魔術師ギルド≪豊饒の大地≫
手持ち、残り銀で1045枚と銅5枚。
ちょっと不思議な遭遇です。
*誤字を修正しました。
午後半ばの寒空の下、アタシはパーティと一緒に魔術師ギルド≪豊饒の大地≫を訪れた。
広い入口の店舗が付いた、三階建ての建物で、上階はウィザード含めた家族と使用人の住居や、研究棟になっている。裏手は中庭になっていて、栽培試験やらを行う畑になっている。その中庭からさらに裏は倉庫。
一階の入り口は、上から『花冠をつけた牛の頭』の紋章を染めた生成り布を、斜めにかけてあって、そこをくぐると店内はむっとするような温かさ。
幅のひろい引き出しや、縦長の引き出し棚が壁一面にならんでて、いつでも苗や種を引っ張り出せる。棚のじゃまにならない中央は、果実をつけたカヴァナッツの低木がでーんと根を張ってて、その周りに低い露台を置いて、何種類かのアラカチャ、干した果実やナッツ類、あと壺がたくさん並べられている。
花のようないい香りと、豊かな畑土の匂いが混じった空間。
ウィザードと同じ、茶色の筒型帽子をつけた従業員が4人。カウンターで書類を書いてるのが2人、ひとりは引き出し棚のところで商品を移動させていて。もうひとり、通路を歩いていた人物がウィザードに気づいて頭を下げた。
「確認です。査定用の部屋はあいてますか?」
「ええ、こちらへどうぞ」
きびすを返して案内にたつ従業員について歩きながら、ウィザードがちょっと小声になる。
「もうひとつ確認ですが……、例のお嬢様は……」
「えっ、」
「どーん!」
(どーんって言いながらぶつかるひとを初めてみた!)
すっごい可愛い小さい女の子が、両腕でウィザードの膝にしがみついて足ロックしてた。
「わ、わあ!?」
というウィザードの声は、その後に聞こえてきて。狼狽えるウィザードと、「あーハイハイ分かってるから」という残りメンバーの優しい顔が、すごい落差で逆に笑える。いや、笑ったら悪いかな。
と思ってると、ウィザードはアタシに手を振り、
「せ、説明しておきますっ、僕の子じゃないですから!」
足元指さして熱弁。ふわふわでカールした銀髪の女の子は、頬をふくらませてこっちを見る。おや、耳の脇に湾曲した角がある……てことは獣人さんかな。それにしても目がおっきいー……、頬っぺたぷにぷに……思わずしゃがみこんで、
「こんにちは~」
と挨拶してしまう。あわよくば頭撫でてみたい、という期待もこめて。
あっでもアタシは初めてみる相手だろうし、警戒されるかな? されてるかも、じーっと顔をみられてるし、ちょっと恥ずかしいぞ。
一呼吸の間があって、女の子が言い放った。
「なんだー、テルセラかぁ」
さも期待外れというか、思ってたのと違う、みたいな口調で。
「じゃあいいや。ばいばい、テルセラ。」
「ばいばい……?」
興味をなくしたように、ウィザードからぱっと離れた女の子は、アタシを『てるせら』と呼ぶや、手を振ってから廊下の奥へ駆けていって、角を曲がって見えなくなった。
なんなんだ、今の子は一体。ウィザードの子じゃないってことと、すごい可愛いってこと以外なにも分からないぞ。
「『てるせら』?」
「マーエは、自分のことを知らないのだ?」
青い肌の僧侶が、アタシを不思議そうに見つめる。
「知らないですよそんな単語。……たぶん。」
覚えてないだけかもしれないから、『たぶん』をつけた。
手持ち、残り銀で1045枚と銅5枚。
いやあ子供がでてくると、ほのぼの冒険譚って感じがしますねー。
『てるせら』の説明は次回で!
お読みいただきありがとうございました。




