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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
50/180

アーチの先へ

手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。

 落とし格子の罠は、スイッチになってるバネ仕掛けに噛ませをいれて無効化した。ついでにどの敷石かも、手持ちのインクで印をつけておく。

 通路はすぐ先で右に折れて、鍵のかかった扉があって。

 アタシは楽勝で開けたんだけどね!

 入った先は、正方形の部屋だった。北側の壁に沿って、大きい車輪のついた手押し車(カート)が5台つけてある。カート自体は木製だけど、持ち手や角は鉄で補強してあって、埃をかぶってた。西側の壁は棚。なめし革のカバーをかけた荷物がいくつも置いてあって、棚の前には木製の脚立もある。南側は、大きなデスクが一つと、丸椅子が周りに3脚。そして、デスク脇、東の角に接する部分はアーチになってて、通路は先に延びてて。

 アタシは脚立を試してみた。軋むけど、大丈夫そう。ピックをそっと伸ばして、一番上にある、小さい包みを軽くつつく。爆発もしないし、天井も落ちてこないし、呪詛が発動したりもしない。

 持って降りて、デスクに置くと、紐をそろそろ引っ張ってほどいて、ピンセットで包みを開けてみた。埃が上がるのをやり過ごして、中身を見てみると……。


「紙」


 だった。お安い繊維紙じゃなく、高いほうのヴェラム紙で、手触りなめらか。これって、高級品なのかな?

 他の包みも、持てそうなものだけデスクで広げてみる。

 様々な太さの葦ペンや筆(古くなって脆い)。

 組み立てるように印が付いた木枠と、すごく細い絹糸の束(これも古くなってる)。

 何が入ってたのか分からない、くすんだ茶色や黒い硝子瓶が沢山。


 分かり易いようにデスクに並べておいて。他のメンバーを呼んでくると、僧侶が、


「写本づくりの道具なのだ」


 と、一発で謎は解けた。

 やーそうじゃないかなーとは薄々思ってたんだけど、間違ってたら恥ずかしいし。

 魔術師は、例の会計記録を思い出したみたい。


「推測ですが。ここで製本作業をしていた。あるいは、道具置き場だったのかも知れないです」

「どんな本売ってたんだろうねぇ?」


 ウォーリアはそう言って、一緒に棚を探ってたんだけど。

 他に見つかったのも『本を包む用の袋』とか『革を張る用の薄い板(触れると湿気で崩れた)』とか。持って帰っても、仮に全部持ち帰れたとしても、古さもあるし、あまりいい値段にはならなさそう。

 他にも何かないかなって部屋を回ってたら、アーチ脇の壁から、紐が切れて落ちてた板切れを見つけた。埃をそっと払うと読み取れた。


『今週の合言葉 転倒』


 この先で、『合言葉を尋ねられるような何か』があるってことね。

 アーチに罠はなく、その先はこの部屋よりちょっと東西に長い部屋で。気配はない。聞き耳を立てて、静かに歩いて入りながら、光を帯びた短剣を少しだけ、刃を引っ張り出す。

 出した途端、アタシは静かに静止した。

 ちょうど正面に、分厚そうな木のドアがあって。

 普通なら、太いかんぬきでもあるはずの真ん中に、『手を頭上に挙げた形で、横倒しになった骸骨』が鎖と鉄環で据え付けられてて。

 アタシはクールに立ち止まって。

 内心では、


(ぎゃあああああ ガイコツ!ガーイーコーツっうあわぁああああああ!)


 て絶叫してた。

 さっきの部屋に残してきたメンバーが、光の輪の中で動いてないことを目の端で確認して、静かに息を吐いて。首筋の毛がぞわぞわしてるけど、アタシはクールだ、冷静だと。自分に言い聞かせて、この仕掛けをもう一度見てみる。

 ガイコツの両手は、壁に埋められた鉄環を握ってる。

 そして、さきの部屋にあった板切れの『合言葉』。

 これが魔法装置として、まだ『活きてる』のかは……分からない。えぇい、近づいてみるしかないかっ。


 アタシが態と、足音を立てて一歩踏み出したとたん、ガイコツはカタカタと口の部分を動かしだした(活きてる────!)。

 死んでてほしかった。もうガイコツだけど。装置として死んでてほしかった。そしたら、力技でドアぶっ壊したりもできたろうに。

 もう無くなった可能性のことを考えてると、ガイコツから声がした。


『…アイ…コトバ……イエ』


 ひどくしわがれた声で、抑揚のない言い方だったけど。

 合言葉を言えってことだよね、これね。


「転倒?」


 自信がなかったから、語尾が疑問ぽくなっちゃったけど。


『ア゛イコトバ、カ…クニン』


 骨と鉄のこすれる音がして、骸骨の手が環から外れた。アタシはそっと近づくと、扉をおさえて奥へ手鏡をかざす。

 物音も匂いも何もない、石畳の通路だった。

 手を放すと、扉は自動的に元に戻って、ガイコツの手がサッと鉄の環をつかんだ。すごいな、魔法装置。

 それから見える範囲の部屋をざっと探索したんだけど。カートが3台置いてあるだけで、あとはこの奇抜なドア(ガイコツ付き)くらいしか無い。

 立ち去るときも『アイコトバイエ』としわがれ声がしたけど、アタシはそっと離れて、仲間を呼びに行った。

手持ち、残り銀で3530枚と銅2枚。

このダンジョンのインテリアデザイナーは誰だぁ!って、誰か言いそうな気がします。


お読みいただきありがとうございました。


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