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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
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説法会に出かける

手持ち、残り銀で1512枚と銅0枚。

宗派によってこれまた、説法会は様々です。

 翌朝、昨日ぶんの成果(タルイヌの肉と、カヴァナッツの実少々)を届けに孤児院に行く。

 出迎えてくれた≪湖畔の住人≫の武僧に頭を下げて、入ると。朝ごはん後の賑やかな子供たちに、とり囲まれてしまった。


「それ何?肉?」

「お肉かな」

「お肉だよね、いーにおい」

「これナッツのにおいだって」

「肉!やったー!」


 騒ぎに気付いた育て親がやってきて、肉は昼飯に焼くことや、カヴァナッツは厨房に持っていくこととか。何回も繰り返し言い聞かせ、(答えが違うかもって思うのか、小さい子って何回も同じこと聞くよね)やっと解散してくれた。


「有難うね、マーエ。昨日は見かけなかったけど、仕事は長引いてるのかい?」

「あっ、いえ、単発仕事のあと、小物屋とか寄り道してたら遅くなって」


 アタシは髪をかきあげながら、『単発仕事』という言葉を意図的にすべりこませる。


「代わりに、今日はお休みにしたんです。なんか、人気のある僧侶が説法会するって聞いて。歌の聖者だったかな」


 なんだっけ、と当てずっぽうで言ってみたら。


「≪海の聖者≫さまね。有名な方だけど……」


 あなた、本当に人の名前を覚えないのねぇ、的な沈黙に苦笑いを返す。育て親は、≪黒山羊≫さまの祭壇も拝んでゆきなさいよ、と釘を刺して、ふっと首を傾ける。


「けどいいの?こんな所でのんびりしていて」

「ほへ?」

「前のほうに座りたいなら、今頃から行って席をとらないと。中ぐらいの礼拝室でもすぐ満杯になっちゃうと評判ですよ」

「えっほんと」

「本当です。」


 重々しくうなずく育て親に、あわただしくお礼を言って。

 勝手知ったる万神殿、中廊下と中庭、幾つかの棟や作業場所を通らせてもらって、中規模礼拝室のある聖堂へ急ぐ。大きい礼拝室のある中心聖堂から、翼を広げるように小礼拝室、中礼拝室のある棟が伸びてるうちの、ひと棟。

 ≪黒山羊≫さまの聖印を下げたお坊さまには軽く会釈をしつつ、ひとの行き交う側廊を歩いていくと、目指す部屋はすぐ見つかった。

 貸し切り札のついた部屋や、がらんと空いてる部屋と違う、その部屋を目指して。全体的に、歩いてるひとの数が増えてくる。格好だって、修錬士や聖職とはちがう一般人、つまり武装にカバーをかけたりした冒険者や、武装はしてない代わりに、きちんとした仕立服の商人、職人風の帽子や前掛けのひともいる。

 部屋の前では、簡易な机をだして、『受付はこちら』と交易語で書いた看板が壁に立てかけてある。

 7人くらいもう並んでる後ろについた。


 受付っていっても何か書いたりしてる訳じゃないみたい。アタシの番になると、


「ハイ、こちらを持って入ってください。出るときにまたお返しください」


 と、素焼きの大きなお碗、木製のフォークを渡された。


 はっはぁ。

 これで、説法会の時間と、この人数に合点がいった。お昼ご飯も出してくれるわけか。こりゃ納得だわ。

 入ってみると、普段は≪森の大鹿≫が使っているらしき大鹿さまの像が、祭壇の脇にあって。説教台のところには、白い布をかけてある。布の上には、僧侶さまが胸にかけてあるのと同じ、『うねうねした触手のなかに、大きな丸が2つ、上には蟹のような目が2本突き出した』神様の絵が、茶色一色で描かれている。


(あれ?説教台使わないのかな)


 視線をめぐらすと、祭壇前には、一般信徒と同じような椅子が一脚。信徒席にむけて置いてある。4人掛けのベンチは、その椅子に向けて、左右の手を横向きに広げたように並べてて、最前列と2列目はもう埋まってた。アタシが3列目に座ってると、みるみるうちに横にも後ろにもひとが座っていく。

 椅子がいっぱいになっても、立ってていいからっていうひとたちが壁際にやってきて。ひとが話す声はそれほど大きくない。外の廊下で、受付の修道士が


「もう締め切りました。またの機会にお越しください」


 と言ってるのが、中にいても聞こえるくらい静か。

 午前半ばの鐘(ほんとうは違う名称なんだけど)が鳴るちょっと前に、見覚えのある僧服と青い肌の人物が入ってきた。受付に居た≪森の大鹿≫の修道士らしいひとも、一緒にはいってくるけど、その人は入口脇に椅子をひっぱってきてそこに座る。

 黙っていると、怜悧、って感じの印象がある僧侶さまだけに、静々と歩いて椅子にかけるまで、誰も、何も言わずに、ただ期待の目で追いかけてて。

 椅子にかけた僧侶がふわっと微笑んだ。


「こんにちはなのだ」

「こんにちは!」


 大きい声も小さい声も、せーの!で合わせたように一斉の返事。アタシは言い遅れたのに気づいて、声は出さずに口だけ動かして誤魔化した。


「今日はね、■■■が傷つけちゃったひとの、お話するのだ」


 そう宣言すると、僧侶は膝の上で軽く、手袋をした指を組んだ。


手持ち、残り銀で1512枚と銅0枚。

次回は『お話』の中身になります。


お読みいただきありがとうございました。


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