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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
168/177

声は覚えられる

手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。

流石に『愛のなせるわざね!』は禁じ手とさせていただきとうございます。

 直後に「あっ、やらかした」の後悔がやってきた。

 囁き声くらいの小さなものでも、声の調子というのは分かるわけで、それは間違いなく、今しがたのアタシの動きが『あり得ない速度』だったことをいぶかしんでいるもので……


 考えろ、アタシ。考えろ。

 アタシにできることその一。


「これって愛の力だね!」


 とキラキラした目で極上の笑顔を見せて誤魔化す。


 この考えの駄目な所:リクミさんが引くリスクがある。ドン引きされたら、もう立ち直れない。


 はい却下!



 アタシにできることその二。


 この反応を一切無視。「今なにかやりました?」みたいな感じで普通に話をしだす。


 この考えの駄目な所:「説明を全くしようとしなかった」のは不義理になる。スカライス家のシノビ集団に、つまりリクミさんとその仲間さんたちに、修復しづらい不信感を植え付けてしまう。


 はい却下ー!


 アタシの頭はすごい速さでここまで考えついたけど、どっちにしても駄目じゃん!

 どうしよ、もういっそここで何もかもぶちまけるべき……と、渦巻く思考が顔にでかかってた時。

 意外な所から助けが来た。


「マーエ。お披露目前に勝手に能力(ちから)を見せないように。」


 ボリスが、『困った子だなあ』って大人の微笑を顔に貼り付けて、一呼吸おいたあと。


「ここに居るのは皆、プロだから良いようなものを。当家の子として、すこし落ち着きなさい」


 この言葉に、ざわついた空気がさっと引き締まった。プロだから、つまり『機密保持は言わずとやれる』と匂わせただけで、この統率。

 凄いなあ。

 って、感心してばかりもいられない。アタシはボリスの引いてくれた導線をみつけて、そこに全力で乗っかることにした。


「えへへ。ごめんなさいお父様」


 照れまじりに笑うと、ボリスの目もとがちょっとひきつった気がしたけど、うん、気のせい。断じて気のせい。

 仮面を付けなおしたリクミさんが(こっちの方が見分けつき易くて助かるなぁ)、左右に頷きかけて、静かな気配のひとたちが椅子に腰かけたり、後ろに立ったりする。

 リクミさんが話し始めた。


「偵察の結果、≪通りすがりの賢者≫は深夜、コレンドリルに到着予定です。街道を普段と同じ速さで歩いてきています。それとは別に、4人と1匹か、獣人で5人の小集団が、川を遡上してから森に入ってきています」


 おお、テーブルの地図も示しながら、分かりやすい説明。どこから来てる、とは言わなくても、隣の村ツァイドマークの方向から、というのは一目瞭然。

 耳からはいってくる声を記憶に刻みつけつつも、『このひとはちゃんと報告の訓練も受けてるんだな』という情報を頭の中に書き留める。単に戦闘ができる、単に隠密ができる、だけじゃない。仕事ができるひとって感じで。ふふっ。

 顔が緩みそうになるのを我慢して、アタシは真面目に聞いてるふりをし続けたのだった。



 その後、ボリスほか仲間たちと話したのは、あのとき『加速』しちゃったのって、アタシの幻獣としての『ちから』だろうか? ってこと。

 ボリス自身はアタッカーの職能として、『加速』の呪文や加護と同様の速度で動ける。動けるってのは、戦闘中、アタッカーは習い覚えた型以外の動作にも即応するべく、物凄い速さで思考する訓練を受けてるんだって。

 だからあの時、アタシのやらかしにすぐさま介入することができた。


「加護とは別物の速さでしたね」


 と言われて、もう一回再現できないかなー、と色々試したんだけど。

 アタシの動きはどこまでも普通で、異常に周囲の時間が緩やかになる感覚は全然やってこなかったし。

 結局再現できないまま、夕方の『祭』開始時間が近づいてきてしまった。

更新遅くてお待たせしております。


お読みいただきありがとうございました。


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