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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
57/180

冒険劇の密偵のように

手持ち、残り銀で4667枚と銅0枚。

マーエの小道具には、幾つかバリエーションのある布が入ってます。髪を巻いたり、袋を包んだりして『印象付ける』のに使います。

『違う色の布で違う部位に使えば、別の印象』になりますからね。

 最初のねぐらは、大きな中庭を囲むように建てられた、3階建ての集合住宅。兼、一階部分が貸店舗用で、仕立て屋と床屋と古服屋が入ってて、あとは『貸店舗』の札がかかってるところだった。

 建物は、通りに面した棟の一階中央が大きな門のように口をあけてて、そこから中庭に入れる。その裏面の棟も別の通りに面していて、同じ様に一階中央部分が門みたいになってて、荷車が通れるくらい広い。

 だから中庭、といっても半分は通りみたいなもんで、馬留めの柵や水桶、建物に身を寄せるようにした物置なんかがあって。2階より上の貸部屋にくっついた吹きさらしの廊下へは、4箇所ある階段から自由に出入りできる。

 アタシは、塒のある棟と直角に交わる、別棟の階段をゆっくり登る。

 2階につくと、「ちょっと物を落としたのを拾う」動作で、周辺視野で探ると……居た。

 塒のある棟の階段脇に、2人座ってる。武器は持ってないけど、暇つぶしにそこでしゃべってる、という風にしては中庭に入ってくるひとへの目配りが鋭い。アタシもその視線を感じてた。

 プロの盗賊じゃないな。そして、目的があってそこに居るみたいだった。

 アタシは「転がってたものを拾い上げた動作」をしてから、3階に上ってゆき、つながってる廊下から別の棟に移動する。例の2人組は、下から入ってくるのには注目してるけど、上の階は見てないらしいのが分かるまで、そっと観察して。

 熱心な、というか『自分の考えた筋や結末』を押し付ける観客って、本当に居るんだな……。

 髪をおさえてたバンドを外し、意図的に歩く速度と、左右バランスを崩してゆっくり、階段を下りていく。

 誰かとすれ違ったり、後ろから「おい待て!」とか叫ばれたりすることなく、アタシは反対側の通りへと、中庭を抜けたのだった。


 犬系顔マスクをはがして、2つ目の塒にも行くと。

 こっちは一階が軽食も出す酒場で、上が下宿って店だった。

 炒りナッツや乾燥果実を並べてる屋台で物色する振りしながら、周辺視野で観察してみると。酒場の外、小路から上階にいく階段を見張れる位置に、下手っぴな≪街の子≫の変装したひとが3人、たむろしてた。

 下手っていっても、素人さんには分からない。けど、プロ(アタシよアタシ)が見たらバレバレってことね。

 以前会った街の子もそうなんだけど、本物の彼らは、垢じみて見えるように、露出する皮膚には色を塗ってるのか、染めてるのかしてるっぽいの。で、この下手な変装は、きれいなお肌なワケ。

 それに姿勢も良すぎる。

 怪しまれないよう、乾燥ヒマナッツの刻みを一袋買うと、アタシは酒場兼下宿の脇道を急ぎ過ぎない程度に速足で歩いて、また別の通りに出る。

 こっちの通りは、監視が居ないみたいだ。でもあの階段以外にってなると、裏口からかな。杖ついた老人がこっそり帰るには、難しいかもしれない。

 ちょっと考えて、緩やかにカーブする通りに沿って歩調を落とす。他の買い物をする風に、店を見回しながら歩いていくと……お、居た居た。

 本物の≪街の子≫たち。


 ぼろを着た子の前にしゃがんで、銀貨1枚を差し出しつつ。


「街の子の振りをしたのが3人、近くのある場所に隠れてるのは、知ってるかい?」


 周りには聞こえないよう、声を飛ばす向きを限定して話すと。

 正面の子は、首をあちこちにむけて、アタシのことが良く分かってない風を装っている。代わりに、脇に居た子は、銀貨を見て大げさにびっくりするしぐさをしつつ、


「いいや、知らなかった。そいつらを俺らの獲物にくれるって話かい」


 唇の端だけ動かして、早口で返される。

 そういやこの子たち(グループには大人もいるらしいけど)、追い剥ぎも辞さないんだったっけ。

 でも、相手も冒険者かも知れない。変装は下手だけど。血を見る騒ぎやら酷いことになるのは嫌だな……初対面でも、子供なんだし。それに彼らのグループにはアタシ自身、借りがある。

 ここはあの老人に指示を仰ぐべきか。


「場所を教えてあげる。でも、手出しは待って。アタシがもう一度戻ってくるまで待ってて、ついでに見張っててくれたら、銀貨をもう1枚あげる」


 アタシの提案に、正面に居た子がニヤッと笑った。


「2枚」

「成立だね」


 ちゃっかりしてるなぁ。

 酒場の監視場所を教えついでに、ヒマナッツの刻み一袋をあげたら、すっごくにこにこされちゃった。分かるよ、香ばしくて美味しいもんね。


「神々の恩寵がありますように!ありがとう!」


 って声を背中で聞いて、アタシはクールにその場を立ち去るのだった。

手持ち、残り銀で4664枚と銅0枚。

シティアドベンチャーパートは、もうちょっと続くんじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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