悪意ないのが逆に凄い
手持ち、残り銀で1512枚と銅0枚。
前PTの学者さん、登場です。
昼をまわっていたけど、待ち合わせた店の客は7割くらい。ナバナの葉に包んだ焼き肉と、お好み具材の薄焼き包みをお持ち帰りする客も、外のベンチに座ってるし、中を覗けば冒険者のグループもいる。以前アタシが組んでたパーティもこの店を使ってた。
名前を憶えてなくても、道が分かるなじみの店って便利だよね!
カウンターより奥のテーブルを探していると、
「こっち!こっちよー!」
と手を振って、呼ばれた。
「あっ、バーチャン!お久し」
「ギーチャンよっっ!! わざとじゃないのが腹立つわね!」
めっちゃ大声で遮ってきた。
穏やかな緑色の肌と、頭の脇におおきな楕円形の耳をひろげたのが、バ…ギーチャン。以前のパーティにいたノーム族の学者。今日も、袖なしで詰襟のローブと、生成りのシャツに、歩きやすい伸縮編みのタイツとブーツって格好。
大声はだすけど、内容ほどは怒ってないのだ。「早く座ったら」って向かいの椅子を顎で示すので、アタシはカウンターで受け取った乳飲料のカップを手に座らせてもらった。
「ったく、八日会わないくらいで忘れるとか、ったく……分かってたけど」
「ゴメンって」
ギーチャンは、パーティ解散の宴会にはちょっと来たんだけど、お別れの日は面接があるとかで、いなかったのだ。アタシとしては、その面接の詳細が知りたい。
「で、面接はどうだったの?」
「上手くいったわよ」
「ってことは今働いてるの?」
「見習いだけどね。鑑定ができるから、午後からの講習を免除してもらえたし」
「凄いなぁ、ミーチャン」
「ギーチャンよ」
諦め混じりに訂正された。
「どこのパーティを受けたんだっけ」
「パーティじゃなくって」
バ…ギーチャンはちょっと周囲に目をやってから、前かがみになって声を潜める。
「『冒険者組合』よ」
「え」
「声!小さく!」
急いで咳ばらいして、アタシはクールな表情を保つ。びっくり仰天ニュースなんか聞いてませんよー、って顔で。
……間に合ってなかった気がするけど。
それはそれとして。
「本当にすごい所じゃん!」
音を立てないように拍手すると、「まぁね」と胸を張るギーチャン。
「以前から、又いとこ経由で私にも話は来てたのよ。現場を知ってて、鑑定ができる学者は居ないかという」
「おおー、バ…ギーチャンにぴったりじゃない」
「まぁね。だから、アンタも新しいところと組んだら、私に一言いいなさいよ。」
一瞬だけ、今のパーティのことを言いかけて。飲み物と一緒に飲み込んでから、曖昧に返事する。
「あー、ねー、うん、その時はよろしくー」
「私もまだ研修の身だし、担当部署ははっきりしないんだ。こっちも決まったら、マーエの下宿に伝言したらいいかな」
「うん、それか≪黒山羊≫さまの孤児院でもいいよ」
そこから単発の仕事してるって話や、孤児院のために採集物を分けたりしていることとか話して。
ネ…ギーチャンと、
「お互い元気にやってこーね!」
って別れたのは、だいたい午後半ばのことだった。
手持ち、残り銀で1510枚と銅5枚。
ギーチャン「悪意がないのが逆にすごいわ」
マーエ「えへへ」
ギーチャン「ったく、これだから顔の良いテルセラは……!」
これにてインターバルは終了。明日からまた探索です。
お読みいただきありがとうございました。




