表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
73/180

絵に描かれたひと

手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。

パーティメンバー、アタッカーの名前はボリスさん。

僧侶はメバルさんと言います。『釣った魚が分かる図鑑』から、両親が名付けました。

 そして、鎖でつるされた骨が飾られた部屋にやってきて。

 アタシは東のドアの鍵を開く。湿気で戸板そのものが歪んでるので、ちょっと力を入れて。

 120フィートほど通路が真っすぐ続いて、正面にまたドア。これも鍵自体はなんとかなったんだけど、戸板ががっつりはまり込んで、そのうえ湿気で膨張してしまってて。

 先の部屋に気配がないことを確認したうえで、ウォーリアとアタッカーにぶっ壊してもらった。

 先行偵察で入ってみると、ここは60フィート四方のほぼ正方形の部屋。頭の中の地図でいうと、転移装置でやってきた通路の曲がり角に、ちょうどはまり込むような場所ってことね。

 静かで、モンスターとかは居なさそうだけど、戸板の破片を投げて確認してみる。そしたら、入って数歩先の敷石に当たった途端、天井の留め金が外れると同時に、


「ごん!」


 って石の塊が落ちてきた。

 び、びっっくりしたけど、アタシは『予想通り』ってクールな顔を保って、罠の詳細を探していく。

 敷石に何か重みがかかると、鉤が外れ、敷石の隙間に沿うように隠された鋼線が、天井の留め金を外す仕組みで……うん、これ一つだけみたい。

 もう一つのドアが、南側にある。こっちは鍵がない、代わりにやっぱり、板が湿気てドア枠にはまり込んでて。前衛の出番となり。

 その先の部屋も、モンスターの気配はない……代わりに、ガイコツが居た。東側の壁沿い、ちょうどアーチの脇に椅子が一脚あって、そこに腰かけた格好のガイコツが。埃の積もったローブを着てて、ドアをぶっ壊す騒音にも反応した様子がない。足の骨には、必要あるのかないのか分からないけど、簡素な革サンダルを履いてる。

 短剣にかけた≪光≫の範囲を可能な限り狭くして、左手にはすぐ投げられるよう聖水の瓶も握り。ガイコツを視界に入れつつ、部屋の他の部分もそっと見ていく。

 部屋自体は、東西60フィート、南北80フィートと縦長で、見た範囲に罠とかは無い。あと、北側の壁ぞいにも2脚椅子が転がってる。

 そして、西側の壁には何かが塗料で描かれてる。しっかり見るには、光をもっと強くしないといけない。


 嫌な予想図が頭に浮かんだ。

 ガイコツに背中を向けて、壁を調べてるアタシの背後から、骨だけになった手が伸びて……、嫌ぁああああ!

 先にガイコツ調べよう。スケルトンの1体くらいなら何とかなるっ。


 すごく範囲を絞った光のなか、骨の輪郭がうっすら見えるのへと、足音も気配も消して近づいていく。あんまりにも消しすぎて、自分が空中を漂う埃の粒子になったような気分。

 茶色になった骨に、指を伸ばせば触れられる位置にまで来た。

 短剣の刃を、指の幅一本ぶんだけ引っ張り出して、明るさを強くする。

 何も、反応、ない……ね?

 よし、ちょっと賭けだけど。聖水の入った瓶を傾けて、指先に付けた雫を一滴、二滴と、革サンダルの隙間の骨に振りかけてみる。

 本当にアンデッドだったらここで、声にならない悲鳴を上げるとか、とにかくビクッとするとかするはず。

 何も反応ないな……よしっ。

 本当にただの、死んだひとのガイコツって分かって。アタシは心置きなく、光量を上げると、西側の壁に向く。


 この壁画が何を描いてるのか……分からなかったので、僧侶呼んできました。


「これが描くの、≪塵を踏むもの≫の顕現なのだ。」


 僧侶が指さすさき、北に近いほうの端には、光に包まれた何かが描かれている。その下には、祭壇の上で合掌しているひと。祭壇の脇で大きく錫杖を振りかぶってる、たぶん大司祭らしいひと。

 そして、祭壇に顔を向けているのは、はっきりそれと分かる四肢の障害とか、病気らしいひとたち。絵師が力尽きたのか、描く場所がなくなったのか、10人描かれてる。


「大司祭のところ、古典語が読めない。でも、このひとは、不死者かもなのだ。」

「どうやったらそういうの分かるんです?」


 こういう絵によくあるのだけど、と前置きして、僧侶のメバルさんが語るところによると。

 絵のなかの人物の、首から下げた聖印の周りは、光の輪のように大きく白い丸になっている。宗教画や歴史の出来事を描く絵はそういう様式で描かれるもので、何がしかの空白部分を入れて、そこに『この人はどういう地位の誰それである』とか書き込むものなのだそうな。

 で、メバルさんが指さす先の塗料が、かびと一緒になってて名前は読めないけど、『≪塵を踏むもの≫に呼びかけを奉呈する大司祭』までは読み取れる、と。


「長い髪が白いなのは、年寄りなだけかも知れない。でも、≪塵を踏むもの≫は稀に、信徒に不死を与えるという伝承、あるの。」


 僧侶が眉をひそめたままそう言うと、ウィザードが「質問です。」と横にやってきた。


「髪が白いだけで、顔は普通の女のひとに見えますが。こういう不死者というのは……?」

「上位の不死者ということ。とても徳が高い僧職や、魔術の奥義に到達した達人が成れる。生前のすがた保ってるし、知性とかも変わらないと聞く。」

「一層≪迷宮≫の難敵でしたね。」


 って過去形で言うウィザードの袖を引っ張って、アタシはこっそり聞いてみる。


「戦ったこと、あるんすか?」

「無いです。生命がけで倒してでも欲しいものがある訳でもなし、ただ倒して素材や戦利品をる難敵なら、黒霧騎士でも一緒ですから。」


 黒霧騎士は、何回か一層で倒した難敵だ。アタシも最初の遭遇以降は戦闘に参加して、気配の掴み方も上手くなった。

 あれと同じくらいな強さなのかなぁ。

 想像しようとしてたら、ウィザードが小さく咳払い。


「ただ、生前の魔術師や、僧職がどのようなひとだったか、によって強さは違いますよ。僕だったら、『天下万術てんかばんじゅつ』を謳う魔術師みたいな不死者を相手にしたくないですし。」

「てんかばんじゅつ?」

「説明します。『あめしたにある万の術理を究めた』という触れ込みの、ウィザード一派があるのです。この半年ほど、にぎやかに宣伝してるところです。」

「ほー」


 魔術とかアタシにはご縁がないけど、ギーチャンなら知ってるかな。

 絵はそれ以上調べても、特別なところが何も無かったので、探索はアーチの先へ向かうことになった。


手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。

次回はアーチの先に進みます。


探索済みマップはpixivにあります。https://www.pixiv.net/artworks/98911512


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ