遭遇は突発に
手持ち、残り銀で4119枚と銅2枚。
舐められたら殺す、ってたしか河部 真道の『バンデット』で言ってた気がします。
「コソ泥」って英語何かあるかな、ってGoogleにかけたら、「Koso mud」って返されました。
広い部屋の西側にあるアーチは、通路が80フィートも進むと突き当り。建付けの良くない木の扉をこじ開けて(潤滑油と、前衛たちの体当たりに感謝)、様子をうかがったとたん。
そこに何かが居た、って感覚、そして慌てて逃げ出したな、という感覚がした。
実際に感じたのは、空中に漂う埃の粒子とか、なにか動きがあったな? っていうの。盗賊としては新人以下練習中なレベル。
アタシは息を吸いこむと、止めたまま、内部に聞き耳を立てる。
気配は……消えてる。次元の裏側、≪影側≫に入り込むようなモンスターなら消せるだろう。
短剣の刃を全て引っ張り出し、部屋全体を明るくする。先の部屋より小さいけど、東側と西側の壁にくっつけるように、箱台車が3台ずつ。斜めになったり、くっついてたり、ちょっと乱雑に置いてある。
そっと足を踏み入れる。首筋の毛がふわふわしてる、妙な感じは消えてない。台車をひとつずつ、手鏡と目視の両方で確認していく。埃は積もっていたけど、東側にある3台は空っぽ。
西側にある台車のうち、2つ目に鈍い金属の光沢があって。お宝か、それとも……と、覗き込んだとき。腰のポーチに違和感があった。
短剣を逆手に、ほぼ勘だけで振りぬくと、手ごたえがあ「ギャウウウゥルルルゥ!」
こっちが悲鳴上げたかったよ!!
ポーチの蓋を開けようとしてたのは、前も見たことのあるモンスター。青白い分厚い皮に、ほっそりした手足が伸びてて、指が4本、これもすごく細長い。確か、影ラーチャって言うヤツ……の、右手の指をアタシは切り飛ばしたわけで。
仲間呼ぶ時間、ない。相手は怯んでる。
「このこそ泥ぉ!ぶっ殺すぞ!」
自分に気合いれるためと、相手をもっと脅えさせるための両方で、お腹の底から叫び、短剣を突き出す。2撃目が、腹にぐっさりと刺さる。
「ゥウウグウウラァ!」
「やるかコラ!」
絶対通じてないけど、アタシの気迫は伝わってほしい。影ラーチャは、左の鉤爪でひっかこうとするけど、そもそも腰が引けてるから、簡単に避けられる。
「今から詫び入れても知らんぞオラ!」
反対に、叫びながらの短剣の攻撃は、相手の肩口に大きな切り傷をつける。
「死ぬなら早く倒れてよおおお!」
おっと本音が……、と思ったとき、横合いから駆けてきたウォーリアの盾が視界の端に見えて。風圧感じたのと、盾の陰からアタッカーが切りかかるのが同時。
ほぼ一瞬で、影ラーチャは屠られて、皮の中身が黒い泥みたいに床に広がってた。
「怪我は無いかいっ?」
「無いです。た、助かったっ……」
へたりこみそうになるのを、台車につかまって体を支えて、思い出した。そういや、この台車の中に光る金属の何かがあったんだった。罠とかは無いみたいだったから、
「マーエ、すごい剣幕だったのだ」
「えへへ」
「アレって誰かに習ったんですか」
「あ、先輩とか。あと自分でも、街中で絡まれたりしたらヤでしょ、とにかく啖呵で舐められないようにしないとって感じで練習した」
僧侶とアタッカーに手伝ってもらいながら中身を取り出し、鑑定もしてもらう。
質がいい鎖かたびらと、板金に膠か何かでくっつけて模様をつけたお札みたいなのが3枚。お札はウィザードが試して、
「推定です。呪文をこういう板に刻んだり、貼り付けたりした『呪符』ではないかと」
とのことで。戻った後、ウィザードが判別してくれるというので、お任せすることにした。他の台車には何もなかったけど、鎖かたびらと、ダイア・キンケイの骨を持ち帰れば、いい稼ぎになったんじゃないかな。
手持ち、残り銀で4119枚と銅2枚。
スーファン先輩「シャアッッスォオルラスッゾコラァ!……はい、repeat after me.」
マーエ「シャあっつぉんらあったぞこらー……?」
スーファン先輩「ちっちっち。もっと腹の底から!さんはい!」
お読みいただきありがとうございました。




