戦闘に加わる
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。
お夕飯とかで消費ぶんがあります。
≪二層≫への探索行、今回は戦闘にも加わることになった。
先行偵察の大半は、光の呪文をかけてもらった短剣の刃を、すぐしまえるように持って。
目と耳と鼻は、闇の中から情報を拾う。
そして頭は、『安全か、立ち止まって調べるべきか、すぐ引き返した方がいいか』判断する。
その中で、何か見つけた、からのすぐ引き返した方がいい、となった時どうするか、だ。
前衛と相談して、動き(特にアタッカーの動線)を妨げないよう、やや斜め後ろに逃げ込んで、クロスボウを撃つことにした。
戦闘中こそ、こちらの物音を聞きつけた『他の何か』を警戒するのが大事。
アタシは「本当に大丈夫」って思ったタイミングだけ射撃。無いよりマシという戦力かなぁ。
たまに物音や、違う方向の気配がしたら、もっぱら僧侶の肩を叩いてそちらを指さす、ほうが主な仕事。
僧侶は、うっすら防護や、音のしない空間の呪文を使う。それと、戦場全体を後方から把握して、時折声を発する……けど、数えるくらい。そのくらい、パーティ全体は何度も戦闘をして、こういう時はこうしよう、という無言の経験が積まれている。
魔術師はというと、主に戦場の足場コントロール。ものすごい低温でモンスターを地面にくっつけてしまったり、反作用する呪文を前衛の足にかけたり。≪豊饒の大地≫は農作物の試験栽培や販売をしてるぶん、
「説明します。苗を植える時に、作業する人も腰まで泥に埋まってたら大変ですので。」
という理由で、こういう魔術も開発されてるんだそうな。
≪一層≫で、事前に探知できたでっかい紫色の虫と戦ったときも、そんな感じだった。
大きな棘のある後ろ足で、地面を蹴りつけたときの衝撃波が強敵なんだけど(体液も酸だし)。アタシがそいつの群れを報告したら、フェイントをかける役になった。
あらかじめ教えられた通り、拾った石を投げつけたら、大きく輪を描くように壁沿いに戻る。
真っすぐ追いかけてきた3体は、ウィザードの呪文で砂になってしまった地面に足をとられ、うまく動けない。そこをウォーリアが突進してさらに動きを封じ、盾でもって首を潰す。すぐ後ろに僧侶が続いて、手からなにかを振りかける動きと、何か唱えて……、酸で焼ける匂いが消えたから、中和する呪文だったみたい。
で、アタシは壁沿いから警戒しつつも、完全に動きの止まってなかった1体にクロスボウでとどめを刺す。
ウィザードも備えてはくれているけど、呪文つかうより、回収できそうな矢のほうがいいってことで。
さらに有利な位置に動こうとしたとき、小さな叫び声がして、アタッカーが飛び込む背中が見えて、酸の匂いと、別の。
血の匂い──誰?
虫の放った衝撃波を盾で逸らしながら、ウォーリアが体を左に、倒れるのをこらえるように踏みとどまる。
「下がってくださいッ!」
アタッカーの気合い入った声と、魔術もないのに4撃がほぼ一瞬で、虫の足を落とす。尻もちつきそうになってるウォーリアの背後に、僧侶が駆け寄って腕をとる。ひきずるようにしてウォーリアと僧侶が後ろに来て、代わりにウィザードが「警戒を!」とアタシに告げて、僧侶のいた場所へ。
ちらっと見えた鎧の継ぎ目に、紫色の大きな棘が刺さっている。
前線のアタッカーは、動きの鈍ってる3体目を踏み台にして、手近なもう一体へ切りつける。アタシはその直後、3体目に矢を射た。足を失ってるから、外す心配はないし。
アタシの脇では、僧侶が小さな呪文をかけながら、棘を引き抜いた。
血臭が濃くなる。
「く~~~、ッタタタ」
「■■■■■■■■、もう少し我慢する、いいね?」
「大丈夫、さっ、やっとくれっ」
僧侶は答える代わりに、首から下げた聖印を右手で握って、左手を傷の上に押し当てた。
二人の背後、アタシらの後ろの空間は物音も気配もないので、アタシはまだ動いている3体目に、次の矢を射こむ。
その時ウィザードが何か唱えて、砂になった地面がさらに作られる。明かりの届かない、残りの虫がいる位置のほうへ広がる。
アタッカーは、止めを刺した4体目を踏み台に、5匹めの脇腹を2撃で両断。そいつは、後ろ足を振り上げて衝撃波を放とうとした、ちょうどその足元を砂にされて、盛大にめり込んだところで。
「あんがとさんっ」
ウォーリアが跳ねるように立ち上がると、オノを持って。
戦線復帰したウォーリアとアタッカーの連携で、残りはすぐに片付いた。
そのあとの小休憩で、ウォーリアの傷を僧侶がきちんと治療(医術の心得もあるんだって)して。皆で水を飲みながら、戦闘の流れを分析。
「マーエさんには、後始末をお任せできますね」
アタッカーが言うと、僧侶とウィザードもうなずいた。
「まわりの様子を、よく見てくれてたのだ」
「同意します。うっかり≪柔砂≫に踏み込むこともなかったです」
そんな褒められると、いやぁデヘヘヘ、って相好崩してしまいそうだけど。
アタシはクールな表情を保って、
「どうも」
と、軽くうなずく。
ウォーリアは立ち上がって、左右に軽くステップを踏んで、傷の様子を見ていたんだけど。もう一度座ると、水を飲んでからメンバーを見回す。
「この調子ならどうだい、行ってみるかねぇ」
どこに?
とは言わなくてもわかっていた。
手持ち、残り銀で1037枚と銅0枚。
ガチめの戦闘もありますが、本作はほのぼの冒険譚です。
……たぶん。
お読みいただきありがとうございました。




