進んでみた先
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。
いつも鍵開け成功とは限らない、それが探索。
そんな時は力押しでGO!
倉庫らしき扉は開けずに、そのまま通路を進んでいくことにした。2回ほど折れ曲がって、正面にまた扉。
なんの音も聞こえないから、木製のドアの錠前を試してみたのだけど……鍵がかかってた。その上、アタシの鍵開け道具で歯が立たない。
無理に力をかければピックが折れそう。
という話をしたら、アタッカーとウォーリアが心得たって顔で。
「じゃ、周囲の警戒をお願いします」
「頼んだよっ」
双剣と斧を振りかぶり、左右からガン!バキバリバキ!ゴン!バキッ!ドゴッ!
シャキーン(あ、蝶番もぶった切ってる)、ゴッ!
……とやること数回。
幸い、通路の向こうからも、壊したあとの部屋からも、何も飛び出してこなかった。アタシは手鏡と、短剣だけそーっと突っ込んで内部の様子をみる。
幅広い通路からすると、こちらは小さい控えの間、という印象の場所だった。石組みの床、石組みの壁。空気はやっぱりひんやり、淀んでて、誰もいなかったらしい。
東側、つまりアタシらがドアぶっ壊したところの右手には、ドラゴンみたいな生き物の頭をかたどったレリーフが4つ、壁にくっついてる。
正面の壁は、一面が棚で、埃が積もりまくった本が、アタシの手を伸ばして届く高さまでほぼほぼ全部埋まってる。そして右手、北の壁には黒い石でできたなにかの像。その正面に、水がなくなってるけど、万神殿にあるやつに似ている、小ぶりの手洗い水盤。
左手の壁は何もない……。
ウォーリアがアタシに目配せする。
「こりゃあ、絶対なにかあるよねぇ……」
「あると思います。もうちょっと調べさせて」
クールにそう告げて、アタシはひとり、慎重に調査を始める。床や水盤や像、棚のつくり。他のメンバーが静かに警戒してるなか、一歩一歩、壁沿いからスタートして、紙に書きつけながら。
アタシはすぐ、レリーフの口が動くことに気づいた。ばねと引っかけ鉤でできた仕掛けを外すと、ドラゴンのレリーフの口が開く。手鏡を突っ込むと、顎裏にフックが見えて、鍵がひとつぶら下がってる。
もうちょっと調べてみたけど、『フックから鍵を外すと作動する罠』とかは無かった。
(ということは、レリーフの仕掛けを知ってるひとには、安全に鍵を取らせていい、そういう仕掛けなワケだ)
ほかのレリーフも同じように、顎裏のフックはあったけど、鍵があったのは一つきり。
それと、棚の枠組みや置いてある本に、埃の積もり方が変な一角。ちょうど、ぶち壊したドアの正面の棚で、幅もちょうど20フィート、というのもいかにもっぽくて、怪しい。
部屋全体の安全はほぼ確定なので、他のメンバーにも入ってもらった。
僧侶は、まっさきに黒い石でできた像を調べてた。罠がないことは、アタシの保証付き。それでも、
「うーん」
と首をひねったきり。尋ねても
「断言できない。うっかり口に出したら、よくない名前の神様かもしれない。ここ出てから、調べなおす。」
ごめんね、と残念そうに言われてしまった。
正式に呼んだらやばい神様は、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫さまも似たようなもん。アタシは孤児院育ちであって、正式に入信したわけじゃないから覚えてないけど、別の名前があったはず。
西側の棚を見にいったウォーリアは、
「ふん、雑な石組みで丸わかりだねっ」
と一目で見破った。
「石を見てて分かったの?」
「アタシはこの稼業を始める前は石工だったのさっ。ドワーフの手仕事じゃない、バレバレだよっ」
ちょっと得意そうに胸を張るウォーリアが言うには、ドワーフの本気の仕事だったら、ちょっとやそっとじゃ見破れない石の組み方な上に、剃刀の刃も入らないような隠し扉にするだろうって。
教えてもらったら、アタシにも石と石のつくる枠線が見えたし、そこに『ある』と分かって調べれば、何てこたなかった。
動かした形跡の多い本をどかすと、壁石そっくりに粘土を塗った鍵穴が見えて。
「これかな?」
と、手に入れた鍵を掲げて見せる。ウォーリアはにんまりと頷いた。
「これだろうねぇ。でもマーエ、今日はこれで退くよ。残り半分の力は、帰りにも必要だからねっ」
「えっ」
一番上の棚と、一番下の棚から本を一冊ずつ抜き出して、袋に入れてたウィザードがこちらに戻ってくる。木炭で『像』の絵を写した僧侶も、作業を終えて。
帰りは『念のための仕掛け』を残して。代表でアタシが、
「あれって何?」
と唱えるとまた、視界がぐにゃーっとした。
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。
鉄製の鍵をひとつ手に入れた!




