準備してから接近しよう
手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。
生存率アップのためなら手間を惜しまないこと、です。
提案したのは、再度の『情報収集』と、作戦の『準備』。
ウォーリアとアタッカーには『準備』に行ってもらい、『情報収集』はアタシ。僧侶とウィザードに、大きいほうの部屋の入口まで来てもらった。
前衛ふたりが作業を始める前に、僧侶は大きいほうの部屋入口から、巨大アンデッドのいる場所手前までを範囲に含めるよう『無音の空間』呪文をかける。それから、薄っすら光る防護円が作られて、僧侶とウィザードはそこで待機作業。
具体的には、ウィザードが防水革の袋をナイフで切り開くあいだ、アタシはクロスボウから弦をはずして、代わりに細紐をひっかける。口の大きく開いた袋を、ウィザードが渡してくれて。錐でちいさな穴をあけて紐を通し、即席の持ち手付革袋の出来上がり。作業するあいだぜんぜん音がしないから、変な感じ。
ウィザードと協力して、持ち物の位置を調整して、持ち手付革袋を僧侶の前に据えつける。
アタシが立ち上がると、僧侶は「気を付けて」と口を動かしてきた。
「大丈夫、いってきます」
聞こえないから、ついでにクールな表情で右手の親指を立てて見せると、二人もにっこりして、指を立ててくれた。
さあ、再偵察だ。
下書き地図で、『無音空間』の範囲は分かってるから、気を付けるべきは光の当たる範囲のほう。
巨大アンデッド・ダイア・キンケイに光が当たらないようにしなきゃ。
偵察から戻ってみると、作業してた前衛も戦利品を持ち帰ってた。
通路左側のアーチから見えた、吊るし骸骨インテリアの部屋。あそこで、骸骨から手錠と鎖を外して持ってきてたのだ。ちょっと通路を戻ったところに、休憩場所を移動してあるから話もできる。
「骸骨もキレイなもんだったし、手入れしてたようだねっ。油さしたらすぐ杭も抜けたよ。」
ウォーリアが見せてくれたのは、先端に杭、もう片方は手錠という太い鎖だった。これが4本。僧侶は骸骨の状態を質問してて、何か考えてるようだった。
荷物を支えにした持ち手付革袋からは、ほかほかと温かい湯気が立っている。こっちも準備できてたみたい。
アタシも偵察結果を共有して、追加情報を地図に書き込んでいく。
「転がっていた骨は、凄い力で叩き潰されてたり、かぎ爪や嘴の跡がついてた。あと割れていた卵も、たぶんダイア・キンケイのもの、と思っていいかな」
「同意します。ダイア・キンケイは身体構造が通常の鳥とも獣とも異なりますが、卵生です」
ウィザードの賛同で、卵もダイア・キンケイの、という前提になる。
だとすると、
「巨大なヤツは、大きくなりすぎて外に出られなくなった上に、同種族を食べたってことになるのかな」
「飢えは、大きな禍根なのだ。」
「いくら魔獣でも、同族を食べるのは嫌だったろうなぁ」
「そうだね。生き残る為とはいっても、できればしたくない事。それでも足りずに、飢えに苦しんで、死んで……アンデッドに成ってしまったのだ。可哀想に」
僧侶がうなずいて、湯気をたてる即席鍋の中身……『聖餐』、今回はクリームソースつきパスタに目を落とす。アタシはつい、訊いてしまう。
「魔獣でも、満腹するまで保つかなぁ……」
「それは、大丈夫なのだ」
『聖餐』という魔術は、他の神様の恩寵と同じで、現実に食物を生み出している。
骨のモンスターなのに食えるの? と疑ってたんだけど、アタシの報告を聞いた僧侶いわく、
「お腹空いた、という気持ちを癒すために、食べるはず。効くよ」
と力強くうなずいてくれたので。
力押しで斃すのが難しいなら、『本来行くべきところ』へ送っちゃおう作戦、開始。
手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。
アンデッド「なんかいい匂いがする……」
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