支援じゃないです偶然です
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
機人たちの側も、『正式支援にはならない範囲で、何かしら手助けはしたい』そんな気持ちなんです。
スーさんはあまり歳がいってません。
コレンドリルの村には紙資源が沢山ありますが、識字率や維持の兼ね合いから、張り出し場所を限定して壁新聞が発行されています。昨夜の『森がもりもり大育成』も記事になって貼られる予定です。
「アタシなら偵察に行けると思うんだ」
自分にできること、全部はまだ把握しきれてないんだけど。
加速することは、できる。
空間のアレをソレして、一気に距離を詰めることは、できる。(あんまり説明しようとすると、却ってできなくなる気がして、上手く言葉にできない……)
そんでもって、元から泳ぎも得意なんで。
「パッと行って、ざっと周りを見て、またサッと帰って来る間くらい、息を止めていられるよ。」
どうよ、この完璧な作戦!
と提案したんだけど。
横にいた機人のうち、ドゥイドゥイ屋もどきが
「あっ、腐食性のガスではないっぽいけど、毒が体についたら危なそうだね」
って少々大き目の声で呟いた。
あ、そういう感知も機人の能力では?
とかアタシが気を回しかけた瞬間、円盤を背中に負った機人がかがみこんで。
「こちらが、毒性ガスを発見したスーさんです!今のお気持ちは?」
「やだそんな壁新聞の記者会見みたいなっ、たまたま! 目に入って! 偶然ですから! 目にしたことを言ったまでですから!」
「ほほう、あくまで偶然ですね!」
「そうそう! 偶然です」
じゃれ合いみたいな、茶番みたいなもん、がはじまっちゃった。それにやたらと『偶然』を強調してる。
おや、戦士二人の口元が緩んでるぞ。仮面の下は分からないけど、シノビ二人の雰囲気も、この茶番を楽しいモノだと思ってる風で。
つまり今までにもあった茶番ってことか。
これも『機人による支援』には違いないけど。例えば、公式に領主ボリスからの要請で機人が働いたら、それは支援になっちゃう(莫大な請求が発生するよね。本人が善意で、いらないよって言ってもね)。
だから、彼らはこれをあくまで「偶然見えたから呟いただけ」って体裁にしてくれてて……。
ふふ。肩から胸にかけての毛がふんわりする感じだな。
テーブルではリクミさんが何食わぬ声色で、
「≪ミズスマシ≫を呼んで、戻り次第大量の水で洗い流す方法は? あそこの水桶を使える。」
と、畑に隣接してる草地の一角を指してた。割った丸太をくり抜いた大きな水桶がある。
そしてアタシたちが居るのは、昨夜の暖かい空気と打って変わって、冷たい朝の湿った空気のなか。
この空気の中で、冷水をばっしゃばっしゃかけられるわけかー。
まーでも、アタシ自身が平気だとしても、毛皮に毒が付着してるというのはいただけない。
カーリお姉さんが、
「おかえりー!」
って飛びついてきた次の瞬間、ひどい顔色で嘔吐、さらには昏倒……とかいう展開はナシだよね、ナシ。
少々の冷水くらい!
なんてことないもん!
たぶん!
と決意を固めてる間に、テイ=スロールが「みずすまし」を呼んでくることに。
つまり偵察それ自体は行くけど、待機で、ってことになった。
前に座ってるカーリお姉さんの肩をつついて、訊いてみる。
「みずすまし、って何のこと?」
「ん。んーーーと、見た方が早いと思うけど……」
カーリは眉を寄せて、上手く言葉が出てこない風に首を右に、左にと傾けている。
「要は、汚れた液体やら川の水とかやらから、真水を取り出すことができるから、『水をきれいに澄ます』から、≪ミズスマシ≫。ただ幻獣というには知性はあまりないっていうか、やって欲しいことを伝える方法が特殊すぎで、言葉や念話で意志疎通ができないのよね。やり方が特殊なんだけど、ちゃんと伝えればやれることが色々あるし、無差別にひとを襲う魔獣ともちょい違う生き物、っていうか生きてるのかなあれ……」
頭を何度目か右に傾けたとき、動作が止まって、お姉さんはにっこりした。
「ほら、そこに来たから、見た方が早いよ」
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
水をきれいにするから、ミズスマシ。油すましは居ませんが、他にも色々な役目をもったやつが居ます。お楽しみに。
お読みいただきありがとうございました。




