あり得ない厄介発想
手持ち、残り銀で6006(+19000)枚と銅3枚。
別にどうでもいい裏設定:この日の≪万神殿≫ではちょっと早い時間に、マーエが獲ってきたテルチワーンのお食事会が開かれておりました。お偉いさんは何か思うところ(一飯の恩的な)があったようです。
道場に向かう坂道をのぼりながら、今更心臓がどきどきしはじめた。無茶、無理、無謀、みたいな単語をできるだけ避けつつ考えるんだけど、
結構な英断、ていうか即断をやっちゃったかも知れない……!
変な汗でてきたかも。鎖骨の下が痒い。
服の上から掻きつつ、湾曲した街路の先に、道場の塀が見えるころ。道端のボロを重ね着した小さい人影が、すっと歩調を合わせてやってきた。アタシも歩みを少し遅めにしてやると、
「マーエさん、≪くらきもの≫の偉いさんに何かしたんか?」
いきなり質問くらった。
≪くらきもの≫って、警備隊よりもしっかり司法! 犯罪検挙! してる信仰団じゃん。
都市警備隊が、ク…えーと、政治にも統治にも武人としても使えない貴族子弟の寄せ集めで、真っ白なサッシュが絶対汚れない(つまり仕事してない)っていうのと反対で。
誰でも受け入れるけど、団内での選抜が厳しくて、武官になるにせよ法官になるにせよ、神職としての修行も当然積まされる。警備隊とは真逆で、制服や装備は基本的に黒い色がついてる。
でも偉いさんに何かしたか、ってそんなん覚えがないぞ。
「いや何も。覚えがないけど」
あっ、街の子の沈黙と視線が冷たい。本当に無いから即答したのに。
「…………あっそ」
重ねた布地がちょっと動いて、肩をすくめたのが分かった、と思ったときには、その子はもう進路それて路地に入ってくところだった。
何だったんだろ。
肩まわりを掻きながら、いつものように裏口の扉をくぐると。
「絶対にあり得ねえ───!」
という叫びに加えて、カウンターを拳で叩く音にぶちあたった。
目に入ったのは見覚えのある肩の稜線、黒髪の後ろ頭、あれって……あれって。あーもう名前がでてこないっ。
隠しポケットから紙を取り出そうとしてる間に、彼はカウンターの向こう、シアバスさんの襟首をつかんで詰め寄ってる。
「お前の捏造じゃないの?!」
「……マテ、落ち着けリクミ」
虚をつかれたかシアバスさんてば、反応遅れてる。それから、肩越しにアタシを見て、騒いでるリクミさん(そーだよ、名前呼んでるの聞こえて思い出したさ!)の腕を押さえる。
「だってだってあり得ないって」
「だから落ち着け。計算してみろ、俺には何の利も得もないだろうが。」
なおも言い募ってるのへ、道場主は脇に半歩ずれる感じで腕にかかった重心をずらして、腕を外しつつ。
「どうしても疑うんなら、後ろのひとに訊いてみろよ。なあ、マーエさん」
「うん。えっと、捏造じゃないよ……?」
なんでアタシからの伝言が捏造だって考えに至ったのか、疑問じゃあるけど。まずはそこから訂正しておかなきゃって声かけたのに。
「あり得ねえ───!?」
「ッ待て消えるな、てか逃げるな」
リクミさんはアタシのほうをまじまじ見ながら否定を叫び、気配というか存在消そうとしてじたじたするのをシアバスさんが全力で阻止してくれた。
なんでこうなるんだよ!
手持ち、残り銀で6006(+19000)枚と銅3枚。
主人公の感想はまさにその通りで、リクミさん、彼は彼で厄介を抱えています。何かに於いては全力ネガティブ、逃げて隠れるのはまさに本職。シアバスさんが対応できてるのは付き合いが長いから&反射速度ほぼタイだからです。
おかしい、普通にデートさせるはずだったのに。
お読みいただきありがとうございました。




