明け方の突発事態
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
なんで魔獣が出てきちゃうのかは不明です。佛理法則を無視して樹木が成長してしまうのも不明なので、『幻獣パワー』の副作用だとされています。
テイ=スロールは、帽子の位置を直しながら、慌ただしく説明してくれる。
「説明します。まず、昨夜の祭が終わってから、不寝番が村と山の周辺を巡回していました。これまでにも複数回、急激な森林の成長に伴って魔獣が出現したことがあったためです。理由は不明です。
今回は夜ではなく、明け方に発見されました。巨木に遮られて位置が不明瞭ですが、大型か、中型モンスターの群れ、のようです。ガスを噴出している様子が見られます。そのガスは毒性があるらしく、周囲の植物が枯死しています。
偵察が近づけなかったため、これ以上は分かりません。メンバーを集めて直接討伐に赴くしかない現状です」
そこまで告げてから、彼はおおきくひとつ呼吸して。
「来てくれますか?」
「うん、行くよ。アタシはこの姿のほうが良い気がする。」
「助かります。メバルさんが、離れられない集中作業に入ってしまったため、一人でも多く来てほしいのです。」
ぬ?
ってことは、回復や防御の呪文遣いが居ないってことですか?
動揺を顔に出したつもりはないんだけど、そもそも幻獣形態で分かるとは思えないんだけど、テイ=スロールは残念そうな顔をした。
「少しだけ説明します。ボリスの判断を仰いでからになりますが、この村は機人たちが居ても、支援はできるだけ受けたくない事情があります。」
「あー、噂では知ってる。日常用機体じゃないほうの機人は、『運用コスト』が高いんでしょ。」
「その通りです」
噂が正しい情報なら、機人に成るコスト、機人を生かし続けるコスト、そして『非日常用』機体を動かすコストって、万じゃなく百万とかそれ以上のお金が必要なハズ。それができる組織があるってのも噂の域で、講談や草子本のネタにされる伝説だったハズ、なんだけど。
昨日一日だけで、ク=タイス市の主要門よりも沢山の機人を見ちゃったから、伝説とか噂は本当だったのかな。真偽は今度、ボリスを問い詰めて確認しよう。
それはそうと。
ああ……僧侶居ないんだ……、残念さと緊張で、たてがみの中の触手がきゅっと丸まった。そのたてがみを、
「じゃっ、私も行こうかな」
と、ぽふっと叩く手があって。それは隣に立ったカーリの手で。
お姉さんは、動き易そうな格好ではあるけど、祖獣崇敬者に何がおできになるのでしょうか……?
アタシの疑いの半眼を受けて、カーリはにこっと笑った。
「戦闘の役には立てないけど。私はここの森と仲良しだから、行きたい場所まで道案内ができるよ。」
「そうでした。時間の短縮に役立ちます。是非」
アタシが何か言うより先に、魔術師が頭を下げたから、一緒に出掛けることになっちゃった。
寝付いたばかりのゼセリさんを起こすのは忍びないので、他のピエタスェ家のひと呼んできたりしつつ。村の中から巨木だらけになった山のほうを仰ぎ見てみるけど、こっち側からは何も異常がみえなかった。
でも慌ただしい気配のする方、つまり山の裾に近いほうの畑(作物や果樹が不規則な成長した姿で、乱雑な感じがする)に面した一角からは見えた。
山の中腹、まではいかないか。山裾ちょっと上ったところに、雲がかかったようになってる部分がある。それが毒のあるガスだっていうなら、風に吹き散らされながらもまだ出てるってことかな?
疑いながらも、畑が切り開かれた場所に集まってる一団に目を向ける。
機人らしいひとたちが3人。ドゥイドゥイ屋そっくりな、白っぽい樽のようなひとが、アタシたちを一瞥してくる。樽の上の半球に、不規則に配置された『目』のひとつがこっちを向いたのが分かる。(そして、沸き起こる嫌悪感は、アタシ自身残念なんだけど、ちょっとやそっとで拭い去れるようなもんじゃないのだ)
樽型機人の左右で、大きな円盤を背中に負った背の高いのと、すごい筋肉質で腕型の≪機構≫を持ってるひとは、山のほうに顔を向けてじっと立ってる。
それとボリス、ヨアクルンヴァルが居て、あと2人は濃い紺色の衣類と木製の仮面をつけたスカライス家のシノビ。おっと、ひとりはリクミさんだ。
(昨夜のお祭り会場から持ってきたらしい)簡素な木のテーブルと、丸太をころがして椅子にしたやつがあるから、機人以外はみなそこに掛ける。
アタシはカーリ姉さんの後ろに立った。
「では一応作戦を立てましょう。」
ボリスは一応、という単語を苦々し気に放った。偵察が叶わないせいで、ろくな情報も無い中に突っ込んでいかなきゃいけない。
ただそれは、アタシが来る前の話でしょ。
「それなんだけどお父様」
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
機人三人組は、白い樽が「スー」、背の高い円盤持ちが「ツイ」、義腕もちが「ユアン」と言います。コストの関係上、活躍の場がありそうで無いのがネック。
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