鍵穴も無く錠前も無い
手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。
どうしてもどうにもならない障害物があるって、本当に苛々しますね。
ふーーーっ、と息を吐いて、苛立ちをこめた視線を鉄扉にむける。視線で穴があけばいいのに。つるつるの金属は、何もとっかかりのない平面を見せつけてるだけ。
「もう一度だけ、お願いしますっ!」
アタシはクールさをかなぐり捨てて、頭を下げた。もうずいぶん前に、クールって何だっけ状態になってたけど。もう本当に捨て鉢な気分だったのだ。
どうしたもんかねっ、とウォーリアが首筋を掻く横から、僧侶が進み出る。
「マーエ、落ち着いて水を飲むと良いのだ」
にっこりと、携帯カップに綺麗な水を注いでくれて。
アタシはまだ、逆上した野良ネコみたいにフーフー言ってたけど、僧侶の笑顔は揺らがない。全然。アタシが、ちゃんと道理を分かってくれるのは知ってる、て感じで。
事実、アタシは自分が逆上してることに気が付いてしまい、それが恥ずかしくなってきて、
「すみません……頂きます。」
「うん。こっちにお座りよ」
「はぁい」
導かれるまま、防護円の中に腰を下ろして、水を飲む。
飲みながら、やっぱりちょと恨みをこめて、鉄扉を見てしまうのだった。
「この地下神殿ってやつを作ったのは、変な趣味してるねぇ!」
自動かんぬきをガイコツで作ったドアを前に、ウォーリアが言った言葉は、本当にその通りだと思う。アタシは例の、鎖でつるされた骨の部屋を思い出した。
「わざわざ飾ってる部屋とかあったし」
すると僧侶が、
「あの部屋はたぶんね。信徒たちの希望で、そうしてるのだと思う」
とか言い出した。
「骨はきれいに、磨いてあった。それと骨の状態。片方だけ細かったのや、歪んでるのとか、ある。生きてるとき、不具だったのと思う」
「障害を持ってる者を、この教団は受け入れていたという事ですか」
「うん。≪始源にして終末≫とは違うみたい。死を望んで、死んだあとも大事にしてもらえるよ、って示すためかも。」
アタッカーの言葉にうなずいて、僧侶が言うには。
街の≪始源にして終末≫は、人生の負債を返し終わるまで、最終の行を許さないといい……つまり、勤労の行ができない障害を負った者は、そもそも入信を受け入れない。「産まれたときから、不自由なひともいる。■■■は、そういう選び方、信仰団として、あまり良くないと思う」とコメントしてた。
意思の力をふりしぼって、アタシは鉄の板から目をそらす。
この両開きの大きな扉は、自動ガイコツドアを通り、左に曲がった先にあった。把手はないし、すこしへこんだところもある。でもって調べても、調べても、鍵穴は無いし、どこか押したら把手がでてくるとかも、3回くらい綿密に調べたにもかかわらず。
無かったんだよなぁ……。
もう一杯水をもらって、ようやく自分にいつものクールさが戻ってきたと実感して。
物理的にぶち壊すのも、もう試して、しかも無駄だった。木製の扉を粉砕した攻撃でも、ちょっとへこみが付いた程度だった。
アタッカーは、
「別の剣でなら、斬れるかも知れません」
目を細めて、ちょっと剣呑な感じでつぶやいてたけど。それを取ってくるために一度家に戻ってまた都市に来て、とやる時間を考えたら現実的じゃない。
「≪転移の座標石≫を2つ持ってるから半日でできますよ」
とか言われても。え?
「いや、2つって、えっ、どんだけお金持ちなの!?」
「僕が買ったんじゃないです。父の遺産ですよ。」
「お父さんすごい。」
「偉大な武闘家でした」
ほえー、ってなったけど、アタッカーはそれ以上話すつもりないらしく、僧侶の隣に座って水をもらってる。
アタシはもう一度、ちょっとだけへこみのついた扉を眺めながら、これは内側から開く扉という可能性を考えた。
だとしたら、別の部屋から、通路でつながってて。そっちからなら、案外鍵も何も必要なく、なんなら鍵まで見つかっちゃう可能性だってある。
ここがダメなら、別ルートを探ればいいんだ。うん。アタシはそのためにここに居るんだし。
皆で水を飲みながら、「ここがダメなら、別ルートから」という話になって。その日は例の骨いっぱいの部屋で採集して、街に戻ることになった。
ウィザードが
「提案です。帰りに、≪豊饒の大地≫に寄ってください。今日の午後くらいには、昨日みてもらってた結果がでると言ってました。」
というので、ちょっと楽しみ。
手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。
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