条件は3つ
手持ち、残り銀で656枚と銅0枚。
このク=タイスの街は、獣人中心でたくさんの種族が居ます。
ご飯屋さんは、「レシピがばれる危険」より「トンデモねぇ毒物をいれたなと怒られる危険」の方が高いので、基本的に『料理はこまかく素材を列記』し、後付けで味付け・味変更できるときは調味料を別途出す傾向にあります。
もちろん、それができるのも『それなりに払ってもらった』場合や、それなりのお店だからです。
貧乏人むけ定食は、味のしない(水で炊いた)燕麦や大麦の粥と、焼きバスマス(オマケは塩のみ、香辛料なしソースなし)、切って茹でただけの青菜や根菜(ソース類は自前か別料金)、という感じです。
美味そうな肉に向けた手が止まった。
アタシの表情も、硬直してたんだと思う。
「じょ……条件、デス、か」
固まったままの手に、手袋をした僧侶の手がそっと触れた。
「落ち着くのだ、マーエ。今から言うこと、君の安全、護るためなのだ」
「安全……」
「そうです、安全のための条件です。」
安全ってなんのことでしたっけ。
と、理解が遅れる程度には、頭の中も固まってたみたいで。
アタッカーが頭を掻いて、ひとつずつ指をたてながら話しはじめる。
「まず、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫教会の孤児院や、ほかの冒険者に、僕たちの名前やか(ごほん!と咳払い)…は、さておき。とにかく、風体やクラス構成といった情報は伏せておくこと。
それと、一日限りや単発の仕事を受けているふりをすること。
それから、≪街の子≫を見かけても、邪険にしないであげてください。詳しくは言えないですが、味方です」
ご理解いただけましたか?
まで聞こえてようやく、アタシの硬直は解けた。
「理解しましたっ!」
そして、僧侶がずっと手を、励ますように、安心して、と言うように握ってたことに気づいて。
「あ、あ、あの、あのあの、手」
「はい」
するりと手を放して、にっこり笑う僧侶サマ。
ちょ、あの、と思いながら目玉だけアタッカーに向けると、「ん?なんですか」みたいに軽く首をかしげられてしまった。なんなんだこのお二人は。
距離近ーい、と思ったのは間違いだったのか……?
それとも「このくらいはよくあること」なのか……?
アタシにはよく……ってか全然分からない機微だ。
だって恋なんてしたことな「わかったら早くお食べっ」
自分のもの思いに沈みそうだったところを、ウォーリアに背中どやしつけられて我に返った。
そだ、ジュワジュワの美味しそうな肉に、塩や、乾香草もついてるんだった!
「はい!」
カヴァナッツのとろみがついた、ゆで卵とアオカブのスープ。
若ナバナと焼きチーズのサラダ(酢や塩は各自お好み)。
巻いたり、そのままかじってもいいチャパティ。
お腹がくちくなるまでもりもり食べて、それでも余ったチャパティと焼き肉を、ナバナの葉で包んでお土産にもらって。
そうして、腹も懐もあったかくなって、自分の下宿に帰るときまで。
アタシは≪街の子≫の存在を忘れていたのだった。
手持ち、残り銀で656枚と銅0枚。
今回もでてきたナバナの葉。成長すると大人の胴体ぐらい幅広く、繊維質な大きな葉になります。皿になったり、蒸し焼き料理のガワになったり、お持ち帰り容器になったりします。こっちの世界ではバナナの葉がそっくりです。
次回は、ストリートキッズとの遭遇です!
このお話はほのぼの冒険譚だと言ったでしょう!
お読みいただきありがとうございました。




