迷宮前でブリーフィング
手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。
今回からまた探索ターンです。
第二層≪夜≫のなかを、地道にロープで三角形作って真っすぐすすんでいった先の、迷宮に入る手前でひと休みすることになった。
「ここでなら、ちょっと聞かれたくない話もできる」
と、水を配り終えた僧侶が言うから、(聞かれたくないようなことが判明したんだろうか)と少し警戒してしまう。一層≪迷宮≫だと、ドゥイドゥイ屋に追尾されることはもうないけど、ごくごく稀に他の冒険者に出会うことがあるし。二層もそうなのかな。
僧侶は、水を3杯飲み干してから、「神像のこと」と言って、もう一杯飲み干すと、説明してくれた。
干からびた死体みたいだった像は、≪塵を踏むもの≫という神様。ク=タイスに、教団はない。
なぜなら、苦痛のない死を求める者たちのための神様だから。ク=タイスの万神殿には、似ているが違う、≪始源にして終末≫教団がある。でもそこは、戒律がとても厳格。人生のすべての負債を返し終えた、徳高きものにだけ、始原へ還る最終の行、つまり自死を許される。
登録されていないだけで信仰自体はあるから、この遺跡は、信徒たちの隠れ寺社かも知れない。
でも私の知っているなかに、≪塵を踏むもの≫の信徒や僧職はいない。噂も聞いた事ないのだ。
「≪始源にして終末≫教は、『人生の借金取りから逃げるため』のような入信が、ものすごく嫌い。≪塵を踏むもの≫の信徒がいても、隠れてるだけかも知れない」
眉尻を下げる僧侶に、ウォーリアが軽く肩を叩く。
「神様関係は難しいんだねっ」
「そうだね。■■■も分からないことだらけ、なのだ」
小さく声をたてて笑うウォーリア。僧侶は鞄を探ると、
「さておき、先行偵察するマーエにもうちょっと聖水、あげるの」
と、陶器の瓶を5本渡してきた。
「スケルトンくらいなら、一本で一体壊せる。実体のないアンデッドも、振りかけるのができる。」
「あ、ありがとうございます」
お幾らくらいするんだろう、とポーチに手をやろうとしたら、「お金は要らない」って止められて。
「皆の生存を確かにするのが、私の役目」
って、有難いことを言ってくれたので。
内心じゃ地べたに額をこすりつけてお礼千万回!……だったけど、クールな表情を保ってうなずいておいた。
皆でアレだソレだと言い合って転移したダンジョンは、やっぱりひんやりと淀んだ空気で。前回、仕掛けておいた警報は作動した様子が無かった。(ドアを壊したときの木くずを、枠内に規則正しくまいて置いたのね。誰か、それとも何かが歩いたら、木くずが乱れてるはずだった)
明かりを持った4人には後ろに下がってもらって、隠し扉を引き開ける。完全な暗闇だし、淀んだ空気はやっぱり停滞しているまま。
アタシは短剣の刃を少しだけ、自分の周囲3フィート程度がぼんやり見える程度に引きだしてから、先行偵察を開始した。
手持ち、残り銀で1498枚と銅5枚。
お読みいただきありがとうございました。




