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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
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書庫が書庫じゃない件

手持ち、残り銀で5116(+19000)枚と銅3枚。

TwitterでDMにリンクだけ送られたら踏んじゃダメですね。分かっていたのに、インスタに関係ある案件が前後してたせいで、ウッカリ踏んだ上にアプリ認証してしまい、昨日は更新できませんでした。

スパムアプリの作者は、心太屋地獄(鬼に頭から天突に突っ込まれて、ところてんにされる地獄のこと。誰ですかR-18な想像したのは)に落ちればいいと思います。


 棚の板にも、ぎっしり詰まった革表紙の本にも、埃がふんわり積もっている。けど小動物や虫の糞は散らかってないから、保存状態としては良い感じ。

 前衛を制して、アタシは前に出る。気配からは「何もない」と、直感でもそう感じるけど。ただ調査する前に、確認しておきたかったので、入る前に振り向いて。


「テイ=スロール、前に調べた『帳簿』って、書籍の売り上げが多かったんだよね?」

「はい。最新と思しき帳簿ではそうでした」

「するとここは、在庫置き場なのだ?」


 僧侶が呟くのへ、「それは今から調べてみる」と告げて、アタシはいよいよ踏み込んだのだった。

 棚のほうは触らないようにしつつ、まずは部屋の大きさを壁沿いに調べることからスタート。ほぼ140フィート四方の正方形な部屋。アタシの入ってきた扉が南壁の中央に位置する。で、北東の隅にももうひとつアーチになった出入口、こっちはドアも何もない。床には朽ちた布が落ちてたから、これが仕切りだったぽい。

 それと、西壁の真ん中には隠しドア。以前の石壁に隠されてたドア同様、鍵穴もみつけた。地図と突き合わせると、この奥に細長い部屋か通路があるはず。罠とかは無いけど後回しにしよう。

 他の罠も見つからないし、いよいよ棚と本だ。見える限りは交易共通語だし、読みにくい字でもないし、板木で刷ったのか。


 『偽麦の土起しから収穫まで 暦付き』

 『その雑草、食用かもよ 季節別見分け方図解付き』

 『曲がった鉄部品の修繕方法』

 『実践! 炭は焼くのではない、蒸し焼きなのだ』


 ……などなど。

 農業で、実際に使われる中身の本が多いのかな。どれもこれも分厚いなぁ。

 次の棚に移ったら、今度は


 『お参り:準備からお礼参り』

 『万神殿のお作法』

 『喜ばれるお供え 季節別・集め方・保存方法』

 『10歳までにやっておきたい儀式全集』

 『大ずかい まちのしんでん』


 ……宗教、だけどこれも神職より、一般人向けの本だった。

 試しにと思って、『結婚するならどの宗派?』というタイトルの本をひっぱりだしてみると。手触りというか重さが変わってて「あれ?」ってなる。表紙を開いてみて、理由が分かった。

 これって『本』じゃない。

 本にするまえの『版木』を装丁してるんだ。

 つまり。これを持ち帰って、どこかの刷り屋か版元にだせば、本が作れちゃうってことでは?!

 読むのも忘れて棚を見上げる。棚の高さはアタシが腕を伸ばしたより、手のひら2つ分高いところまであって、ざっと見ただけで一列に10冊かそこら。それが6段だから60冊でしょ。その棚が背中合わせに12列、左右で……うーん、何もない状態で計算はできないけど、とにかくめちゃくちゃ沢山あるってことね。それも『版木』状態で。

 本棚が銀貨の山に見えてきて、頭がくらっとしてきた。


 これは報告しなくっちゃ!

 この『結婚するならどの宗派?』を皆に見せて説明しよう。ふふふ、銀貨の山だよここは。

 含み笑いを漏らしそうな口もとを、しっかり引き結んで、アタシは静かに仲間たちの待つ入り口に戻る。版木をまとめた本を見せようと出した途端、


「マ、ママママ」


 ヨアクルンヴァルがアタシの名を呼ぼうとして、喉の奥からキューって感じの声になってしまった。ってか、また輪郭がぶれてません?

 震え出したウォーリアの前に、抜き身をひっさげたボリスが進み出る。


「そこで止まってください。」

「えっ」


 マジで、いや本気だ、この殺気に近い気迫。言われた通り立ち止まって、アタッカーの後ろでパタパタ手を振ってる僧侶に、問いかけようとしたとき気づいた。手を振ってるんじゃない、アタシの右側を指さしてるんだ。


「マーエ、右を見るのだ、右側」

「右に何か居るってこと?」


 ひょいと見て、アタシも喉の奥がキューってなった。

手持ち、残り銀で5116(+19000)枚と銅3枚。

この書庫、専門家むけの理論書などはありません。

ところてん屋地獄については、『別世界巻』 耳鳥斎

(にちょうさい)が関西大学デジタルアーカイブにございます。

https://www.iiif.ku-orcas.kansai-u.ac.jp/osaka_gadan/205815103#?page=5


お読みいただきありがとうございました。

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