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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
31/179

進んでみた先

手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。

いつも鍵開け成功とは限らない、それが探索。

そんな時は力押しでGO!

 倉庫らしき扉は開けずに、そのまま通路を進んでいくことにした。2回ほど折れ曲がって、正面にまた扉。

 なんの音も聞こえないから、木製のドアの錠前を試してみたのだけど……鍵がかかってた。その上、アタシの鍵開け道具で歯が立たない。

 無理に力をかければピックが折れそう。


 という話をしたら、アタッカーとウォーリアが心得たって顔で。


「じゃ、周囲の警戒をお願いします」

「頼んだよっ」


 双剣と斧を振りかぶり、左右からガン!バキバリバキ!ゴン!バキッ!ドゴッ!

 シャキーン(あ、蝶番もぶった切ってる)、ゴッ!

 ……とやること数回。


 幸い、通路の向こうからも、壊したあとの部屋からも、何も飛び出してこなかった。アタシは手鏡と、短剣だけそーっと突っ込んで内部の様子をみる。

 幅広い通路からすると、こちらは小さい控えの間、という印象の場所だった。石組みの床、石組みの壁。空気はやっぱりひんやり、淀んでて、誰もいなかったらしい。

 東側、つまりアタシらがドアぶっ壊したところの右手には、ドラゴンみたいな生き物の頭をかたどったレリーフが4つ、壁にくっついてる。

 正面の壁は、一面が棚で、埃が積もりまくった本が、アタシの手を伸ばして届く高さまでほぼほぼ全部埋まってる。そして右手、北の壁には黒い石でできたなにかの像。その正面に、水がなくなってるけど、万神殿にあるやつに似ている、小ぶりの手洗い水盤。

 左手の壁は何もない……。


 ウォーリアがアタシに目配せする。


「こりゃあ、絶対なにかあるよねぇ……」

「あると思います。もうちょっと調べさせて」


 クールにそう告げて、アタシはひとり、慎重に調査を始める。床や水盤や像、棚のつくり。他のメンバーが静かに警戒してるなか、一歩一歩、壁沿いからスタートして、紙に書きつけながら。

 アタシはすぐ、レリーフの口が動くことに気づいた。ばねと引っかけ鉤でできた仕掛けを外すと、ドラゴンのレリーフの口が開く。手鏡を突っ込むと、顎裏にフックが見えて、鍵がひとつぶら下がってる。

 もうちょっと調べてみたけど、『フックから鍵を外すと作動する罠』とかは無かった。


(ということは、レリーフの仕掛けを知ってるひとには、安全に鍵を取らせていい、そういう仕掛けなワケだ)


 ほかのレリーフも同じように、顎裏のフックはあったけど、鍵があったのは一つきり。

 それと、棚の枠組みや置いてある本に、埃の積もり方が変な一角。ちょうど、ぶち壊したドアの正面の棚で、幅もちょうど20フィート、というのもいかにもっぽくて、怪しい。


 部屋全体の安全はほぼ確定なので、他のメンバーにも入ってもらった。

 僧侶は、まっさきに黒い石でできた像を調べてた。罠がないことは、アタシの保証付き。それでも、


「うーん」


 と首をひねったきり。尋ねても


「断言できない。うっかり口に出したら、よくない名前の神様かもしれない。ここ出てから、調べなおす。」


 ごめんね、と残念そうに言われてしまった。

 正式に呼んだらやばい神様は、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫さまも似たようなもん。アタシは孤児院育ちであって、正式に入信したわけじゃないから覚えてないけど、別の名前があったはず。


 西側の棚を見にいったウォーリアは、


「ふん、雑な石組みで丸わかりだねっ」


 と一目で見破った。


「石を見てて分かったの?」

「アタシはこの稼業を始める前は石工だったのさっ。ドワーフの手仕事じゃない、バレバレだよっ」


 ちょっと得意そうに胸を張るウォーリアが言うには、ドワーフの本気の仕事だったら、ちょっとやそっとじゃ見破れない石の組み方な上に、剃刀の刃も入らないような隠し扉にするだろうって。

 教えてもらったら、アタシにも石と石のつくる枠線が見えたし、そこに『ある』と分かって調べれば、何てこたなかった。

 動かした形跡の多い本をどかすと、壁石そっくりに粘土を塗った鍵穴が見えて。


「これかな?」


 と、手に入れた鍵を掲げて見せる。ウォーリアはにんまりと頷いた。


「これだろうねぇ。でもマーエ、今日はこれで退くよ。残り半分の力は、帰りにも必要だからねっ」

「えっ」


 一番上の棚と、一番下の棚から本を一冊ずつ抜き出して、袋に入れてたウィザードがこちらに戻ってくる。木炭で『像』の絵を写した僧侶も、作業を終えて。

 帰りは『念のための仕掛け』を残して。代表でアタシが、


「あれって何?」


 と唱えるとまた、視界がぐにゃーっとした。

手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。

鉄製の鍵をひとつ手に入れた!

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