これだけの大広間に死霊ぼっち
手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。
戦闘回です。
気配がアンデッドぽいことを伝えて、打合せして。
ウォーリアが先頭に、その後ろにアタッカーのボリスさんとアタシ。その後ろで、ウィザードのテイなんとかさんが、メバルさんと並ぶ。ドア開いたら即戦えるよう、光源はアタシの短剣じゃなく、僧侶の杖。
ウォーリアが指を立てて、軽く手で拍子をとりながら、立てた指を折っていく。
3本、2本、1本──
「ふん!」
短い気合いでドアを蹴り開けて、ウォーリアが前進。
アタシは室内の動くものか、ひとの形したものを探して、そこに聖水の小瓶を投げつける。蓋は開けてあるから
「ジャアアアア!」
って悲鳴みたいな、怒ったような声が響いた。
光の中に浮かぶのは、顔を押さえて後じさりする、古びた革鎧の巨漢。その脇腹へと、アタッカーが出て斬りつける。二撃でウォーリアの盾が割って入り。
ごん、ごん! と殴り返してくる拳を防ぐ。
ってあれ……?
「腕が4本も!?」
後ろから、ウィザードが溜めてあった術を使うと、相手の足元が煙のようなものに包まれて、動きが止まった。そして、その停止した瞬間にウォーリアが盾を振り上げる。
鈍い音がして、頭を押さえていた腕の片方がひしゃげた。そして、盾のあがった隙間から、アタッカーが斬りこんで。アタシの投げようとしてた予備の聖水は、使う必要がなくなった。
革鎧を着た、半獣化形態らしき毛皮が骨に張り付いたような死霊は、倒れた途端ぼろぼろになってしまって。近づいて調べた僧侶が、
「当たらなくてよかったのだ。」
と言う通り。どす黒い鉤爪が触れた部分から、体力を吸い取るアンデッドだった。
倒した後、一度メンバーにはドア枠の所に居てもらって、アタシが部屋を調べてみたのだけど。
まずめちゃくちゃ広い。さっき開けたドアが東壁の北の隅にあるのは、光の範囲で見て取れるぶんで分かるんだけど。壁はもっと先までつながってる。罠とか、仕掛けのある床とか、無いかもしれないけど、あるかも知れない。
ていうか、『あると疑って調べる』のがアタシの仕事で。何も手を抜かない。抜いちゃいけない。
耳を澄ませて、聞こえるのは後方に居る仲間のひそめた話し声とか、携帯カップが床に置かれる音とか、鞘と鎧のこすれる音とか……だけでも。そこに何か異音が混じれば、即応するのが盗賊だから。
自分で決めた歩数歩くごとに、深呼吸して、首を回して、集中力を途切れさせないように。それでもきついのはきついんで、壁を一面ぶん調べては、戻って報告兼ちょっと休憩させてもらったんだ。
「集中しすぎるは、よくないのだ。水を飲むと良い。」
「はぁい」
僧侶さまは今日も、水袋にたんまり持ってた。
何度か休憩して、部屋全体をまわって分かったのは。
この部屋がとっても広いってことで、東西に140フィートで南北100フィート。そして床が敷石のない土だということ。掘ったら色々出てきそうなので、触らないことにした。
ウィザードが教えてくれたんだけど、
「記憶してる死霊の情報です。魔力によって、眷属という、死霊やゾンビ、スケルトンを召喚できるのだとか。」
ということで、絶対掘らないことにした。罠確認はしたけど、触れるものが無いって分かって、ほっとしたよ。
そして南西の端っこの壁に、隠し扉があるってこと。鍵穴も見つけたし、
「進んでみます?」
と聞いてみたんだけど。
メンバー全員が首を横に振る。しかも、
「マーエ。アンタ気づいてないだろうけど、かれこれ2刻は調査してるんだよ?」
「そうですよ。今日はここで切り上げましょう。」
一番肉体労働してるウォーリアとアタッカーに諭されてしまった。
手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。
死霊「久しぶりの来客を出迎えてみたらボコられたでござる。」
ダンジョン探索はここで切り上げ、次回以降は街に戻ります。
お読みいただきありがとうございました。




