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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
55/180

街中で追われる者

手持ち、残り銀で4669枚と銅5枚。

暗香とは、漢詩でいう「ほのかな香り」のこと。梅花を詠んだ王安石の「為有暗香来」などが有名ですね。

 懐があったかいっていいなぁ!

 なんならまた観劇に行ってみてもいい。それか、何か甘いもの買って、孤児院に顔をだすってのもいいし。

 建物の間、坂になった小道を、のんびり歩きながら大通りに向かってく。

 通りには屋台もあるだろう。あ、けど子供たち皆にいきわたるもの買うなら、ちゃんとした甘味屋じゃないといけないかも。屋台の売り物って、どうしても『手に持って食べ歩く』前提だから、袋にいれてもらってもソースが落ちたりするし、汚れると嫌だしなぁ……、たれ付串焼きとか美味しいんだけどな、って物思いを。


「助けておくれぇ!」


 しわがれ声と一緒に、杖を突きながらできる最大限の速さで、誰かが走ってきた。


「追われておるんじゃ、ぜっ、はっ、か、かくまっとくれぇ」

「!」


 年寄りにそんな声ださせるヤツが、善民なワケない。

 アタシは


「こっちにはいって、動かないでっ」

「むぐぅ!?」


 木箱の陰に尻を押し込んでいる間にも、アタシの耳は走ってくる足音と、装備の鳴る音……革の鞘か鎧か、をとらえてて。

 その場でくるっと半回転して、ごみの上に尻もちをつく(わざとよ、わざと)。


「きゃあっ!」


 悲鳴あげつつ、ズボンの裾を軽くひきあげて。足首から脛の半分まで素肌がむき出しになって、寒いけど。

 走ってきた4人のひとたちが、「うぉ?」「女か」と立ち止まる。


「大丈夫かいお嬢さん!」

「立てるかね!足は大丈夫か!」


 武器は抜いてないが、短剣もちが2人、長剣、槍もちは1人ずつか。そこまで観察してから、アタシは鼻にかかった作り声をだす。


「痛いけどなんとか……、今、突き飛ばされて転んじゃってぇ」

「痛いところを良く見せてごらん!足かね!ここかね!?」


 そして、半回転した時に投げておいたゴミ(あまり正体は思い出したくない。後で手を洗わなきゃ、念入りに)が、坂道の下の方で何かにぶつかる音。ごみ山にぶつかったらしく、つられて何かが崩れ落ちる音もする。

 4人がさっと反応した。


「かまうな、追うぞ!」

「「「おう!」」」


 足首触ろうとしてたヤツも含めて、あっという間に走り去っていく。

 立ち上がって服を直すと、アタシは木箱のかげに声をかけた。


「出ておいでよ、追い払ったから。」

「ふぃー……助かったわぃ……」


 出てきた老人に、アタシは見覚えがあった。そして、相手も一瞬怪訝な顔をする(そりゃそうだ、今日は別の変装なんだから)。


「早く行こ。」

「ふぃい、ほう、そうじゃの」


 老人がついてくるのを確認すると、大通りにでて、一番最初に見つけたティーポットの看板の店に歩いていく。ゆっくりと、そう、ちょうど親族の老人を案内するように、たまに後ろをみて気遣いながら。

 『茶房暗香(あんこう)』という看板の脇を通ると、奥まった席に座って、とりあえず銀2枚で頼める錐葉モンマをポットで頼む。それと銅5枚を従業員に渡して、「手が汚れちゃったから、濡れ布巾を1枚」お願いした。

 布巾で念入りに、爪の付け根まで拭ってあたたかい茶のポットと、素焼きのカップがでてくるまで。

 アタシは無言だった。老人の、真っ白い眉毛の下からのぞく視線が痛かったから。

 従業員が去って、ゆっくり20数えるくらい経ってから。

 老人は何かを確かめるように、


「……嬢ちゃん、匂いは同じだが、劇場じゃあ猫系の顔をしとらんかったかの?」


 顎髭の下を指先で掻きながら呟く。アタシが聞いてなくても構わない、みたいな感じで。

 それに返事するまえに、ちょっと考える。

 さっきの4人の武装したやつらは、冒険者かな?

 どっかの結社カルトかな?

 そういうのに狙われる身の上って、一体どういう価値を持ったひとなんだろう。ただの通人つうじんに、そんな価値があるわけがない。

 つまり。


「ただの通人じゃなかったんだね?」


 顎を掻く指先が止まる。


「まぁ、のぅ……追いかけられた現場を見られたしのぅ……」


 ティーポットをつかんで、自分の茶器にお茶を注ぐと、老人はにっこり笑った。

手持ち、残り銀で4667枚と銅0枚。

次回はこの続きになります。

お読みいただきありがとうございました。

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