雇われるにも条件は大事だ
腕前を売るにも売り方、相手を選ぶのは大事。
朝、下宿でメシ(テングロクマの尻肉塩焼きと、干し小金茸入りの汁、麦がゆ)をゆっくり食いながら、考える。
ク=タイスはダンジョンが経済の基盤になってる街だけに、盗賊はやり易い。危ないお薬や強盗と恐喝が主業務なギルドで盃をもらわなくても、『探索が得意』って言えば仕事のクチはある。
問題は……、そう問題は、選ばなければ仕事はあるが、きっちり選ばないと「日雇い仕事」は、「その日の夕方にはどこかで死体になって終わってる」仕事だ、ってこと。
冒険者組合はあくまで「仲介手数料を取る場所」であって、書類やらに不備がなければ特に審査もなんもなく、求人を出せる。
求人で「日雇い」とか「一回」とかある求人はそもそも選んじゃダメってこった。
最低条件は、「探索ミッション型、最低3日以上」ででてる求人だ。できれば「月ぎめ」か「十日」で、ぽっと出じゃなく、これまでも生き残ってる……1年以上は生き残ってるメンバーのパーティに入れてもらうのがいい。
ぽっと出だと
「神殿の初級訓練を受けました。今日から冒険者!自由市民!」
て連中ばっかだし。偏見じゃなくマジで。
1年というとゼータクかも知んないな。せめて半年は生き残れた冒険者、クラス不問で組みたい。
アタシはそりゃ、ぽっと出と一緒でも生き残れる。
問題は、生き残れても。
パーティ結成初日に、残りメンバーが全滅しました報告をして、しかも利益なし!
支出は赤字!
とかそういうのマジ嫌だから。ただでさえ、手持ちの財産が単純に計算しても4月持たないかも知れない。それだけで心が病みそうだってのに、ハートが真っ黒になるっての。
昨日、ジョッキをぶつけあって祝福したんだ、アイツらのこと。
今日からも、笑って次の仕事に励みたいじゃないか。
「半年もしたら暮らしも落ち着くとおもうし、再会祝ってよ、また飲もうよ」
つって真っ赤になってた重戦士。横で、やっぱり真っ赤になって、にこにこ笑ってたレンジャー。
新婚さんに再会したとき、
「よぉおひさしぶり!こっちは何とかやってるよ」
ってアタシも笑いたいじゃないか。
麦がゆのさいご何口かを、椀から直接すすりながら考える。
日雇いや一回依頼はナシだ。中長期で探索系のミッション、最低でも半年は存続してるメンバーのパーティで探そう。
洗い物してる従業員に声をかけて、アタシは一番近くにある『始まりの四宿』に足を向けた。
お読みいただきありがとうございました。