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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
51/180

鍵穴も無く錠前も無い

手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。

どうしてもどうにもならない障害物があるって、本当に苛々しますね。

 ふーーーっ、と息を吐いて、苛立ちをこめた視線を鉄扉にむける。視線で穴があけばいいのに。つるつるの金属は、何もとっかかりのない平面を見せつけてるだけ。


「もう一度だけ、お願いしますっ!」


 アタシはクールさをかなぐり捨てて、頭を下げた。もうずいぶん前に、クールって何だっけ状態になってたけど。もう本当に捨て鉢な気分だったのだ。

 どうしたもんかねっ、とウォーリアが首筋を掻く横から、僧侶が進み出る。


「マーエ、落ち着いて水を飲むと良いのだ」


 にっこりと、携帯カップに綺麗な水を注いでくれて。

 アタシはまだ、逆上した野良ネコみたいにフーフー言ってたけど、僧侶の笑顔は揺らがない。全然。アタシが、ちゃんと道理を分かってくれるのは知ってる、て感じで。

 事実、アタシは自分が逆上してることに気が付いてしまい、それが恥ずかしくなってきて、


「すみません……頂きます。」

「うん。こっちにお座りよ」

「はぁい」


 導かれるまま、防護円の中に腰を下ろして、水を飲む。

 飲みながら、やっぱりちょと恨みをこめて、鉄扉を見てしまうのだった。



「この地下神殿ってやつを作ったのは、変な趣味してるねぇ!」


 自動かんぬきをガイコツで作ったドアを前に、ウォーリアが言った言葉は、本当にその通りだと思う。アタシは例の、鎖でつるされた骨の部屋を思い出した。


「わざわざ飾ってる部屋とかあったし」


 すると僧侶が、


「あの部屋はたぶんね。信徒たちの希望で、そうしてるのだと思う」


 とか言い出した。


「骨はきれいに、磨いてあった。それと骨の状態。片方だけ細かったのや、歪んでるのとか、ある。生きてるとき、不具だったのと思う」

「障害を持ってる者を、この教団は受け入れていたという事ですか」

「うん。≪始源はじまりにして終末おわり≫とは違うみたい。死を望んで、死んだあとも大事にしてもらえるよ、って示すためかも。」


 アタッカーの言葉にうなずいて、僧侶が言うには。

 街の≪始源にして終末≫は、人生の負債を返し終わるまで、最終の行を許さないといい……つまり、勤労の行ができない障害を負った者は、そもそも入信を受け入れない。「産まれたときから、不自由なひともいる。■■■は、そういう選び方、信仰団として、あまり良くないと思う」とコメントしてた。


 意思の力をふりしぼって、アタシは鉄の板から目をそらす。

 この両開きの大きな扉は、自動ガイコツドアを通り、左に曲がった先にあった。把手はないし、すこしへこんだところもある。でもって調べても、調べても、鍵穴は無いし、どこか押したら把手がでてくるとかも、3回くらい綿密に調べたにもかかわらず。

 無かったんだよなぁ……。 

 

 もう一杯水をもらって、ようやく自分にいつものクールさが戻ってきたと実感して。

 物理的にぶち壊すのも、もう試して、しかも無駄だった。木製の扉を粉砕した攻撃でも、ちょっとへこみが付いた程度だった。

 アタッカーは、


「別の剣でなら、斬れるかも知れません」


 目を細めて、ちょっと剣呑な感じでつぶやいてたけど。それを取ってくるために一度家に戻ってまた都市に来て、とやる時間を考えたら現実的じゃない。


「≪転移の座標石≫を2つ持ってるから半日でできますよ」


 とか言われても。え?


「いや、2つって、えっ、どんだけお金持ちなの!?」

「僕が買ったんじゃないです。父の遺産ですよ。」

「お父さんすごい。」

「偉大な武闘家でした」


 ほえー、ってなったけど、アタッカーはそれ以上話すつもりないらしく、僧侶の隣に座って水をもらってる。

 アタシはもう一度、ちょっとだけへこみのついた扉を眺めながら、これは内側から開く扉という可能性を考えた。

 だとしたら、別の部屋から、通路でつながってて。そっちからなら、案外鍵も何も必要なく、なんなら鍵まで見つかっちゃう可能性だってある。

 ここがダメなら、別ルートを探ればいいんだ。うん。アタシはそのためにここに居るんだし。


 皆で水を飲みながら、「ここがダメなら、別ルートから」という話になって。その日は例の骨いっぱいの部屋で採集して、街に戻ることになった。

 ウィザードが


「提案です。帰りに、≪豊饒の大地≫に寄ってください。今日の午後くらいには、昨日みてもらってた結果がでると言ってました。」


 というので、ちょっと楽しみ。


手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。


お読みいただきありがとうございました。

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