨のこと聞いておくよ。」
「違いますよ、マーエさん。」
書き込み済みの帳簿に、インク吸いの紙を押し付けながら、ウィザードは首を振る。
「銀6千というのは、一人ぶんです。」
「マジで?!」
「本当です。」
おおぅ、マジか。
「これって、最初の買い取り分に対しての払いなのかな?」
「その通りです。次のぶんの支払いは、明日に受ける予定です。」
わずかの間に、貯金もためられるくらいのお金持つことになっちゃった。速攻で、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫教会の信用貨扱いに問い合わせなくちゃ。
あ、でもこの後、と思ったら僧侶が先に。
「ご飯食べたら、『ゆるふわ』に行くのだ?」
「そうだね。ご招待いただいたんだし、皆で行くかねぇ。」
ウォーリアが、従業員の持ってきた大皿や鉢を受け取って並べてくれる。カメダイクマの干し肉戻し煮、薄焼きチャパティ、黄色チャナ豆の茹でたやつ。調味料に醤と塩が付いてきた。
従業員を呼び止めて、甘味が無いか聞くと、黒チャナ豆の甘茹でというのがあるって言われた。
試しに頼んでみると、鉢に盛られた黒、てかすごく濃い紫色みたいな豆がでてくる。豆の形が半分残るくらいの柔らかい煮込みで、蜂蜜の甘い香りが美味しそう。ひと鉢で銀貨7枚だからちょっとした軽食なみの値段だけど、蜂蜜でしっかり甘くしてあるのなら、まあ妥当かなって。
懐がすごーくあったかくなったからね!
ちょっとくらいいいよね!
「これ、チャパティに包むと美味しいのだ。」
メバルさんの指南を受けつつ、薄焼きのなかに煮豆を伸ばして、端からくるくる巻いて筒にしたのを齧る。これ、お茶にすっごく合う。美味しい。
無言で一気に食べてしまって、はっと気づく。
「あ、皆も食べて食べて!これすごく美味しい。」
「はい。でもマーエさんが一番食べてください。偵察は集中し続けですから、甘いものが良いと言いますよ。」
メンバーがそれぞれチャパティに盛って巻く中、ウィザードも甘い黒チャナ豆を食べてて。
アタシは2個目を巻きながら、
(このパーティ、他の職種の仕事にきちんと接するっていうか、上下が感じられないけどお互いを大事にしてるよね。)
と、しみじみ居心地の良さを味わってたのだった。
手持ち、残り銀で6248(+6000)枚と銅2枚。
特に本編には関係ない設定:『信用貨』は基本、銀貨10万以上の資産持ちに加入がほぼ義務となる非実体通貨。取引記録は≪レンの書庫≫の一区画に暗号化された記録が保持され、かつデーモンによりこの世界の全支店における総合記録にも保持される。記録の読み書き、暗号化、共有化の全ては≪緑の焔≫信仰団が運営する、デーモン・プロトコルが担当。
一箇所の記録を改ざんしても、他のすべて及びレンの書庫にある記録には及ばない為、照合すれば容易に改ざんが発覚する。全部の記録を暗号突破して書き換えることは、事実上不可能に近い難事とされる(不可能とは誰も断言できない)。魔術と異界存在による簡易なブロックチェーン。
デーモンと呼ばれる異界存在の活動維持、管理には金がかかるため、通常の信仰団とは異なり、≪緑の焔≫では慈善活動を行っていない。トゥールスチャとか知りませんよそんな外の神様。
お読みいただきありがとうございました。




