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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
42/180

ダンジョンは骸骨だらけ

手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。

前回はあまり描写しなかった、先行探索の様子です。自分の生命とパーティのための情報が、双肩にかかってるので緊張しますね。

 通路を進んでいくと、左手にアーチが開いてて、正面も広い場所にでるみたいだった。

 気配を消してアーチに近づいて、手鏡で中をうかがう。

 ぼんやりと見えたモノに、胃のあたりがキュッとなって、喉が小さく鳴った。

 それに反応してか、薄暗い中を、小さい影がカサカサと逃げていくのが見える。小さい、ってもアタシの手を広げたくらいの大きさを持つ胴体に、足がついてる蜘蛛みたいなヤツだった。

 アタシの内心は、


「ぎゃああああクモー!クーモー!骸骨!がーいーこーつー!」


 て叫んでいたけど、手と目はしっかり仕事してて。

 手鏡の代わりに、聖水の瓶を握りながら、部屋の様子を探る。

 プロたるもの、感情と手は切り離して仕事ができるべし(と、盗賊の先生が言ってた)。

 60フィート四方のほぼ正方形した部屋で。東側と西側の壁に、骸骨が、ね、ぶら下がってるの。腕の骨に手枷がはまって、鎖で壁につるしてる。短剣をもう少し引きだして、光を強くしてみると、骨の間で隠れようとする大蜘蛛がいた。あと、東の骸骨は数がすくなくて、空いてる壁にドアがひとつ。

 ふむ……蜘蛛は襲ってくる気なさそう。

 骸骨も動きだしたりしないみたい。

 なら、ここは先にゆくべきね。


 通路の先の方は、もっと広い部屋だった。扉の数も多いし。アタシが入ってきた出入口は、ちょうど東壁の北の端っこ。北壁には木製のドアが2つ。南壁にはアーチが2つ。西壁にも、南端ちかくにアーチがある。空気がすこし違う感じ……冷たいけど、淀んだ感じじゃない。

 そして、南のアーチ2つのうち、東にある方のちかくに積み重なってる骨。さっきみたいに壁からつるしてるんじゃなく、床に散らばってる。近づかないと、何の骨かも、どのくらいあるかも分からないな……。


 息を殺して、気配を探る。


 骨のほう……動く気配はない。でも何か嫌な気配もする。そちらに意識を向けると、胸になにかつっかえたみたいな、重苦しい感じ、これは。

 強い魔物が放つ気配だ。

 この骨が魔物なのかな。

 第一層でも遭遇する骸骨の魔物(スケルトン)は、生き物の気配を察知したらすかさず襲ってくる。アタシは気配を消してるから、すぐ真横でわざと足音を立ててやらない限り、察知されることはない。


 よし、もうちょっとだけ近づいてみよう。そんで、スケルトンだったら、数確認して逃げる。襲われたら聖水をぶっかけて、逃げる。


 方針を決めたら、北側の閉じたドアや、もうひとつのアーチにも意識を配りながら、近づいていく。

 光の輪がぎりぎり届く距離で立ち止まる──そして、はっきりする気配。床の骨じゃない、アーチの奥からだった。遠くから聖水をぶっかけるとか、しなくて良かった。お金いらないって言われてても、ムダにしたくないもんね。

 アーチの奥に何か居ると分かったので、コートで光の輪を遮りながら、床の骨に近づいていく。アーチの向こう側を闇に閉ざされたままにしておきたい。『何か』を刺激しないよう、そーっと、骨を調べる。

 ひとの骨じゃないのは、近づくうちに分かってたけど。干からびた嘴や、折れた前脚の骨、頭骨の形……これはダイア・キンケイの骨だ。とっても強い力で背骨を砕かれて、下半身は無いみたい。

 嫌な気配のするほうに、つい目が向いてしまう。

 下半身はアーチの奥かなー。


 奥に何か居るのなら、できる限り情報を集めておきたい。


 コートで光源の範囲を狭めながら、アタシはアーチの所から内部をうかがう。


 やっぱり、ダイア・キンケイの下半身はここにあるっぽい……あるっぽい、と推測しかできないくらい、床はダイア・キンケイの骨だらけだ。大きな頭骨には干からびた嘴が、叫ぶみたいに開いてる。卵の殻みたいなのも見えるのだけど、足の踏み場が見えない。踏み込んだら、絶対なにか物音を立てそう。

 アタシの覗くアーチは、部屋の北西の隅にある。コートをずらして、壁ぞいに光を伸ばしていくと、崩れた天井らしい石の塊が、骨に混じって見えた。それは、骨と石の混じった小山になって、斜めになった天井を支えている。

 どのくらいの規模で崩落したんだろう?

 部屋の広さも分からないし……と光の輪を、ちょっとずつ広げていくと、アタシは『何か』を見つけてしまった。


 他のダイア・キンケイの骨より、明らかに大きい骨があって、それはどこも砕けてない。

 干からびた嘴とか、頭骨とか、ダイア・キンケイ自体がかなり大きな魔獣だけど、コイツは怪物級のダイア・キンケイの骸骨……そして、気配がある、そこらの第一層で遭遇するようなアンデッドよりはるかに『死』の気配がする。


 アンデッド。

 巨大な、ダイア・キンケイのアンデッドだ。


 アタシの内心は、


「見つかったら死ぬ……死ぬ……」


 っておびえ切っていたけど、体は叩き込まれた通りに動いた。

 こういう時、急に明かりを動かしたらいけない。

「まだ早い!もっとゆっくり!」

 って、師匠の声が記憶の中から叱ってくる。

 そうっと、ゆっ…くり。光を絞って、自分のコートのすぐ周りだけを、自分に見えるギリギリまでの明るさにする。

 それから、足元回りを再確認。転がってる死骸を蹴とばしたりしないよう、用心して下がる。

 気配を消したまま、最初のアーチまで戻って、深呼吸して。

 アタシはパーティの待つ部屋へ全力ダッシュした。

手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。

大蜘蛛「昼寝してたら急な来客があったので、急いで隠れたでござる」


お読みいただきありがとうございました。

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