本当はどうしたい
手持ち、残り銀で4758枚と銅2枚。
朝ごはんとお茶代で銀貨がちょっと減ってます。
翌日、朝飯もそこそこに集合場所に行くと、アタシが一番乗りだった。従業員にお茶のポットを注文して、待っているとウォーリア、アタッカー、僧侶がやってきて。
「済みません。遅くなりました。」
「いいよ大して待ってないよ」
最後にきたウィザードが、席につくと即、
「もう一つ、謝罪すべきがあります。」
と頭を下げてきて、アタシ含め4人ともなんだなんだ?! ってなった。
その謝ることというのが、先日≪豊饒の大地≫に持ち帰って、試験的に粉砕を試みたダイア・キンケイの骨(小さいやつ)のこと。
なんと『固すぎて砕けない』ことが判明したという。
実際には、砕けるちゃあ、砕けてはいる。
だけど、他の素材と違って、半日くらい水車に連結した粉ひき機に入れておいても、まだ大きい塊が残る状態。普通なら粉になってるところなのにね。こんなん、売り物になるまで砕いてたら、その時間で他の素材が処理できない。かといって、他の素材を後回しにした分も稼ごうとしたら、いくら金持ち相手でも商売にならない値をつけることになる。
素材は廃棄になるのだそうで。
「勿体ない……仕方ないけど。」
せっかく持って帰ったのに、って思いがつい出てしまった。
僧侶がカップに自前の水を注ぎながら、
「まぁまぁ。それより、マーエの前の仲間、どこの農場買ったか、分かるか?」
って訊かれて。
「えっ」
「■■■■■■■■が言ってた。土地を買ったはずのなのに、≪転移の座標石≫が不正品だったと。」
「あ、うん、そうなんだけど。僧侶サマにまで心配させるわけには。」
「心配するの、当然。」
真面目に断言されて、アタシはぐっと何かを飲み込んだ。
「ざっくりした地図があります。これでどの辺か、分かりますか。」
ウィザードも、鞄から年代物のヴェラム紙を出してくる。正確な地図は一般には売られてないけど、ざっくりした地図は誰でも買える。
「あの、うん。ここいら辺……騎馬で駆けると3日くらい、荷車とかあるなら4日はかかるって言われてる。」
アタシは一回、目をぎゅっとつぶってから、クールな表情を保って場所を示す。
ウィザードと、アタッカーが難しい顔つきで覗き込んだ。
「残念ですが、≪豊饒の大地≫の持ってる農場とは真反対です。近ければ、うちの転移門で行くことも検討しましたが」
「ここはク=タイスの南西ですか。細かい領地が多いんですよ。それにティーンテルとのいざこざも多い土地柄です。」
アタッカーは『いざこざ』と柔らかく表現したけど、西の大都市ティーンテルははっきり言って、『表立って紛争してないけど、いつも何かしらク=タイスに仕掛けてる』じゃん。
そういう場所に放り出された可能性も、あるのか。
表情をクールに保とうとしても、奥歯に力が入ってしまう。気をつけなきゃ、と思ったアタシの背中を、ウォーリアがぽん、と叩いた。
「マーエ。アンタはどうしたい? 前のメンバーと言ったが、新婚さんの片方は一緒に育った家族も同然だろ。」
「ど、どうしたいって、あのその」
「迷宮の探索そのものは、急ぎじゃない。けどこっちの話(と、ウォーリアは太い指で地図の、農場の辺りを押さえた)は違う。家族の命がかかってる。探しに行きたいんじゃないのかいっ?」
「それは──」
それは、その通りで。
アタシから言い出せなかっただけで。
昨夜はギーチャンと一緒に、大丈夫だろう、って言いあうことで、お互いに安心させあってたようなもので。
「探しに──っ」
ぼろっと、こらえてた涙が落ちてしまった。
アタシが落ち着くまで、ウォーリアは背中をさすってくれた。
あと、僧侶が何かしかけたのをアタッカーが肩を掴んで止めてるのが、涙で歪んだ視界の隅に見えたけど、アレは何だったんだろう。
「いきなり涙舐めたりしたらマーエが驚きますよ!」
何も聞かなかったことにしとこう。
手持ち、残り銀で4763枚と銅2枚。
探索といったがな、実は緊急クエストだ!
お読みいただきありがとうございました。




