アレがアレしてアレな話
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。
追跡プロセスの後半回。お待たせしました、アレの話です。
一番最初にアタッカーが立ち直った。
「ダイア・キンケイと戦えるかなって、楽しみにしてたんですがね」
いや、楽しみってアンタ、相手は六本足の巨体を持った、鳥頭のケモノだよ?
「足跡をたどっていけば当たるだろうと思って、辿って行っても出会わないままで」
「さっきのカメダイクマも、出会わなかった……?」
「そうです。何故か出会わない」
「それって、まるで足跡だけの幽霊みたいな」
……足跡だけを誰かが作ったとか?
アタシの表情の変化を見ていたウォーリアが、「その通りさねっ」とうなずく。
「本職を呼んで確認したワケじゃないけどね。休憩ついでだ、ちょっと見ててごらんよ」
ウォーリアが、手近な足跡に歩み寄る。踵で乾いた泥を蹴り崩すと、当然足跡は消えるのだけど。
僧侶に水をもらって、ちびりちびり飲んでいるうちに、爪の先くらいずつのゆっくりさで、土が形を変えてくる。ちゃんと注意を向けていないと、変化に気づかないような速度。全部元に戻るのを待ってたら、半日くらい経っちゃうんでは?……というくらいのんびりだ。
ちょっとずつ変形していく泥を見つめながら、ウィザードが説明してくれる。
「推測ですが。≪土≫系統の精霊術と思われます。精霊のはたらきを、能動的な変形ではなく、現状の緩やかな回復をするように依頼してあるのかと」
「へぇー」
「精霊魔術は術者一人にひとつ流派があるようなもので、他の者にはきちんと理解することなど不可能なものです。これはあくまで、推測ですよ」
「でもこういう場所でなら便利なんでしょ?」
「その通りです。構成物を残さないし、探査できません。自然にそこにあるチカラに、ちょっとだけお願いをしているだけです」
納得したところで、皆で立ち上がって歩き出す。
「気を付けるのだ。全く会わない訳ではないから」
「はいっ」
僧侶に言われるまでもない。
ダイア・キンケイの足跡を壊さないよう追跡再開。頭の中の経路は、ねじれて、起伏を上っていって、岩肌のむきだしになった低い崖の手前でまた折れる。足跡についてゆこうとしたら、ウォーリアに止められた。
「今からここに立って。皆で話をする。話のあちこちに『アレ』とか『ソレ』とか必ず一回は言うこと」
「アレとか、ソレとか」
「そうそう、そういう感じ。ただひとつ、『アレって何』と言うのだけは禁句だ。いいねっ?」
岩肌の前で5人、肩がくっつきそうに寄り集まって。
「いやーさっきのダイニング・キッチンは面白かったですね」
「同意します。アレはアレです、もう噴き出すかと思いました。」
「ちょっ……ソレは言い過ぎじゃないっすか?アレは素で間違えただけです」
「アレは素だったのだ?」
「ソレはもう、アレですよアレ」
「分かってるじゃないかマーエ。ソレはソレとして、もうすぐ来るよっ」
「え、アレ」
ぐにゃぁ…と視界が歪んだ。油を落とした水たまりみたいに、変な色が混じって斑点がでてきて、混乱するアタシの頭の中に、
≪指示■代替りツがジュ■■■■を超えました。転送■ろセスを開始します≫
聞き取れない雑音の混じる、かん高い声が響いた。
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚
次回はいよいよ探索です。
お読みいただきありがとうございました。




