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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
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レーアちゃんといっしょ

手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。

どうでもいい植物設定:デンルウェイ(デン+芦苇 lúwěi、湿地や沼、河川に良く生えるアシ。8-10フィートくらいに伸びる)

ブレンリー家は、この村の農業生産や加工を主に扱う最大人数の家です。


 レーアちゃんに合わせてゆっくり歩いてると、横からコートの裾を引っ張られた。懸念してますよ、って顔で見上げられてて、大きなまるい目と視線ががっちり合ってしまう。


「何か、なやんでる?」

「んーまあ、悩んでるってか、……いや、悩んでるな。」


 ■■■が自分をどう見せたいか、どう暮らしたいか、そういう話とは別に。

 嘘をつくべきでない時に嘘をつき、できないことをできると言い張ったこととか。聖娼を侮辱するとか。あと、『祖獣崇敬』の道に入ったひとを恋人にしようとするとか……、それって信仰冒涜じゃん。不愉快ったらない。

 そういうの全部合わせると、


「異界の魂の持ち主かどうかじゃなく、あれはひととして居られると困る輩だと思う」


 という考えの帰結が、口をついて出てきた。

 幻獣カーリゴンになってるひとにも、話を聞いてから最終的に判断を下すべきだろうけど、アタシの気持ちの上じゃもう『処刑するなら日取りはどうする?』って感じで。

 この村の規模は200人くらいって聞いてる。それを五名家で小さい集団にしてて、それを統治するには『いう事聞かない奴』とか『和を乱すやつ』を明確に咎人にしなきゃいけない。文書で持ってる『法律』より『慣習』で動いてるだろうから、アタシが集め終わった情報だけで十分だろう。

 そこに加えて、アタシ自身が『こういう奴嫌い』って感じ始めたせいで、つい、もっとひどい目に遭えばいいのに、と思ってしまって。ああ、もう、こんなこと思う自分がいやになってくる。


 地面に靴底で何か描いてるときみたいな、考えというより言葉じゃない感情が頭の中をくるくる回ってる横で、レーアちゃんは指先で唇の脇を軽く叩きながら、


「そうね。ス■■■■家の探索に放り込まれて、『事故』に遭う可能性が、一番たかいとおもう。」


 と宣告。

 まるで決定事項のように言ったものだから。

 家名は覚えてなくっても、意味してることは伝わってきて、危うく足を止めそうになる。

 足の動きを止めないよう、意識してレーアちゃんに合わせて歩いてくうちに、建物に響く威勢のいい声がしてきた。

 道なりに行くと、開けた枯草だらけの場所に、幻獣フローグと、10人くらいの武器構えた男女が居て。フローグの横には、見覚えのある背の高いひとが居て、


「この程度でバテる奴は実戦にでられんぞ! もう10本……」


 声が小さくなって、アタシを見てた。


「あ、あー……」


 っと、機人のおにいさんだ(名前は憶えてない、ヨアクルンヴァルの息子さんだったのは覚えてる)。気づくと、フローグの方へレーアちゃんがたたたっと小走りになってて。アタシも追いかけるから、おにいさんとは草地の端でかち合う形になった。

 やってきた女の子に、フローグは優しい目を向けて、ふうっと地面に息を吹きかける。そこだけ、枯草のなかからにゅっと青緑色の葉と茎が伸び、すぐ、膨らんだつぼみが赤紫色のニルリリみたいな花をつけた。


「続けるように!」


 指示を飛ばすおにいさんの指すあたりも、一面の枯草のなか、そこだけ青々とデンルウェイが一杯茂ってて。指示に応じたひとたちが、「ハッ!」とか「ヤアーーッ!」とか気合いとともに、武器で(一人だけ手刀のひともいた)切り飛ばしてた。

 直後、揺れるようにしてまた、同じような丈に育つデンルウェイ。

 一瞬だけ、肩から首から生えてるツタを震わせるフローグ(多分、魔力だか能力だかを使ってるんだろうな)。

 フローグの顎の下を撫でてるレーアちゃんが、生やしてもらったお花を手に笑顔、なのはいい光景なんだ。

 ただ、周りが大人ばっかり鍛錬中で、ギャップがすごい。練習なんだろうけど、うーん?

 アタシの疑問に思ってる顔を見たおにいさんが、


「ス■■■■とブ■■■■家から、希望者集めた訓練中なんだ。カーリゴンの『ちから』を有効活用するためにね。」


 って説明してくれた。

 幻獣カーリゴンの『ちから』は、植物を一気に成長させることができる。それこそ、売れる木材になるには何十年もかかるような樹木が一気に大木になるくらい。

 そこで、ブ…何とか家(農業生産とか加工のところ)では、試験用の畑を森の端につけるように造ってある。このひとたちが今やってる動作訓練は、そこで『一気に成長中』の農作物を、最適なタイミングで収穫しようって試み。


「うまく行ってる?」


 つい、尋ねてしまう。

 だって上手くいったら、それこそこの真冬のさなかに新鮮なアラカチャとかナバナとか、迷宮産に頼らずに村で取れるってことで。それって凄いことじゃん。


「今のところ成功率は高くない、けど、心意気は買ってる。動体視力の鍛錬になるから無駄ではないよ。」


 肩をすくめる動作からして、上手くいってないってことだな。

 そこまで話して、気が付いた。


「とある組織から派遣されてる機人って……」

「うん、俺だよ?」


 農業の家に、ってのは不思議な感じもするけど。武門の指導もできるってんなら、その時その時であちこちに行ってるのか。もしかして、何でもできる系のひとか。

 そしたらレーアちゃんに、


「早く! お昼ごはん!」


 ってまた袖を引っ張られて。

 アタシは歩き始めながら、おにいさん(と、鍛錬してるひとたちの方)に手を振ったのだった。 


手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。

この幼女、しれっと怖い事言うよね。でもそういう世界だからしょうがないね。


お読みいただきありがとうございました。


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