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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
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警戒心は立ち上がる

手持ち、残り銀で4864枚と銅0枚。

前のPTは、ウォーリア(キマル、女性。主人公と同年齢の孤児院育ち)、レンジャー(ヒョウム、男性)、ルーキン(僧侶)、ラトケス(ウィザード)、マーエ(盗賊)、ギーチャン(学者)という6人組。すでに書いたように、お見送り当日はギーチャンが欠席で、代わりにヒョウムの姉、シジラ(彼女もレンジャー)がいました。

 晴れやかな笑顔の二人が、抱き合って『転移の座標石』を使う。素焼きのツボが割れるよーな音とともに、消えてくカップル見送ったのは。

 アタシと、髪がキレイな僧侶のルーキンと、呪文使いのラトケス、あとレンジャーの姉さんだっていう、こっちもレンジャーの女のひとで。

 それが10日前のこと。

 アタシは、手持ちの残り銀貨が500枚しかないことが、冷たい現実ではあったけど、くよくよしないんだ、って自分に言い聞かせてた。一方では慎重に、情報を集めて次のパーティを組む腹積もりをしてた。

 だから冒険者組合で見つけた『盗賊募集』も、相手パーティが利用する店を下調べした。今、組んでいる4人が、ちゃんと続いてる店を利用してて、払いのきちんとした常連だということも確かめた。

 だって、ある日突然現れて、ある日突然なくなって『貸店舗』の札をかけられてるような所や、そういう所を利用するひとを。

 アタシは心底、信用できない。

 なぜならそういうのは、詐欺師の常套手段だから。先生から、『盗賊組合』や結社カルトがやる手法はいっぱい聞かされて育ったもの。


 詐欺師はまず、自分をきちんと見せる。演じる役どころに応じて、いい身なり、言葉づかい、小道具から手下まで。

 そして使う場所を、きちんとしたお店や施設に見せかける。

 あらかじめ仲間を仕込んでわーっと集会を盛り上げさせ、何かを買いこませたり、次の集会は本部でやるから絶対来てね、と約束させたりする。

 それとか、まっとうな店の商いに見せかけて、粗悪品を売りつけたりする。あるいは、借りた店にはちゃんとした品を置いておき、倉庫にはもっと一杯あるからと言って、契約金が払われたのを確認して、逃げ出す。粗悪品を大量に掴ませるかもしれないし、そもそもそんな品は『無い』かもしれない。あるいは他人の倉庫を勝手に見せて、ホンモノだと思い込ませる手口もある。

 逃げ出した後の店は、『貸店舗』の札だけがぶら下がるって寸法なんだ──。


 って、先生の語り口までまざまざと思い出して。

 今、目の前の建物の扉には、


『貸店舗』


 の板切れが紐でぶら下がってる。

 実際にアタシが立ち止まってたのは、心臓が3回鼓動を打つくらいのほんの短い間だ。不審に思われないよう、なんとか足を進めて、板切れをもっと近くで見る。

 そこに書いてあった連絡先の通りと、店の名を、声に出さずに何回か唱えて記憶に刻んで、アタシはまた歩き出した。

 お菓子を買う前で良かった……。手に持ってたら取り落としてたかも知れないもん。

 心臓はまだドキドキしていたけど、頭はしゃんとしてた。変な気分だけど、自分が盗賊だってことを忘れていないから、だからこそ、今からしゃんとしなきゃ、って強い思いが沸き上がってきたんだ。

 甘味屋『留守番の友』の見本棚には、淡い色のタンピンがいっぱいで、薄紫や、水色、若葉みたいな淡い緑がどれもこれも美味しそうで。先生や育て親にもあげたかったら、全種類3個ずつ買って銀で60枚払って、箱詰めにしてもらった。

 キレイな編み紐をかけて結んでもらった箱をしっかり抱えて、アタシは≪万神殿≫に向かう。

 どこのパーティと組もうと、アタシは盗賊。パーティの目、耳、鼻となり、情報を集め、その場その場で適切に判断するのがまず第一の任だ。

 キマルとヒョウムが、新居を見つけたよ!って報告してきたとき。二人におめでとう!って叫んで一緒にお祝いしてて……。

 まさか二人が詐欺にあう可能性を疑いもしなかったのは、疑うべきだったのを疑わずに、嬉しい気持ちに流されてしまったのは、アタシだ。


 あ、もちろん、まだ詐欺と決まったわけじゃないよ?


 でも『貸店舗』の札は、ほんの10日の間にぶら下がったに違いない。その事実こそ、アタシの警戒心を、ヨゴレウサギの耳のように鋭く立ち上がらせてしまった。

 詐欺なのか、そうでないのか、ハッキリさせなきゃ。

手持ち、残り銀で4804枚と銅0枚。

ここまでで、いわゆる『第一部ターニングポイント』です。古今さまざまの娯楽読み物を楽しんできましたので、面白いと思うしくみや細部、全部ぶっこんで参ります。

引き続きよろしくお願いいたします。


お読みいただきありがとうございました。

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