起きた直後の呼吸でこれですよ
手持ち、残り銀で5116(+19000)枚と銅3枚。
ほ、本作はほのぼの冒険譚を目指しておりますの。
戻って、黙ったまま手サインで『静かに、部屋をでて通路に行こう』と皆に示す。
立ち込めてる気配にはピリピリしてたから、皆すぐに、相応に静かに(アタシの基準からすると、鎧がうるさいんだけど)立ってくれた。ウォーリアは前回も使ってた、光る盾を構えてて、
「下がりな!」
立ち上がるなり、アタシと入れ替わるようにドア前に入り込む。理由はすぐわかった。
ドアは音を立てずに開いて、その間隙がおおきくなる。
闇の中から、茶色く干からびた手が現れて。
気迫が湧きたつようなヨアクルンヴァルの背中ごしに、伸びた手がひょいっと盾の縁を掴んだのが見えた。
「その信心ある盾、守りの気迫、まことに善き哉──」
「……!」
かすれてたけど、不死者という存在から想像するような、こう、穴の奥から響く呪詛みたいな感じじゃない。女の人の声だった。
ウォーリアも、見ていたアタシ含め全員が驚愕したのは、聖なる護りの盾に触ってる手が、煙を立てたりとか弾かれたりとかしてないってこと。
あっ、不死者だって、邪悪ではない存在が冒険者してたりするって話は、話だけなら聞いたことはある。居るよってことだけ。神様に守られる力、たとえば呪文かけた盾に触って平気だとか、そんなん知らんし!?
固まってるアタシ達の前で、ドアは完全に開いてしまった。
盾のふちに手を置いて現れたのは、埃かぶったままのローブ姿。真っ白い髪の上にも、ナッツ粉みたいな埃が積もったままなのがちょっと笑える。けど、それ以外は、骸骨の上に日焼けした羊皮紙を張り付けたような顔とか、黒い炭を張り付けたような目(瞳がない)とか、怖さ抜群。
そこまで見てとった次の瞬間、いくつかのことが同時に起きた。
ヨアクルンヴァルは、無意識な反応か、盾を持った手がびくって動いてしまった。盾を不死者の方へ、突き出すような動きになった。
ボリスは双剣を抜き放つ。ただ位置的に、アタシが邪魔で前に出られないことに気づいて、不味いなって顔をした。
ウォーリアの持っていた盾から、『パシャッ』て、クッキーが割れるみたいな音がして、清らかな光が消えてしまった。
後ろでメバルさんが「あっ」とか呟いて。
アタシは手にしたままの短剣を、投げるかどうか迷った。
そして不死者は、盾の呪文が消えた(突き出す動きが、攻撃ってことになったんだと思う)のに驚いたのか、大きくのけぞった。その動きで、髪やローブについてた埃が空中に散って、
「ッくしょん!」
そこからげっほごっほと、くしゃみのあと盛大に咳き込みだして、心配したメバルさんが、
「大丈夫なのだ? 水を飲むか?」
と介抱する騒ぎになった。なってしまった。
手持ち、残り銀で5116(+19000)枚と銅3枚。
ウン十年単位で「呼吸」してなかったものですからね、実は鼻腔とかカビ生えてやしないかと心配になるレベルです。とはいえ、神様の加護でアンデッド化、というかリッチ化していますので、そういうこと(体内にカビやらゴミやら)は無いです。
お読みいただきありがとうございました。




